星、いずる。
随分長い間、水晶の前に居た。ここは、観光地でもあり秋になると紅葉を楽しむ人々が訪れる温泉街の一角。しえる→もとい、若草香欄は、サロンを経営しながら生まれながら授かった霊感をもとに、ちょっとした占星術で客を呼んでいた。
「今年ほど・・。」
ずっと、恋人のままの、萩尾 連に声をかけた。
「今年ほど、星の並びが過激な年は他にないわ」
何年かに1度と言われる皆既月食や日食、重なる新月。珍しい天体ショーが次から次へと、起こっている。
「きっとね。起きるのね」
何年か前には、大きな地震が起きている。
「あの時も・・。こんな嫌な感じだった」
香蘭は、街中から、この山奥に転居していた。
「ずっと、気になるの」
「気になるって、また、地震がおこるとか?」
連は、水出しのコーヒーを香蘭に手渡した。
「日本って、国がね」
「あぁ・・。そおいえば、君のお父上は有名な歴史家だったね」
連は、思いだし笑った。
「堅物で、困ったけど」
「まぁ・・ね。父の言う事も一理あるから、堅物では、通せないんんだけど。そろそろ動き出さないとなの」
「へぇ・・。それって、前から君が言っていた?」
「磁場が狂い始めているの。」
長い歴史の折々で、各所各所に伝わる伝説には、理由が必ずある。だが、今の時代、そのいわれを軽んじてしまい、様々な事故が起き始めている。あの地震でさえも、被害を抑える事が出来たかもしれない。
「それだけでも、ないんだ。」
香蘭は、遠い目をした。
「シップが、特定の場所に現れ始めている。暗示しているの」
香蘭の言うシップとは、未確認飛行物体。そうUFOの事である。
「私の力では、まだ、わからない・・。だけど、いかなきゃいけない所がある。」
香蘭とは、長い付き合いで、それなりに霊感があるのは、わかっている。磁場が崩れ始め、怪異現象が起き始め、人々の争いが増え始めていた。シップの人達も、いい人達だけでは、なく害をもたらす物もいる。香蘭が待っているのは、ある特定のシップだった。
「会いに行くって、どうやって?」
香蘭が突拍子もない事を言うのには馴れている。
「九嶋にある千賀森に行くわ」
「九嶋って?」
九嶋は、あの震災で、被害の多く出た街だ。そこにある千賀森は、昔から多くのUFOの話がある。
「まさか?一人で行くつもり?」
「まさか・・」
香蘭は、笑った。
「私だけでは無理よ。行く前に探してほしい人がいるの」
連に、ある男の本を取り出した。
「この人。」
名を、月崎と言った。自称、宇宙研究家。
「やだな・・。俺」
ずいぶんと、うさん臭い。
「だけど・・。探せって」
ホロスコープが示していた。
「時期が来たの。」
香蘭は、人目を避けるようにカーテンをひいて、ドアを閉めた。
「そろそろ始めましょう。」
連は、空を見上げた。
「光の柱を建てる時期か・・。」
時期は、紅葉の時期。燃える赤がまぶしい。