金剛
....まずい、これは非常にまずい。
「こちとら気分良好、気持ちよく寝かせていただいていただいていたのに、お嬢さん方の悲鳴で夢の世界から引き戻されてしまいまーしたっ.... 」
ジャンヌは....、おそらく伝達魔法での意識伝達への衝撃が予想以上に強く、彼女の魂体にまで影響して精神と身体が乱れてしまっているようだ。
理由はたぶん彼女が僕の魂体で自身の存在を確立している使い魔であるため、僕との魂体とのリンクが想像意上に精神の奥深くまで根付いていて、その精神に僕の魔法を溶化してしまったための発作だと推測する。
あの魔書館にある魔法の知識はすべて得たが、まだこの世界のたどり着いていない領域の魔法を使ってしまうと、こういった予想外の事が起きる.....僕もデータが足りないという理由で、考察しきれていない部分があったのは確かだ、それより今の状況だ....敵は30人前後、正確にはおそらく36人、自己防衛のため、魔法を使うほかないが、まだ試運転もろくにしていない僕の魔法をここぞというときの戦闘に、使用したくはなかった。
「それ相応分に期待させてもらっちゃいますけど....よろしいですかねぇ? 」
僕と崩れて震えているジャンヌにじっくり愛おしげに舐め回すような視線を交互に送ってくる。
今、『魔性の変性』は使ってないはずなんだが.....暗がりでよく見えていないということにしておこう。
「....あぁ、神...か...まで....んて....しう....を....」
ジャンヌが祈るような姿勢でぶつくさと震えている。
はぁ、やはりやるしかないか....
「────、よし、僕の計算に違えはない....間違いがあるとするならば....世界のほう、かな? 」
手にある薄緑色の本のページを、パラパラと夜風になびかせる。
「おぃおぃ、やる気か?、此処にいるのは元宮廷魔導士だった、外道魔導士集団だぜ....? 」
円の集団が誰かが、戯言を口にする。
元宮廷魔導士ごときが何をほざく....
ここに顕現せしは───ッ!!!!
「神の雷なるぞ.....っ!!! 」
ズトンッ!!!!
っと、雷が僕の周りに光速で降り注ぎ、魔法陣を焼き描く。
「なっ....なんだ....!? 」
「僕を選べ金剛杵、帝釈天に仕えし輝きのダディーチャよ────、貴方を認めるは見下しの象徴神にあらず、この我らが人間也.....奉ろうぞ、我魂の本懐を見つめ....貴方が認めるならば顕現せよッ!!!!」
バシバシと走る、魂体の激走が起き、爆発する。
雷の魔法陣は熱へと変わり、僕の手中におそまる....
形を成していくは、帝釈天がかの、最凶の邪竜を打ち滅ぼした輝きの神器....金剛杵。
「なっ....なんだ、あれ....? 」
「なんなん、だ....あの魔法....? 」
おそらく、魂体の爆発を目にしたのは初めてなのだろう。
人間は魔法を正しい方法で御すことが、基本的にできないのだ.....
魔法とは、神様が使う力の源、魂体を人間なりに利用したもので。
完全に魂体を使用するには、神様が手を下す必要がある。
人間の場合は、魂体の器というには、あまりにも、神様に造られた存在、魂体そのものに近い存在で、魂体を操るには向かない存在だったりする....実際、しっかりと正規の方法で使用された魂体は爆発が起きる。
即ち、此処でおきた魂体の爆発は、魂体を正しく使用された魔法....いわゆる神の力だ。
「ちっ....不完全燃焼か.... 」
バチバチと、右手に握った者が、形を成していく。
左手にある本も、金剛杵顕現の雷がバチバチと新しい名を、熱で刻んでいく。
「逃げた方が身のためだよ....焼かれたくないよね....? 」
熱で真っ赤な状態の金剛杵をこの集団に付き向ける。
「けっ....そんな見かけ重視の燃費の悪い魔法にプロが焼かれるかよ....?身の程を知れよ、お嬢さん───ッ 」
完全に牽制できると思ったのだが、、、この自称外道魔導士集団は想像以上に頭の弱い雑魚魔導集団なのだろうか....
「プロって....もとでしょ? 」
「...... 」
無言で36人が杖を僕の方に向ける。




