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漫才脚本シリーズ

漫才脚本「とんち話」

作者: 山田結貴

A……ボケ担当。B……ツッコミ担当。

コンビ名は考えていないので☓☓としました。

   A・B、ステージに上がる。


A「どうも~☓☓です!」


B「よろしくお願いしま~す!」


   A・B、観客に向かって軽く頭を下げる。


B「A君。僕にはね、尊敬してる人がいるんですよ」


A「(照れるように)え、何いきなり。そ、そんなに俺のことを」


B「誰がお前を尊敬するか。俺が尊敬してるのは、あの一休さんですよ」


A「はあ、なるほど。確かにあの、頭の形は比類がないほど美しい」


B「いや、そこじゃなくて。一休さんと言えば、鮮やかなとんち話でしょう」


A「ええっ。そうかな?」


B「そうでしょうよ。だって、あの機転の良さでいくつもの無理難題を論破してきた人ですよ? 尊敬に値するでしょうよ」


A「いやいやいや。俺だったら、もっとスマートに無理難題を論破できるね」


B「お前、すげえ喧嘩を売ってるな。よし。なら、俺が今から一休さんに出されたっていう問題をいくつか出すから、お前はそれを論破してみろ」


A「了解。ただし、俺が問題をスマートに論破できたら、今後B君は俺のことを尊敬するように」


B「わかったよ。ま、どうせ無理だと思うけどな」


A「よし! B君から尊敬されるぞ!」


   A、無駄に気合を入れる。


B「ではまず、第一問。一休さんは、和尚さんがなめている水飴が食べたくて仕方がありませんでしたが、和尚さんが『これは子供が食べると毒だから、決して食べてはいけないよ』と言いました。しかし、水飴を食べたくて仕方がなかった一休さんは、和尚さんが出かけているうちに水飴を全て食べてしまいました。このままでは、和尚さんに怒られてしまう。さあ、A君が一休さんならどう論破する?」


A「はっははは。そんなの、簡単じゃあないですか」


B「えらい自信だな」


A「本当に、水飴が原因で死ぬ」


B「死んだら駄目なんだよ! てか、どうやって水飴で死ぬっていうんだよ!」


A「えっと、鼻と口をこうベターッと塞いで固まるまで……」


B「えぐい! 案外具体的に考えていて、想像するとえぐい!」


A「一休さん、心からご冥福をお祈りします」


   A、目を閉じて合掌する。


B「いや、一休さんは死なずにきちんと論破してるからね? まあ一応、第二問行くぞ」


A「バッチコーイ!」


B「ある日、意地悪な富豪の家に招かれた一休さん。すると、目の前にたくさんのごちそうを並べられました。早速食べようとした一休さんですが、意地悪な富豪はこう言いました。『一休さん。そのおわんには、美味しいお汁が入っています。ですが、ふたを取らないで食べてみて下さい』さあ、A君だったらどうする?」


A「いやあ僕、血圧高めなんで汁物はちょっと」


B「おっさんか! 一休さんは、バリバリの子供ですよ? 血圧なんて気にしてないでしょうよ」


A「でも俺、この前医者から説教食らっちゃって」


B「お前のプライベートの事情なんて知るか。確かに、お前ならどうするって言ったけれども……じゃあ、第三問」


A「きれいに決めるぞーっ」


B「ある日、殿様から城に招かれた一休さん。殿様は、虎の絵が描かれた屏風を見ながら深刻そうに語ります。『そこの屏風に描かれている虎が、夜な夜な中から抜け出して暴れているので困っている。お前の力で、虎を縛り上げてはくれないか』さあ、A君ならどうする?」


A「はっははは。殿様、ぜひとも一度精神科の方に……」


B「首はねられるぞ! 相手を考えてものを言えよ」


A「だって、屏風から虎が出るとかありえないでしょ」


B「だから、そんな無理難題を振ってくる相手を論破しろって言ってるんだよ!」


A「うーん。だったら……」


   A、大げさに悩む素振りをする。


B「ふふふ。ようやく一休さんの偉大さがわかったか」


A「(キリッとした表情で)殿様。では、この私に縄をいただけますか?」


B「あれ? 何かちょっといい感じになってきたんじゃないんですか?」


   A、腕まくりをし、縄をかまえるポーズをする。


A「では、殿様。屏風から、虎を追い出して下さい!」


B「おおっ」


A「虎が飛び出し次第、軽くひっとらえてみせましょう」


B「とんちとしては正解。でも、これだと一休さんと同じ答えですよ?」


A「虎が飛び出すまで、私は城に留まりましょう。(含み笑いをしながら)その間のお世話は、もちろんお城の方で頼みますよ……?」


B「下衆っ! うっわ、下衆っ! ここまで腹黒な論破、聞いたことないですよ?」


A「どう、B君。俺の論破、すごかったでしょ?」


B「すごくねえよ。悪いけど、お前のことは尊敬できねえな」


A「いや、B君。君は僕を、尊敬しなければいけません」


B「何でだよ。だって、全然できてなかっただろ」


A「俺は、問題をスマートに論破できれば尊敬しろと言いました。誰も、一休さん以上にとは言ってないんですよ。はい、論破しました!」


B「スマートですらなかっただろうが! もういいよ」


A・B「どうも、ありがとうございました~!」

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