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moon light fantasy  作者: ケンケン4
6/7

推測と撤退

「…。」

「そう怒るなって。フォルツ。」


次の日。帰ってきたその日は死ぬ様に寝てしまった。起きると俺は酒場のテーブル席で黙ってナッツをボリボリと食べていた。酒も飲みながら。

ニナは怒るなと言ってニヤニヤしているのが無性に腹がたつ。


「…ランに借りを作るなんて。」

「だからごめんって言ったじゃん!あの時のまま炎帝の城館に突っ込んだら死んでたよ?」


まあ、少し失敗だったかな。とニナは珍しく真面目に呟いた。

俺は少しそれが気になった。


「何が失敗だったんだ?」

「ん?ああ、あのアリスって魔術師。なかなか使えそうだったからさ。」

「あんな隠れてばっかりの魔術師どこが…」


使えるんだ。と言おうとした口が止まった。ニナの言おうとしていた事が分かったのだ。

それに気付いたニナは猫の手をピシッと俺に向ける。


「あ、気付いた?そう、あの娘。|僕たちの前を先行していたんだよ《・・・・・・・・・・・・・・・》?」

「…。」


俺たちは数えるのすら億劫なグールの群れを狩ってきた。その軽いとは思えない警備を物ともせず、または警備を相手に対して戦闘を行ったのだ。

…どちらにしても只者ではない。


「ま、どちらにしても留意しておかないとね。

…さて、そろそろ来る頃だ。」

「は?」


そうニナが酒場の時計を見ているといきなり俺たちのテーブルの椅子に座ってくる輩がいた。


「お呼びになったら直ぐに参上!情報屋でーす!」

「…なんの用だ。『鮮血』。」

「『鮮血』?なんのこと?私は超優秀な謎謎な情報屋さんですよ?」

「…。」


そこにいたのはランだった。ただし変装のつもりらしいのだがサングラスとパーカーのフードを被っていた。

こんなバカな身なりをしているがこの世界の自治機関の様な物である『ギルド』のリーダーだ。この辺境の街ラクーアも一応ギルドの管理下であったが突如として現れた『炎帝』のおかげでラクーア支部のギルドは混乱状態…。らしい。

それで急遽リーダーであるランが混乱を止めるためにやってきたみたいだった。


「昨日は助かった。

…一応感謝はしておく。」

「まー。いいよ!私としても『炎帝』を倒してくれると中々嬉しいからね!」


そうランはニコニコ笑顔で答えるとニナに向き直る。


「それでニナ君が頼んでほしい事を調べてきたよ。ラクーア支部のデータベースから色々ね。」


そう言ってランはテーブルの上に資料をばさっと置いた。

どうやら最近の炎帝による行方不明者のデータらしかった。そのデータを見て俺はボソッと。


「…やっぱり女が多いな。それも若い女ばかりだ。」


炎帝による行方不明者はほとんどが若い女性。男もちらほら書いてあるがどれもグール化した可能性が大というメモがほとんどだった。

…たった一人を除いて。


「…ゼツが行方不明なのか。」

「そうそうそれ気になるでしょ〜?

…あ!マスター!私はオレンジジュースちょうだい!」


そう言ってランは話を切ると酒場のマスターにオレンジジュースを頼む。マスターは嫌そうな顔をしたがボソッと「あるよ。」と呟いて、オレンジをどこからともなく取り出して絞り始めた。

そしてランは人差し指をビシッと立てて。


「ちょっと訳ありだと思わない?ぜっくんが居なくなってから急に『炎帝』の噂が出て来たんだよ?」

「…。」


『紅蓮の帝』ゼツ。

火属性の魔法を使うのなら最強の魔術師。さらに剣の腕前も抜群。昔、兵士が100人以上居ないと倒せないと言われていた『クリスタルドラゴン』を3日に及ぶ戦闘とはいえ1人で倒した伝説がある。

…知ってる。だってゼツは…。

するとランが珍しく真面目な顔をして。


「さらに。ここを見て。」

「……これは。」


そうやってランが指を指す場所。リストの古いところにある名前が書かれていた。

するとニナが驚いた。


「リナちゃんじゃん⁉︎なんでリナちゃんも…?」


そうそこに書かれていたのはリナ。ゼツの恋人の少女の名前だ。

これを見て何かが繋がってきた。


「…ひょっとしてさ。リナちゃんがさらわれたからそれを助けに行こうとしたゼツ君が…おそらく『炎帝』の『魅惑の魔眼』に操られたリナちゃんを助ける為に協力させられてるんじゃ…?」


ニナがそう言って3人は黙り込んだ。というかそうしか考えられない。

という事は今、『炎帝』と呼ばれているヴァンパイアと共に『紅蓮の帝』であるゼツとも戦わないと行けない事になる。

…かなりキツイな。そう考えていると不意にどんとランのオレンジジュースがテーブルに置かれた。

それを黙って飲むランと難しい顔で黙り込むニナを見て俺は立ち上がった。


「…誰であろうと関係ない。

目の前の敵は叩き潰す。それだけだ。」


そう言って俺は酒場からマスターに適当に金貨3枚を渡すと酒場を後に、酒場と隣接するとってある宿に歩みを進めた。

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