41/50
ⅩLⅠ
「月……夕月、大丈夫?」
いつの間にか泣いていた。この子と居ると、なんだか泣きたくなってしまう。泣きたくなる、というか、実際泣いてしまうのだ。仕方、ない。
「平気よ」
今度はちゃんと、自分のハンカチを取り出して拭った。嗚咽もなくて、ただ流れる涙が、たんたんとレースの端を濡らしていく。きっと心配そうな表情の彼女に、笑ってみせる。お互いに紅茶にはほとんど手を付けていなくて、気がつくとすっかり冷めきってしまって、湯気はたっていなかった。
「初めて、会ったとき……」
止まると泣き声が上がってしまいそうで、淀んだらもう涙に沈んでしまいそうで、すぐに話を戻す。落ち着いて、口を、開いて。
「ええ」
「月って呼んでって言ったでしょう」
頷く顔が見えた。やっぱり心配するようなそれで、だけどちゃんと、わたしと向き合うようにじっと見つめてくれていた。
「頑張り屋で、完璧を求めて、綺麗になるには、わたしはわたしじゃ居られなかった。苦しくて苦しくて、堪えられなかった。そうして生まれたのが月なの。もうひとりの、わたしなの」




