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天使になりました?  作者: kcke
プロローグ
3/11

出会いました?

子供?視点です。

 今日はいつもと違うことが起こった。

 それは日課の狩りと木の伐採をした帰りに川で汗を流していた時のことである。

 水浴びを終えてふと前に目を向けると白い何かが木の下にある。凝視してみるとそれは人のようだった。

 長い間人と触れ合うことがなかった私は、どうしようかと一瞬焦ってしまったが、冷静になって見てみるとどうやら寝ているようであった。


「危ない・・・けど・・・」


 この森は肉食の魔物も多く、鼻の利く魔物だっている。武器も防具も身に着けている様には見えないその人を見ると、このまま放置していて無事に済むとは到底思えなかった。

 恐る恐る彼女に近づく、起こしてやれば少しはマシだろうと。そこで私はふとその人の周りに落ちている木の実を見て感心する。


「これは、ガボの実?」


 ガボの実は魔物の嫌がる臭いを放つ。知ってか知らずか、その木の実を周りに置いていたのが結果的に魔物から身を守ることとなったのだろう。それとも、背にしてるガボの木が実を落としその人を守ったのか。


 意識を目の前の人に戻して静かに近づき、凝視する。


「綺麗・・・」


声が出てしまった。

すやすやと眠る彼女の真っ白な肌、きれいな黒い髪、整った顔立ち。よもやこんな森の中で寝ているとは到底思えない彼女の佇まいに思わず息をのんだ。

 いつの間にか心を奪われ、ずっと見ていると不意に彼女の大きな瞳が開いた。


「・・・どちら様でしょうか?」




 言葉が通じたことに驚いたが、どうやら話を聞いてみると遠い国からきた人で、道に迷いこの森に入り込んでしまったらしい。人里は遠く、さらに本しか持たない彼女を見て疑念が湧くが、何か事情があるのだろうと胸にしまった。

 とりあえず、安全確保と事情を聞こうと彼女を家に招くことにした。今思えばなんでこんなに怪しい人物を家に招こうと思ったのか今でもわからない。言葉が通じたことによる安心感に騙されたか、それとも長い間一人でいた寂しさからか。 



ーーーーーーーーーーーーーーーーー 


 家に着くとまず椅子に座って自己紹介をした。

 彼女は名前をカリンと名乗り、二ホンという所から来た人間だと言っていた。

 二ホンという場所は知らなかった。まああまり森から出たことがない私の知識だ、役には立たないだろう。

 続いて私も自己紹介をした。名前をエナ、ドワーフとエルフの混血だと。

 なにやら興奮して目を輝かせている姿に私は少し驚いたが、心の中で安堵していたところもあった。

 彼女は知らない。忌み子という存在を。

 

 ドワーフとエルフは種族間の仲が悪い。かたや力と鉄を愛し火を崇敬するドワーフ族。かたや知識と植物を愛し自然を崇敬するエルフ族。仲が良くなるわけがない。

 それなのになぜか生まれた私は、エルフの長身でスレンダーな体形でもなく、ドワーフの豊満な体形でもない、背が低く、肉付きも薄い悪い所取りをしたような体形になっていた。

 それどころか、エルフの得意な自然魔法も苦手、ドワーフの得意な錬金魔法も苦手でいい所なんて一つもなかった。

 両親の家族にさえ忌み子と馬鹿にされ、肩身の狭そうにしている両親の姿に耐え切れなくなってついには家を飛び出してしまった。そして現在に至る。


 あまり話したい話では無かったが、紹介をする際に飲んでいた酔うはずのない酒が回ったのか、彼女が聞き上手だったのか、口下手ながらも口が回った。

 

 「いやぁ、良い所取りじゃないですか!それ!」


 彼女も赤い顔をして酒が回ったのだろう。慰めてくれていることに心の中で苦笑する。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー 


会話や食事が進み、いつの間にか周りは夜になっていた。


 「あ!そうです!」


 急な大声に驚きながらも彼女の話に耳を傾ける。

 

 「抱きしめてもいいですか?」


 素っ頓狂な質問に目が開く。彼女は私の回答を聞く間もなく後ろに回り込み抱き寄せてきた。


 「ふわー柔らかーい」


 私は彼女の行動の理由がわからず、ただ顔を赤らめて体を硬直させていた。

 ただ抱き寄せてくるその体はとても柔らかくいい匂いがして、なんというか心地よかった。


 「はっ!そうじゃありませんね。それではいきますよ。」


 

 「啓示を与える 神の力において その真理を示せ」


 その瞬間、私の体から力が抜け、眩しい光が周りを覆った。

 辺り一面真っ白になり、その光の中を私はただぼーっと流れに身を任せ漂う。

 すると私の目の前に突然大きな木が現れた。その木は燃えるように赤く煮だっていた。

 

 「これは・・・何?」

 

 意味が分からない。木が煮立つ?液体でもないのに炭にもならず?

 理解できずにただ困惑していると急にその大きな木が溶け、私に覆いかぶさってきた。

 

 「い、嫌!」

 

 そこで私の意識は途絶えた。






 ふと気がつくと私はさっきまでいた椅子に座っていた。顔は汗だらけだった。

外を見るにまだ時間もあまり経ってないみたいだ。

 後ろの床で寝息を立てている彼女に、今のは何だったのかと問い質したい気持ちもあったが、彼女の寝顔を見てやめた。心の中で夢だったのだろうと自分を納得させ、彼女を自分の寝床に運び寝かせた。

 木と草や魔物の皮で作ったものだが中々寝心地はいい自慢の一品だ。


 今日はいつもと違って少しにぎやかな夜だった。近いうちに彼女はここから居なくなるだろう。自分には引き留める理由も無い。少し寂しさを感じながら、私は近くの床に寝そべりそのまま眠りについた。 


 







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