女性型幼児監視員
この作品はフィクションです。
ヒューマノイドカタストロフ、語感の響きが良くてチョイスしました(暴露)
お読みいただければ、幸いに思います。
※アンドロイドの名称を短くしてみました。「女性型幼児監視員」
女性型幼児監視員、個体識別番号〇九〇四。識別呼称、佐竹光子。
白のブラウスに青いロングスカート。腰の位置まで伸びた黒髪、見目は麗しく妙齢の、生きた女性のカンバセではあるがその体内には血液ではなく活動継続のために必要な、燃料が脈々と流れている。
女性型のヒューマノイドを購入した、もちろん金はない。馴染みの友人から中古で買ったのだ。それでも、安いとは言えなかった。
「お前はいつから、人身売買を始めたんだ。」
俺が尋ねると目の前の男、喜瀬川は困ったような顔をして首を振る。やれやれ、といった感じだ。
「これは女人ではないよ、"女性型"のヒューマノイドだ。ガイノイドとも言われている。おれが売っているのは、あくまでも"物品"だよ。」
“壊しても器物損壊にしかならない、物だ“そう言って喜瀬川は唐突に女、『佐竹光子』の洋服を脱がし始めた。ブラウスのボタンを丁寧に外していく。佐竹光子は、抵抗も恥じらいも見せず喜瀬川のされるがままになっていた。
見た目だけは、情事前の男女のようだが喜瀬川の気分はマネキン人形の服を脱がす感覚だった。
「お前!いきなりなにしてんだ!」
俺は喜瀬川を怒鳴った。
なおも喜瀬川の手は、ブラウスのボタンから離れていない。
「あ?貴方が怪訝な目で光子を見るから、"ロボット"であることを証明しようと思いましたが何か。」
「別に脱がさんでもいいだろう。少女を手込めにしてるみたいで、なんかイヤ!」
俺の顔は多分今、真っ赤だ。
「童貞でもあるまいに、恥じらいやがって。光子はデザインこそ美麗に作られているが、"女"としては使えない。マネキンや美少女フィギュアに興奮するような、青臭い中高生なら別だがな。」
喜瀬川は、フンと鼻で笑うと光子に背中を見せるように言う。とはいうものの、喜瀬川はしっかりと光子の"正面"をブラウスで隠させている分、"彼女"のことを物だと思っているわけではないようだ。
女性型のヒューマノイド、ガイノイドはその使用目的の八割が"男性用"であった。使用方法は、口にするのを憚るようなソレだ。光子は中古だから製造当初は確実に、使用目的はソレだろう。
現在ガイノイドの需要は拡大し、光子のような子守りや家事代行の家政婦、母親と分担し子育てをするガイノイドまで作られている。男性型のヒューマノイドも製造されていないわけではないが、女性型と異なりあまり見た目に拘ってはいないようだ。
建設現場に行くと、機械の部分がむき出しのまま働いているヒューマノイドを見ることが多々ある。ロボットに限ったことではないが"外見"に気を使うと金がかかるのだ。
機械的な声色ではい、と返事をすると光子は自身の黒髪を両の手で束ね持ち上げ、俺に見やすいように背中を見せてきた。
光子の背中、もとい背面部にはカタカタと音を立てる、歯車やらの部品が収納されていた。あまり機械に詳しくはないが、歯車以外にも難しい部品が多々入っているのだろう。
背面部のその上、人の、うなじにあたる部分には「◯九◯肆」と印字されていた。識別番号だろう。
先程服を脱がせた時喜瀬川が背面部の蓋を開けたのだろう、彼女の機械的な部分が丸見えだった。
機械オタクならさぞや流涎モノだろうが、生憎と俺にはその方面にまだ興味がない。
「光子、もういいよ。」
喜瀬川が言うと光子は事務的に、ブラウスのボタンを留めていく。やはり、恥じらいの色はない。
「燃料は基本的に経口摂取だが、光子は二世代前の旧式だから背面からでも供給できる。まあ元々背面部からの燃料供給だったのを経口摂取に改造したからなんだが。」
「燃料は、アブラか。」
「菜種でもゴマでも椿油でも、油と付くものは燃料になる。問題なのは、油の質だ。劣悪なものは使うな、体内から錆びて動かなくなる。」
「油なんか、あったかな。」
部屋の中を見渡してみる。油のあの字も見当たらない。裏手の物置に、灯油があっただろうか。
「お前んち、揚げ物用の食用油もないのか。」
「食事か、最近してないな。」
厨の光景を思い出した。カマドには蜘蛛が巣をはっていた気がする。
「いつまでも霞なんか食ってないで、真っ当な食事をしろ。食べることは良きことなりぞ。」
「お前のような健啖にはなりたくないがな。」
この喜瀬川という男は馬鹿みたいに喰う。
「あと、光子は改造した家事代行のヒューマノイドを更に子守り用へと改造を施したものだ。家事は一通り出来るし新しく学ぶことも出来るが子育てや子守りは、知識をただ詰め込んだだけに過ぎない。人間でいう、にわかの状態だ。知識はあっても経験が不足している。」
「まあ、中古だからその辺は覚悟してたけど。」
人間ひとりを育て上げるのは、かなり難しい。玩具みたいに途中で放り出すことも出来ない。
だからこそ一度は"あの子"を里親に出したのだ、自分には育てられないと。
「お前に、人の親が勤まるのか。」
人でもないのに。
まとめてみました。
お読みいただき、ありがとうございました。




