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夕月  作者: 白州藍樹
9/50

 考えながら、でも夢中に、久しぶりにピアノを弾いた。楽譜を見なくても指が覚えている曲がいくつかあって、楽しい。といっても随分前に習ったバッハのメヌエットや「エリーゼの為に」くらいだけれど。それから、なかなかできなくて何度も何度も練習をした教科書の曲も。鍵盤を端から端まで、一音も抜かさずに流れるように弾くの。高い方から低い方へ。低い方から高い方へ。掠れるような軽い高音と、階段を駆けるようにつながりあい隣あっている白と黒と、鈍く響いていく低音と。たった数十音が並んでいるだけなのに軽く押すだけで、きちんと音色になる。あたしは他の楽器はあまり触ったことが無いけれど、きっとピアノがいちばん好きだと思うの。昔から傍に居たからかなぁ。鍵盤を叩いているのはあたしなのに、裏側に違う世界が在るみたいなの。あたしの知らない、曲の、作曲家の世界。踏み込めない特別な空間。それが芸術というものなのかも、と、曖昧に思う。そして、あたしがそんなきらきらとした空間に触れられるのはこちらではこのピアノに向かっているときだけだったから、この椅子に座るのがすごく好きなの。

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