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ⅩⅩⅩⅨ
わたしはすごく、ママっ子だったの。家族でいちばん仲が良かった。大抵一緒に居たし、すごく優しかったから。
だけど、そんないつでも優しいママにあんな目を向けられるなんて思っていなくて。きっとただ、サボるのはだめよって諭しただけだったんだろうけれど。怖くて。あまりにも怖くて。
それまで絶対の自信のあった自分の気持ちが、ばらばらになる気がした。もうぜんぜん、自分の感情なんて信じられなかった。わたしの気持ちは正しくなかった。 あの人の感覚が絶対で、正しいんだと思った。
それじゃ、わたしの感じることの、一体どれが正しいんだろう。
もうなにも分からなくなって。
自分の好きなもので埋め尽くされていた世界が、春からいきなり冬が来たみたいに冷たくなった。
お人形も、空想も、本も、遠くなった。あの人の目ばかり追うようになった。どうしようもなくその視線が気になって、目が離せなかった。離したら、離されてしまう気がした。見放される気が。娘ではないお前なんて、いらない。そんなふうに簡単に捨てられてしまう気がした。




