閑話:どうでもよくなりました?
エナ視点です
最近口癖になっている言葉がある。
「何とかしなきゃ、まずい。」
カリンに依存していることだ。出会ってそんなに経っていないのに何故こんな風になってしまったのだろう。寂しいからとか、そんな理由じゃない、なんというか心を両手でやさしく包むようにして離してくれないのだ。甘い甘い蜜でできた底なし沼に沈められるような感覚。そう、あの時もそうだった。あれは寝床を誰が使うか決めた頃のことだった。
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「駄目です。このベッドはエナさんが使ってください。」
「私、床で平気。」
「私も主人を差し置いて自分がベッドを使うことなんてできません。」
「じゃあ、主人命令。」
「・・・やはりそうなりますか。それでは折衷案としませんか?一緒に寝るということでどうでしょう?」
「どうして?」
「幸いベッドは広いですし、二人ともベッドで寝れば問題なしです。」
寝床が広いのは寝ている時に転げ落ちないようにだ。問題ないと言っているが私なんかと近くにいて嫌ではないのだろうか、不安になって悩む。
「甘言。」
「何か言った?」
「いえ、何でもありません。」
「・・・カリンがいいなら、いいよ。」
さっきまで自己嫌悪になりながら悩んでいたのが嘘のように私は答えた。何に悩んでいたのかさえ思い出せない。
「それじゃ決まりですね。」
「うん。」
「悪魔もなかなか使えますね。」
「何?」
「いえ、何でもありません。」
こうして、その日から私たちは一緒に寝ることとなった。
そして一緒に寝るようになったある日のことだ。あの時は魔がさしたとしか思えない。
すやすやと寝息をたてるカリンを見て、私はその日の昼のことを思い出していた。
一通り狩りを終えて汗を流そうと川に来ていた時だ。先に水浴びに来ていたのか、そこにはカリンがいた。声をかけると私に気付き、近づいて話しかけてきた。
「エナさんも水浴びですか?そうだ!髪、洗わせてください!」
「ん。お願い。」
ドワーフ族は代々男は髭、女は髪を大切にしている。私にもまだ未練があるのか、髪だけは綺麗に整えていた。だがカリンが洗うのなら間違いないだろうという謎の信頼により了承してしまった。
それよりだ、それよりもだ。私は目の前にあるその二つの山に目を奪われていた。
そういえば私はまだカリンと水浴びに来たことがなかった。いつもは白い貫頭衣を着ていて目立たなかったが、裸で近づいてくるときに揺れていたあの迫力は、私の目に鮮明に焼き付いた。
そして今に至る。自分には無いもの、そして母への恋しさか、カリンが寝ているその横で私の手は無意識に彼女の胸に伸びていった。
「すごい。」
頭の中が麻痺したかのように、何も考えられなくなった。多幸感に包まれ、この柔らかい感触をいつまでも味わいたいと思い夢中で揉み続けた。
少しの時間が経ち、はっと我に返ると慌てて手を放しカリンの顔を見た。
「起きて・・・無い。」
すーすーと寝息をたてるカリンを見てほっと胸をなでおろした。胸だけに。
もう寝ようと、目をつぶると別の欲求が頭の中を駆け巡った。その欲求により、もうまともに寝付くこともでき無い。魔が差した。あれは絶対自分の意志じゃない。魔が差したんだ。
「もう少しだけ・・・」
そういうと私はカリンの胸に近づき顔をうずめた。
「ふぉおおおおおおおおおおおおお」
やわらかい、いいにおい、しあわせ、とてもしあわせ
我慢できずにカリンを抱き枕のようにして顔をうずめ倒した。もう悔いはない。
どれ位時間が過ぎただろうか。心地よい眠気と快感に酔いしれる中、とんとんと背中を叩かれた。
なんだ、邪魔しないでと顔上げると、そこには目を開けてこちらを見ているカリンの顔があった。
「こ、これは・・・」
何も言い訳ができない。それはそうだ、魔が差したのだから。私のせいじゃない。
「甘えたかったのですか?いいですよ。」
その言葉と共に抱き返してくるカリン。なんかもう何もかもどうでもよくなってしまった。
今でもたまに抱きしめてもらって寝ている。
閑話のために書いてる感ある。