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夕月  作者: 白州藍樹
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ⅩLⅠ

「月……夕月、大丈夫?」

 いつの間にか泣いていた。この子と居ると、なんだか泣きたくなってしまう。泣きたくなる、というか、実際泣いてしまうのだ。仕方、ない。

「平気よ」

 今度はちゃんと、自分のハンカチを取り出して拭った。嗚咽もなくて、ただ流れる涙が、たんたんとレースの端を濡らしていく。きっと心配そうな表情の彼女に、笑ってみせる。お互いに紅茶にはほとんど手を付けていなくて、気がつくとすっかり冷めきってしまって、湯気はたっていなかった。

「初めて、会ったとき……」

 止まると泣き声が上がってしまいそうで、淀んだらもう涙に沈んでしまいそうで、すぐに話を戻す。落ち着いて、口を、開いて。

「ええ」

「月って呼んでって言ったでしょう」

 頷く顔が見えた。やっぱり心配するようなそれで、だけどちゃんと、わたしと向き合うようにじっと見つめてくれていた。

「頑張り屋で、完璧を求めて、綺麗になるには、わたしはわたしじゃ居られなかった。苦しくて苦しくて、堪えられなかった。そうして生まれたのが月なの。もうひとりの、わたしなの」

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