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1 絶望蔓延る終末世界

他作品の文章が思い浮かばないから、気晴らしに作った。

後悔はしていない……


この話はシリアスです。

次話以降からはギャグ(下ネタ含む)が中心です。

不定期投稿です。


次話は、明日の朝9時に投稿予定。




 シャーっとシャワーが流れる浴室で、美しい女性が涙を流している。


「うぅ……ごめんなさい……もう……どうにも出来ません……」


 八方ふさがりな現状を打破しようと、何度も何度もあらゆる手を打ち、それでも最終的に悲劇を迎えてしまう。


 煮詰まった頭を(ほぐ)そうと、温かいシャワーを浴びてみるが、同時に涙も溢れてくる。


「誰か……あの子達を助けて……」


 彼女の名は聖母神アルテ……アルテノンという世界の創造神である。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――








「全部隊っ、退却なさい!!

 振り返らず走るのですっ!!!」


 ところ変わってアルテノンのある大陸……邪鬼竜グラトルが縄張りとするファースと呼ばれる大陸で、軍を率いる聖女が声を張り上げる。


 彼女は聖女キャロル。

 全人類の希望を、若干17歳でありながらその細い体で背負う、人類最高戦力の一角……その戦闘力60000。


 一般的な成人男性の戦闘力は1000であるので、その類まれな実力が分かるだろう。


 そして、彼女はこの世界で唯一、前世の記憶を持つ。


 前世では普通のOLで、余りの激務による過労で、就寝中に心臓発作が起こった。

 独り身であった彼女は、助けを呼ぶことも出来ずに40代の若さで永い眠りにつくことになる。


 が、気付けばとある国の高位貴族の娘として生まれ、6才になれば全員が受ける教会の洗礼を経て、巫女としての才能を見出された。


 このアルテノンは、何時からか出現しだした魔物(モンスター)によって、人類の生活が脅かされている。


 能力ある者の義務ノブレス・オブリージュ……貴族として、そして才能ある者として、彼女は自らの意志で教会に身を寄せ、厳しい訓練を経て、人類の希望である戦乙女……その最高位である聖女の位に昇り詰めた。


(甘かった……魔王がこれほど強大なんて……普通、漫画やアニメだったらここで私に秘められた力が覚醒するとか、ヒーローが出てくるとかあるでしょ?!)


 心の中で悪態をつく。


 油断は無かった。

 実戦経験は1000にものぼる。

 連携の訓練も、体に染みつくほど熟した……


 が、魔王はその腕を軽く振るうだけで、討伐隊は屍の山を築いた。





 聖女……その称号を得て、かねてから計画されていた魔王討伐作戦の総大将を任される。


 人類の希望を胸に集まったその軍は、その一人一人が戦闘力2~40000の選りすぐりの猛者たちである。


 更には英雄ブライ(戦闘力54000)も加わるという万全の態勢を取って、大陸を横断する大山脈に攻め入り、魔王を討ち取る。


 はずだったが……


 まるで集ってくるハエを叩き落すかのように、次々と物理的に潰される猛者たち……

 そう、魔王とは、それ自身が圧倒的な力を持つ存在だ。






 魔王……それはこのアルテノンの7つの大陸の覇者。


 最も人類が多く暮らす大陸・ファース……その実、『家畜場』を統べる暴食の魔王

邪鬼竜(じゃきりゅう)グラトル


 色とりどりの花が咲き乱れる大陸・セカンス……その実、『捕食する植物』を統べる色欲の魔王

邪妖精(じゃようせい)ラストラ


 草原広がる広大な大陸・サードル……その実、『弱肉強食』の頂点に立つ傲慢の魔王

邪眼獣(じゃがんじゅう)スぺラド


 魔物の一切存在しない大陸・フォトン……その実『死者の楽園』を支配し続ける憤怒の魔王

邪剣姫(じゃけんき)イラベル


 肥沃な大地で飢餓の無い大陸・ファーブル……その実『最低限の富』しか与えない強欲の魔王

邪霊長(じゃれいちょう)グリドラ


 最も自然溢れる多様性の大陸・シクサ……その実『数百億の昆虫』を支配する嫉妬の魔王

邪虹蝶(じゃこうちょう)インヴィス


 最も気高き天空に浮かぶ大陸・セーヴェル……その実『生』を(もてあそ)ぶ怠惰の魔王

邪神鳥(じゃしんちょう)アケトロ


 人類には、凡そ戦闘力100000程度と推察されているが、実際はそれぞれが、戦闘力200000を超える超越種たちである。




 その正確な情報量の少なさが、今回の無謀な戦いを招いた。


 キャロルは、軍を率いた者として、殿を務める。


 既に重傷を負い、意識不明の重体になっているブラドに希望を託し、出来る限り多くの者を生かすことに決めた。


「主よ、我らをお導きください……」


 前世の記憶を持っているとは言え、あくまでキャロルはこの世界の住人。

 

 高貴なる者として、ただただ人類の未来の為に、その命を使うことを(いと)うことはしない!


「必ずブライやアルトリアたちが貴方たちを討ち取るでしょう。

 だから、彼らは殺させない!!」


 そして、キャロルと彼女と共に戦友(なかま)の逃げる時間を稼ぐために、ごく少数の精鋭たちが己の全てを掛けて、グラトルに挑む。

















 そして戦場跡では目を覆うような惨状が広がっていた。


 ぐちゃ、ぐちゃ……


 グラトルは、己が叩き潰した餌を回収し、運動後の食事を楽しむ。


「ぁ……っ……」


 この場で生きている者は、グラトル以外にもう一人……聖女キャロルである。


 しかし、彼女は本当に生きているだけ……身体の欠損は激しく、生きながらに少しずつ身体を食い千切られている。


「……」


 本来なら既に絶命するような状態だが、グラトルは食事の際により楽しむ術を編み出した。


 その巨大な体躯に相応しい大きな口では、人類など10人いても一口にはならない。

 なので、その舌先を、小さな口に変化させてほんの少しずつ(かじ)ることを覚えた。


 ただし、餌はすぐに死んでしまう。


 グラトルは、餌の断末魔の叫びなどを長く聞いていたいと、何時しか思うようになっていた。

 そのあまりに残虐な性質は、より餌を長く生き永らえさそうと、さらにその小さな口に能力を持たせた。


 それは齧る際に、自身の魔力を餌に与え、生物としてより強靭にし、生かし続けるというモノだ。

 この能力のお陰で、死に至るはずの傷であろうが、餌にされた者は無理やり生き続けることになり、結果、全身がグラトルの腹に入るまで、地獄の苦しみを味わい続けることになる。


「ばっ……ぁぁ……」


 キャロルは、その地獄のような苦しみの中で、既に精神を崩壊させていた。


 女性らしくも引き締まったその体は、既に7割ほど失われ、輝くような白金の髪は、艶を失いボロボロに……

 異性同性とわず惹きつけるその美貌は、涙、鼻水、涎と顔から出る凡そ全ての体液をまき散らし、より凄惨な状態を見る者に印象付ける……


 グラトルは己には向かう餌たちを、ゆっくりと味わいながら、次は何時このような催しがあるのかと胸を躍らせる。



 そう、人類は皆、己の腹を満たすだけの(モノ)、勝手に増えて、勝手に育ち、このようにときたま面白い催しを開いてくれる。


 だからこの魔王は、人類を殲滅などしない。


 グラトルにとっては、人類など己の生に(いろどり)を与えるだけの……退屈を紛らわす玩具でしかない。

















――――――――――――――――――――――――――


聖誕歴(せいたんれき)3204年


 聖女率いる魔王討伐軍30000人の戦力を持って、出陣


 聖女キャロル率いる魔王討伐軍敗走……その際聖女含む精鋭13000人が戦死


 英雄ブライ、意識戻らず




聖誕歴3205年


 精霊術士ビスチェが犯罪組織の末端構成員に暴行され死亡。

 彼女はブライの唯一の肉親である……




聖誕歴3206年


 ブライ、長き眠りから覚める。


 目覚めから3か月後、驚異的な回復力で戦場に復帰するが、とあることで最愛の妹の凄惨な最期を知る




聖誕歴3207年


 ブライによる犯罪者狩り、それによる犯罪シンジゲートとの泥沼の戦争勃発

 

 行き過ぎなブライを止めようと、国や仲間達が行動を開始するも、妹を殺されたことでブライの精神は既に崩壊し、ただただ復讐を果たすべく殺戮を続ける


 とうとうブライは賞金首になり、己を排除しようと動く人類に絶望する……もはや英雄ではなくなった彼の復讐の刃は、全人類に向かう




聖誕歴3208年


 ブライを切っ掛けとした争いは、大陸中の国を巻き込んだ戦争を引き起こす

 

 大陸大戦の勃発


 魔王グラトル、勝手に人口(かず)を減らし続ける戦争に介入


 魔王グラトル、不機嫌な時に反抗されたことにより、全力で攻撃を加える

 それにより、一つの国が物理的に消滅


 自然環境の変動が起こり、大陸中が飢饉にあえぐ




聖誕歴3209年


 他の大陸にも影響を及ぼし、世界規模で人類が激減




聖誕歴3229年


 過酷な自然環境と魔物被害により、なす術なく最後の人類たちが死亡


 これにより、人類は滅亡する














―――――――――――――――――――――――――――



 聖母神アルテは、何度も何度も時を戻しては可能な限り介入する。


 が、ほんの少し介入するだけで、彼女の強大な力は世界(アルテノン)自体が崩壊刺せる可能性がある。


 別の手段として、聖女たちに力を与えようとしても、彼女達に耐えられる程度の力は魔王たちに通じず、結果、人類が亡ぶ。




 そのようなことを何度も何度も繰り返すうちに、彼女の心もまた削られていく。


 幾千幾万幾億と繰り返し、人類を救済しようとするも、ただの一度として滅亡を免れたことは無い……


 そして……度重なる時間逆向と、アルテの介入により、世界自体が、神の力を許容量以上に蓄えてしまい、アルテノン自体が崩壊する可能性が高まってしまう。

 そう、世界自体がアルテの力に耐えられなくなったのだ。

 残されたチャンスはあと1回……それ以上の力の行使は、アルテノンを消滅させてしまう……しかし、アルテに打開策が無く、もはや打つ手がない。



「お願い……誰か助けて……」


 頭上より降りかかる温水で、あふれる涙を洗い流しながらアルテは願う……この状況を救える手段を……ただただ己の無力を嘆きながら……




















がちゃ


「えっ?」


「ふぇっ??」


 そして、不意に開け放たれる浴室のドア。

 そこから成人男性が一人……


 彼こそが、この終末世界を引っ掻き回す主人公(ギャグ要員)である。






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