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天才

外装もなかなかに華美な装飾が施されていたのだが、内装はその比ではなかった。



おそらく魔法の類が、建物のいたるところに施されていることは明白であろう、何せ外郭より中の方が広いのだ。



日の光がよく入るようになっている芸術的なガラスたちはまさに圧巻である。



どこか教会を思わせるこの建物の異質な部分は、高めの天井の天辺(てっぺん)ギリギリまでにおおきな、というか大きすぎる本棚が何個もおいてあるところだろうか。



そういえば、此処にもシャボン玉みたいなものがふわふわと浮いていた。



ここは陽の国(ヴァタ)の首都フレリアスにある、フレリオス国立魔書館、この国の国王が魔法技術の進展のために創立したらしいこの建物には、様々な魔自伝(スペルブック)が様々な魔法使いから寄付されている。



魔自伝(スペルブック)とは、簡単に説明すると魔法使いの研究記録簿のようなものである。



流石に寄付されていると言っても、自身の家系の先祖たちから代々受け継いできた研究を引き継いできたものだから、どの魔法使いも一部しか寄付しないようなのだが、それでも、本5冊分くらいは寄付している。



僕は、近くにある本棚に赤い表紙の本を取り出す。



「街を歩いているときに見かけた看板は、どれもこれも全然知らない文字だったから、期待はしてなかったけれど、やっぱり文字は僕の知っているものとは違うのか....」



本に書いてある文字は、言語を読み書き話す含めて2000種類ほど知識として持っている僕でも、見たことも聞いたこともないような文字と、ふしぎな図のようなものが本の中をひしめき合っている。



これは後で知ったことだが、案内役(インフォメーション)の人に声を掛ければ、どんな文字も読めるようになる魂体魔具(キャストアイテム)を貸してくれたらしい。



まぁ、たとえ知っていたとしても、此処フレリアス国立魔書館は国王に直接仕えている魔法使いや貴族生まれのお金持ち魔法使いなどが利用できる高等な建物だったようなので、



勿論、お金も住民印も持っていない僕は入館料も払わずに『魔性の変性(デビリーネーション)』を悪用している僕は、『魔性の変性(デビリーネーション)』の庇護下にあるからそんなことにはならないのだが、本当なら見つかれば、即死刑である。



そんな危険を(おか)してまで、此処で誰かと関わりたくはないし、僕がこのフリフリドレスを着ているところを、あまり誰かに見られるということはしたくない。




────── では、文字も読めないしここで引き下がる?




いや、もちろんそんなことはしない。




────── じゃあどうする?




もちろん





此処で覚える。





僕は取りやすい胸元あたりにある本を一冊手に取る。



おそらくだが、今僕のやっていることは第三視点から見ると、手に取った本をパラパラーッと意味もなくめくっているだけに見えるだろう。



しかし、違う。



今僕は、この本を読んでいるのだ。



これは僕流の速読なのだが、僕の知識によると実際の速読とは大きく異なるそうだ。



知らない文字が多いため、内容を何となく記憶にとどめておくということはできないし、どの文字も記号のように見えるため、絵をそのまま暗記しないといけないようなかんかくである、故に速読に少しだけ時間がかかる。



図のようなものは、何となくこんな形とだけ覚えておくということもいいような気もするが、現状、まったく文字を知らない僕には、文字を理解するのにとても重要な手がかりであるためそれもできない。



ならばやむなしだが。




全てのぺージをそのま(・・・・・・・・・・)ま暗記するか(・・・・・・)




ここまでの工程を、本をパラパラとめくりながらこなす。



ページをそのままの形で頭の中の黒板に書き込んでいるのだが、速度的にはまだ余裕があるようだ。



めくる速度を倍にしても問題なさそうだな・・・僕の脳の処理速度、少し早すぎないだろうかとふと思ったが、通常を知らないので、何とも言い難い。



一冊目は約20万文字、正確には234,082文字のついでに、図は多種あるが742種類、ページはざっと640ページってところだ。



ただの文字ならばもう少し早く済むがここまででかかった時間は6秒。



「うん....一冊じゃ要素(ファクター)が足りないな....八冊くらい読めば応用で全部覚えられる ───── かな? 」




八冊読み終えるのにかかった時間は36秒(途中で目が慣れて少し早くなった)で考察に掛けたのが、大体5分。



読み終えた後、まだ閉じていなかった最後の一冊をパタンと閉じて少し伸びをする。



「んぅ....、覚えた....」



記憶を失ってから、初めて全力で頭を使ったので少し疲れた。



此処の言葉を覚えるのに掛けた時間は四捨五入しても6分。



僕的には少しかかりすぎな気もするが、魔法の形を何となく掴むのには1時間もかかった。



まぁ、僕の何となく掴むというのは、知識の応用も含めて、この国の現状わかっている魔法の現象、要素、要因などをすべて理解したという事なのだが.....



それにしても時間を掛けすぎである。



一応、図書館の本をすべて読破しておいたが、なかなか量があって5時間もかかってしまった。



流石に僕も驚いたのだが、6秒で速読する場合、本をめくることさえできればの話だが、僕は本をいっぺんに16面まで読むことができるらしい。



少し、覚えた知識で本をめくるのに魔法を使ってみたのだが.....これは本当に驚いた。



本棚一つ一つ、ものすごい高さがあるので、どうやって本をとろうかと考えていたが、便利な魂体魔具(キャストアイテム)で水晶のような物が本棚一つ一つにに設置されていて、それに魂体を少し送ると今欲しい本が手元に来てくれるのだ、とても便利である、ちなみに返す時も同様に、本を水晶に近づけて魂体を送れば本を返せる。



中世風だった街並みを見て現代日本とは利便性の面で、圧倒的に劣っているだろうとか思っていた僕の予想とは裏腹に、この国は魔法を使って国の利便性を支えているようだ、これには少し圧巻した。



個人的に感動したのは衛生面での習慣で、この国にお風呂という概念はないようだが、魔法の基礎となる魂体炎上(アムリフト)という物の応用で、体の汚れという物すべてを焼払うことができるそうだ。



リラックス効果が見込めるかどうかは置いておいて、すごく衛生的かつ、効率的だなとおもった。



しかし、魔法の知識を得たことで、さらに疑問に思うことも増えてきたが、とりあえずは、ジャンヌを5時間も待たせているのでとりあえず早めに出た方が賢明だろう、やらないといけないことも決まってるしね。




「さぁて....」




フリフリのドレスをなびかせながら、堂々と、正面の出口へ続いている赤いカーペットを道なりに歩く。



窓から差し込む太陽の光を見ながら、少し考える。



「本当に....太陽が動かないんだね。 」



ここに来てから約6時間ほど経過しているが、太陽は一ミリも位置をずらしていないようだ。



先ほどの本の中での知識で、理屈はわかっているが、にわかに信じがたい。



この世界には、宇宙という物は存在しないのだろうか?



確認する手段は、今のところないのだが....



あぁ、それよりもジャンヌだ──────



怒ってるかな....怒ってるよね....?




彼女の事を想像しながら、少し急ぎ足で図書館から出る。







まぁ、急いで出てみれば彼女はぐっすり4時間の睡眠をとっていたのだけど....まぁ、起きるまで、隣で待っててあげることくらいはしてあげるか....僕はデートをすっぽかしたわけだしね。



綺麗なジャンヌの寝顔をみてるのは、何となく飽きなかった。

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