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喪失

やっと2話目がかけました。w


時間がかかって申し訳ありません。


何分、バイトで時間が....なんて言い訳をしてみます。

「お前さ、何読んでんの?」



どこかの公園での風景、オレンジ色が街を包み込む寸前のひと時。



自分と同い年くらいの子供たちが、楽しそうにくだらないお遊びをしている。



それは、とても霞んでいて古ぼけている、幼い頃の記憶。



例えるならば、長年使われ続けられた古いビデオレコーダーのような、



DVDレコーダーだのHDレコーダーだのが登場してしまって、役目を全うしてしまい、物置の奥でこっそり眠らされ続けていたそれが突然、無理くり起こされてビデオを再生させた映像が如く、



今僕の見ている夢は、とても曖昧で、どこか懐かしい感じがした。



「うーん、なんかマニアックな小説... 」



さっきまで、公園でほかの子供たちと遊んでいたはずの少年が一人、突然声をかけてきた。



ベンチに座って本を読んでいた幼い僕は、本を読んでいる人に、突然横から話かけてくるなんて、どこの非常識な奴だろう、っとか、彼に対して思いながら、



本からは視線を外さずに、声だけで返事をした。



「あっ、お前今、本読んでんのに話しかけんなよとか思っただろ。」



僕は彼に腹が立った、さっきまでほかの友達とかいうのと遊んでいたのだからそっちに戻ればいいのに、



もう帰ってやろうかと思って、パタンッと薄緑色の表紙の本を閉じて席を立った。



「ばーか、帰んのかよ?そんなんじゃ友達できないぞ。」



友達がいなかった僕は、その言葉が自分のどこかに刺さる感じがして、ピタッと体の動きが止めてしまった。



「いらないよ....そんなの」



自然と出ていった言葉は、僕の強がりだった。



わざわざ公園のベンチで本を読んでいたのだって、友達というものに憧れを抱いていたからだ、



彼は僕にとっての午後の憂鬱さを彷彿とさせる、夕日のような存在だった、



人に関わるのが怖いという感情を素直に自身の中で受け止められずに、強がって、憧れているものをくだらないと自身で受けとっていた自分とは正反対に、



触れたり、近づいたりすることは不可能だけれど、それでも確かにそこにあって、僕らに、何物にも負けない輝きを魅せる太陽のような彼に羨望していた。



彼は、僕にとっての憧憬そのもの。



なのに....どうして、僕は自らその太陽(かれ)に近づく機会を───



「いや、いる」



バッと、彼は僕の手から薄緑の色をした本を綺麗に掻っ攫う。



「ちょっ───」



彼は僕の咄嗟に驚いて出た僕の手を払いのけて、ベンチから見て反対方向に回り込みパラパラと僕の本をめくって眺める。



「ははは、これ難しい漢字使いすぎてて全然わかんねぇ」



ゲラゲラと笑いながら、夕日をバックに小説を閉じてヒラヒラさせている彼。



「なら返してよ....」



僕が少しあきれた顔をすると、(たいよう)は僕に手を差し伸ばした。




「返してほしかったら俺と握手しろよ、それで俺たちは親友だ」




ニヘラと笑って僕を光へと導く彼に....僕は....僕は....






「───じ、───さま 」



川のせせらぎが聞こえる、耳元で聞こえる。



とてもきれいなこの音と、もう一つ、なにか違う音が聞こえる。



「あ─、じ──さま 」



それは、安らぎの川の音とは別に奏でられる怒りの混ざった不協和音。



「あーるーじーさーまっ!!!!」



はぁ、なんだかものすごく体がだるいのだが、僕は起きないといけないらしい。



やむなし。



むくりと、気怠く起き上がる。



「ここは....」



夜の森?



月は、満月から下弦の間だろうか、星は現代日本ではもう見られない位煌々と瞬いている。



夜にしては、ましてやこんなに星がきれいに見える夜にしてはあたりが明るすぎる気がするが....



「私も詳しくはわかりません、そのご質問にはお応えできかねます。」



僕は、先ほどまで何かやわらかいものを枕に寝そべっていた気がするのだが、そのことを思考する前に後ろから声が聞こえてきた。



まぁ、反射的にではあるのだが、先ほどから僕にご主様とか叫んでい心地よい睡眠を阻害した誰だかは知らないが僕の従僕?が僕の後ろで僕の問いに答えてくれやがっていただいておりまするので、僕は後ろを振り返らざるにはいられなかった。




「えっ...」




僕は驚愕した。



清楚な金髪。



小柄な躯体。



そして、とても艶やかな葵い瞳。



そこに立っている少女は人形が如く完璧に美しく、その美しさのあまり驚愕




したのではなく、




その彼女の引き立てる背後の照明(バックライト)に僕は驚愕したのだ。



僕のさっきみていた方向を例えば後ろ方向としよう。



その後ろ方向には、夜の森、満月、眼を閉じれば幾千の星だったのだが、



前方向には、





太陽が、蒸し暑い夏の森を照らしていたのだ。




「あっ、あの...主...様。」



いや、まずは落ち着いて彼女の事について詮索しよう。



少女が突然もじっとしながらも僕の顔を見上げてはいるが、視線を合わせようとはしていない。



「...なに?」



誰?、と聞きたいところだが、少女の顔が少し火照っているのが目に映るので、まずは要件の確認をと思った。



具合がわるかったら大変だ。



「そんなに...見つめられると私....照れて、しまいます。」



僕はこの金髪の少女の反応を知っている。



女性は照れるともじっとして、視線を合わせてくれなくて、顔が火照るのだ。



「なんだ、そんなことか。」



なぜわかっているのに僕は彼女に尋ねたんだろう。



というか、なぜそんなことを僕は知っているんだろう。



「なんだそんなことって....なんですか、それ。」



むぅと顔を膨らませる金髪の少女はプイッとそっぽを向いてしまった。



「ごめんね、熱でもあるんじゃないかと心配したんだ、ところで君に聞きたいことがあるんだけど。」



「....なんでしょうか主様...?」



金髪の少女は、首だけをこっちに向けて僕に応えるようだ。



僕を主と呼んで称えている割にはちょっと無礼じゃないかなと、今更になって初対面の少女への第一印象がきまった。



「君は....誰だ....? 」



最初に、状況の確認をするのが基礎なのだが。



はじめに説明できないとかいっていたから聞いても時間の無駄だろうと判断した、



しかし、普通の人間はきっと初対面の彼女に「あなたはだれ?」って聞くのが一般的なのではないだろうかという僕の世間知らずな発想は、



彼女のキョトンとした顔に覆された。



「主様....?主さまは何をおっしゃているのですか....?もとより私を呼んだのは──」



『にゃあ〜』



僕と彼女の間、空が昼と夜を分けているその狭間に薄緑色の封筒を咥えた黒猫が少女に擦りついて鳴いていた。



「わぁ....猫ちゃんです! 主さまっ、猫ちゃんですよ!! 」



わぁ、っと顔をパァッと少女は顔を輝かせながらしゃがんで猫の視線にあわせる。



おぃおぃ、この僕の従僕?は主人の質問への返答より猫の方を優先するのか?



別にいいけど、まずまずこの少女と僕の関係もわからないわけだから文句はない、故に、ここは話を中断して僕も話を合わせて黒猫に触れるとしよう。



可愛いし。



エキノコックス等の寄生虫は大丈夫かなとおもう?いま、僕達は橋の上にいて、下に川が流れているのだから、触ったらすぐに手を洗えばいい。



というわけで満を持して猫に戯れよう。



「うん、可愛いお客様だね。なんだろう?この黒猫、なにか咥えて── 」



何となく猫の加えている、薄緑色の封筒に触れようとしたその瞬間。




──── ッ──が..──ァ...っ




唐突にものすごい頭痛が走った。




『翳浬、お前はだれだ』



何かが脳裏で僕に囁く。



聞きなれているようで、懐かしい、しかし誰のものかわからない声。



姿は黒く霞んでいて、よく見えない。



「僕は...八統...翳──ッ...!?」



え、?



僕は、僕の名前は八統 翳浬(やとう かげり)で間違いはない。



そう、僕という存在は八統翳浬という人物だ。



だが、違う。



僕は僕が八統 翳浬だということを知っている。



しかし




「主様....? 」




僕は....



僕こと、八統翳浬とは



「誰───なんだ....」

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