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ゴブリンの行進

 急に目が覚めた。

 今日は早く起きた気がする。ここには時計がないから正確には分からないが。


 《午前八時十三分です》


 なるほど、って、え?

 時間も分かるのか君は。相変わらずすごいな。


 朝からフィーネにひと驚きさせられてしまったが、気を取り直して朝ご飯の準備をしようと下に降りた。

 ミーアはまだ起きていないようだった。

 ずっとこの森をさまよっていたようだから相当疲れが溜まっていたのだろう。


 降りてきてからすぐに、朝ご飯のことで悩んでいた。

 昨日のスープと肉もまだたくさん残っているが朝から昨日と全く同じものを食べるのも少しつまらないと思った。

 違う物を食べるとなると今手元にはないので『クリエイト』で作るか取ってくるしかない。

 だが昨日料理の途中で試したのだが、生物はたとえ死骸であっても一部であっても創造出来ないようだ。まあそれは当然だろう。そんなことが出来てしまったらそれはもはや神みたいなものだ。

 だが見た事のある植物は可能なようで、いまいち境界線が分からない。


 結局昨日と同じは嫌なので散策がてら外に取りに行くことにした。フィーネもいるので迷子になることはまずないし大丈夫だろう。


 柵を出てすぐに川のことを思い出し、そちらの方に歩いていった。魚がいた気がしたのだ。


 到着して、川の中を覗いてみるとやはり魚が大量に泳いでいた。大きさも日本でよく見かけるようなサイズ感だ。一応フィーネに食べても大丈夫な魚か調べてもらったが、大丈夫そうだ。


 近くにあった木と石で銛とバケツを作り、さっそく魚捕りをスタートした。

 最初はなかなか捕れなかったが、徐々にコツを掴んできて、最終的には五匹捕れた。

 もう少し時間をかければもっと捕れそうだったが、ミーアが起きてしまうかもしれないので、早めに切り上げた。


 家に帰ってきたあとこの魚をどう調理するかフィーネと相談していた。俺としては刺身と焼き魚が一番いいが、今はミーアもいる。この世界には刺身がないかもしれないから食べてくれるかも分からない。


 悩んだ末メニューは、魚のフライ、魚の塩焼き、ツナサラダ、スープ(昨日と同じ)にすることにした。

 和と洋のごちゃまぜだが、ミーアは知らないのでいいだろう。しかし本当なら白米が欲しいところだ。この世界に白米はあるんだろうか。もしあるなら早急に入手せねば……。


 今回の料理をする上で、油とフライのソースが必要になったため、とりあえず創造した。

 ほんとはできるだけ自然のものを使いたいが今は手元に何もないので我慢するしかない。


 捕ってきた魚は白身魚で、思っていた通りの白身魚のフライが作れた。問題はソースで、タルタルソース的なものを創造するつもりだったが、卵が創造できなかったから少し違うものになってしまった。

 塩焼きに関しては魚をよく洗って、皮の表面に塩を振りかけて棒で串刺しにして火で炙る。簡単だ。

 ツナサラダはツナって言ってるもののツナではない。だが少し火を通して身を解してサラダと混ぜればツナサラダ的なやつの完成だ。

 スープも温め直して皿によそる。


 出来た品を皿に盛り付けている時にミーアが起きてきた。


「おはよぉカイくん。あれ、あ!ごめんなさい……。私も何か手伝うべきだったのに……」


「おはようミーア。全然大丈夫だよ。昨日はかなり疲れてたみたいだしね」


 俺が朝ご飯を用意してるのを見て申し訳なさそうにしていた。


 落ち込むミーアをなだめて椅子に座るよう促す。しかし座らずに配膳を手伝ってくれた。

 運びながらミーアは目を輝かせていた。ミーアは意外と食いしん坊なのかもしれない。


 配膳を終え二人とも席に着いて食べ始める。


「昨日もすごい美味しかったけど今日のもすごく美味しい!カイくんは料理上手なんだね!」


 ミーアはかなりテンションが上がっていた。

 褒められた俺はズルをした様なものなので少し罪悪感があった。だがそれでも素直に褒められたのは嬉しかった。


 食事をとりながらこの森について少し話していた。

 この森は一般的に入ってはいけない森なんだそうだ。理由が、この森には恐ろしく危険な魔物がたくさんいるという。

 まだ一体しか遭遇していないのでなんとも言えないが、エビルボアもCランクの魔物だったしそこそこ危険な魔物だったはず。今までで運良く遭遇してこなかったが、確かにこの森には危険な魔物がたくさんいてもおかしくない。気をつけながら生活した方がいいだろう。


 この拠点の周りにどんな魔物がいるか、確認しておいた方がのちのち安心できるかもしれない。

 今日はいつもより遠めのところまで散策してみるか。

 ミーアにはここで待っててもらった方が安全かもしれない。


「今日はこの拠点から少し離れたところまで散策しに行ってみようと思う。ミーアには留守番を頼める?待ってる間は何をしていても構わないからね」


「留守番は任せて。でも、柵の外に行っても大丈夫?」


 やはり森を歩き回るのは心配なようだ。大丈夫だとミーアを安心させて、フィーネと一緒に外に出る。


「なるべく早く戻ってくるよ」


 柵の外に出て、さっそく『サーチ』で周囲の魔物を探そうしたが、なにも引っかからない。今のスキルレベルだと半径50メートルしかわからないんだっけ。これはスキルレベルを上げておいた方がよさそうだ。

 どうすればスキルレベルが上がる?


 《『サーチ』を使用し目的の物を見つける、これを繰り返すことでスキルレベルが上がります》


 なるほど。それは簡単に見つかるものでも可能?


 《視認している物以外なら可能です》


 それなら意外と簡単にスキルレベル上げる方法はありそうだ。


「サーチ 蝶」


 これを続けた。最初は虫でやっていたが、そこらじゅうにマーカーが付いていて気持ち悪かったため、ある程度まばらにしかいない虫にした。


 結果、スキルレベルが5まで上がった。スキルレベル5だと半径500メートルまで分かるらしい。かなり広がった。


「サーチ 魔物」


 改めて使うと、今度は赤いマーカーがいくつかあった。しかも名前が表示されている。範囲が広がるだけじゃなく名前も表示されるようになった。


「今表示されてるのは……、ゴブリン種が大量、エビルボア四体、ブラッドベア二体、ホーンラビット三体、ってところか」


 ほとんどここからはそんなに近くないところにはいるが、このゴブリン種の多さはなんだ?ゴブリン種とまとめたが細かくは色んな名前のやつがいた。ゴブリン六十体近く、ホブゴブリン二十体、ゴブリンアーチャー十体、ゴブリンメイジ七体、ゴブリンナイト一体、ゴブリンロード一体。

 その場所がゴブリンの巣窟なのだろうか。

 フィーネ、このゴブリンたちの危険度はどのぐらい?


 《ゴブリンがFランク、ホブゴブリンがEランク、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジが共にDランク、ゴブリンナイトがBランク、ゴブリンロードがAランクです。しかしゴブリンロードを含む集団となる場合、その全体の危険度はSランクとなります》


 まじか、かなり高いな。このゴブリン達とは接触しないのが一番だろう。

 他の魔物達の危険度も聞いたが、ブラッドベアがCランク、ホーンラビットがEランクだった。

 エビルボアは以前にも討伐したからブラッドベアもあのぐらいの感じなのだろう。


 ゴブリン達はかなり遠いからしばらくは問題無さそうだがそれ以外は割と近くにいる。

 気性が荒そうだったら先に討伐しておく必要があるが、大人しそうだったら放置しておいても大丈夫だろう。


 ブラッドベアとホーンラビットの様子を見に行くことにした。


 ブラッドベアは名前的に凶暴そうだったが、やはり気性は荒かった。俺の存在に気づくと、まさにクマって感じの雄叫びをあげながらすぐに襲いかかってきた。


 強制的に戦うことになった。二体同時に倒さないとまずそうだ。

 なんかいいのある?


 《風属性魔法と水属性魔法の複合魔法、【アイスランス】が有効です。槍の数もイメージすればそれだけ数が出せます》


 じゃあそれでいこう。


「アイスランス!」


 言った瞬間自分の前に二本の氷の槍が作られ、完成したと思った瞬間それがブラッドベアに向かってものすごい速さで向かっていった。

 ブラッドベアはその槍に胸を貫かれ同時に倒れた。


 倒すと、レベルが上がったとフィーネが教えてくれた。だがとりあえずステータスの確認は後にし、ブラッドベアを回収してホーンラビットの所へ行くことにした。


 ホーンラビットは角が生えているだけで、気性は穏やかそうだ。おそらくこちらが何もしなければ向こうも何もしないのだろう。ていうかむしろ可愛い。しばらくは見てられる。


 少しの間眺めて、エビルボアのもとへ向かった。

 エビルボアは一緒の場所にいる訳ではなく狭い範囲の中で点々としていた。


 しかし一体が俺に気づき唸り声を上げると周りの三体もこちらに向かってきた。


 一体を避けた後に他の三体が一気に突進してきて、ギリギリかわせたが、少し牙が当たって切り傷が出来た。血は垂れているが痛みはそこまで感じない。


 ちょっとめんどくさいな。さっきの【アイスランス】で四体同時に倒すか。


「アイスランス!」


 ブラッドベアの時と同じようにエビルボアたちを貫いた。


 エビルボアとの戦いが終わり、自分の傷を少し見ていると、フィーネが進言してくれた。


 《聖属性魔法、【ヒール】で治せます》


 やっぱりそういう魔法もあるんだな。

 感心しながら自分に【ヒール】をかけた。

 するとみるみると傷が塞がっていく。

 これも誰かが怪我した時とかにかなり便利そうな魔法だ。


 エビルボアを回収し、他に魔物がいないか確認するために『サーチ』を発動させると、ゴブリンの集団が移動していることに気づいた。しかもその進行方向は、ミーアのほうだ。偶然にその方向なのかは分からないが、とにかくまずい。


 早く帰らないと!


 ミーアに危険が迫っていると分かり、猛スピードで拠点に向かう。


 頼む、無事で居てくれ……!

今日は二話分投稿することが出来ました。ここからしばらく間が空いてしまうかもしれませんが、待っていていただけると嬉しいです。

活動報告の方に理由を書いておきました。

見ていただけると嬉しいです。

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