お昼寝
この国では、魔法の研究が盛んなようで、街には様々な魂体魔具が街の便利を支えているようです。
私の見たところでも、魂体指定転送の機能を持った魂体魔具の施設なんかも存在しますね、これならば街内のどこにでも一瞬で移動することが可能でしょう。
魔法を源にこの街はあらゆる利便性に特化しています。
完全魔法依存の国、この点では、私が活躍していた時代の中世フランスは負けていますが、私の見立てでは、魔法の技術はまだまだ未熟に見えます。
しかし街並みは、全体的に昼間の太陽に栄える赤で、道路や建物も、全部レンガ造りで、とても素敵な街です!!
陽の国というほどであるから、太陽の色を基調として赤色のレンガを意図的につかっているのでしょうか?
主様も「中世風かぁ....太陽とレンガってこんなに素敵なんだね 」っていう反応でした。
そこら中になぜかシャボン玉みたいなものがふわふわと浮いているのですが、それも太陽の光を受けて虹彩を放ってとてもきれいです!
時刻はわかりませんが、明るさを鑑みるに素晴らしいお昼ですね!
プルトくんも晴天がうれしいのかどこか上機嫌で、顎の下をなでてあげると幸せそうに目を細めてゴロゴロいってます、かわいい!
まさに絶好のデート日和なのですが.....
「デート中に図書館にこもって1日時間をくれって────どういう了見ですかっ!!! 」
街中に私、ジャンヌダルクの悲痛の叫びが響き渡りますが、通行人は大勢いるのにも関わらず、誰一人として私の方を振り向きません....
ゴロゴロいってたプルトくんだけがビクッと首を私の方にむけてました。
我ながら、『魔性の変性』というスキルの恐ろしさを痛感する一日ですね。
「はぁ....」
膝にプルトくんをのせながら、ここ、国立図書館の入り口前にある階段に腰を掛けてぼーっと街並みを眺める。
入り口の前に座っていると、これから入ろうとする人の邪魔にならないかと思うかもしれませんが、入り口前といっても、入り口が15個もある巨大な建物なので、別に問題はありません。
これだけ、大きな建物ですので、必要な情報や、主様の場合は魔法の知識も得ることができるのではないでしょうか?
ただ、言語の問題がありますね....
文字が読めないと、どうしようもないですし、言語を一日で覚えるのなんて至難の業というか、不可能ですし.....
そもそも、魔法というものは、一日やそこらで習得できるものではないです。
魔法使いの者が、数年をかけてやっと基礎を覚えることができるくらい、魔法という物は高度な代物なので例外が存在するにしても、無茶がありますね。
まぁ、私の場合は主に魔法を授けられたため、一瞬で国最強の魔法使いになったんですけどね。
まぁ、それはさておき、憂鬱な私はボケーっと主様の事を思い浮かべているのですが。
主様って、....なんといいますか....
めちゃくちゃかわいくないですかっ !!!!
少し長めなサラサラの黒髪は、漆黒に染められた絹が如くの質感、
え?、いつ髪に触れたんだ?ですって?もちろん、一番最初、主様がお目覚めになる前に、膝枕をして差し上げて待機していたので、その時にたっぷりと堪能させていただきました。
瞳に翳りを残すも、微笑むときは静かに眉間を揺らす華麗さ、あれはまさに春に咲く美しき紫色の花!!
少々1を教えると10までも、いや100までも身に着けてしまう、あの鋭すぎる鋭さや、口調が少々ばかり小賢しく胡散臭く感じる節もありますが、
あの少々塩をふったようなツンデレさは猫のようで愛らしくもありますね。
私猫大好きですので、ツンデレとかもう大好物なんですよね!
プルトくんはデレデレ系猫なので、まぁそこもすごくかわいいのですが、少々ツンデレチックな、女装主様とデレデレなモフモフプルトくんに挟まれる、最高の逆ハーレム状況あってこそのプルトくんなので。
先ほどまでその私にとっての理想郷を味わっていたためか、プルトくんとただひたすら待機している今の現状に不服です。
それならば、まだ見ぬ街を探索してみるのもいいのではないかと思う人もいるかもしれませんが、残念なことに、私は主様から100m圏内にいなくては、存在を維持できないため、此処から動くわけにはいきません。
ただただひたすら、外を眺めながらため息を吐く時間、
強いてなにかをするなれば、何かを夢想するということのみである。
夢想していて面白いと言えば、魔法使いにとって魔自伝とは、最高機密の代物です。
図書館のなかには、おそらく、様々な魔法使いの魔自伝の一部が保管されていると思います、つまり、無一文のどこぞの誰ともしらぬ主様が、図書館で読書をしていることが誰かに知られた場合、普通に捕まるか、最悪の場合、その場で死刑でしょうね。
なので、もちろん今の主様には『魔性の変性』を使っているのですが....
想像もしてみてください?
主様はいま、可愛らしいフリフリのドレスを着て読書を嗜んでいるのですよ?
......
はぁ、またため息が漏れた。
「にゃあ~? 」
何となくプルトくんの顎を撫でてていた手を止めると、彼は首を傾げて不思議そうな声を出した。
本当、いいお昼ですね────主様がいたら、の話ですけど....
国と自身の信じた主にも裏切られた私は、今、主様が手早く本を読み終えて戻ってきてくれることを信じている。
ただ夢想しているだけのひと時、夏の抉るような暑さを受けながら、ボーっと前を見据える。
先ほどまで、主様の事を想像していたせいか、気付かなかったのですが、階段の下に大きな噴水が見えます。
これはみやびやかですね、夏の── 暑さも ───...わすれ──られ..──そ..────...ぉ...で、す。
うとうとと猫を抱きながら昼間の幸せな暖かさを背に夢の世界に旅立つ。
ヴァタの首都フレリオスの沈まぬ太陽は、暖かい光で、ジャンヌと黒猫の毛布の代わりをする。
あと4時間後に、八統翳浬が、図書館の本をすべて読破するのだが、今はただ、二人の安眠を紫坊は願うばかりである。




