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ⅩⅩⅩⅥ
完璧でなければ相手にしてもらえない。綺麗でなくてはならない。
淡いだけの感情では誰にも何も伝わらない。論理や、理由や、確たる何かが無いものは無駄なものなのだ。打ち壊されるものなのだ、と。あの人の目を見て、知って。
知りたくなかったのに。そんなこと、解りたくなんて無かったのに。
あの見下ろす目が、いつまでも瞼の裏に張り付いて、消えない。
ピアノと、棚と、大きな家具。
自分の背より少し高いそれらを見上げて、毎日過ごす。買いたての塾や習字やピアノのお稽古用のバッグが、それぞれ、壁のフックに掛けられたりソファに置き去りにされたり、椅子の肩に無造作にひっかけられていたりする。色とりどりなそれらが、大きな家具ばかり多い世界に子供の存在を示している。わたしの存在が、ある。だから、わたしはもうまるで自分が周りの大人と同じふうで、同じひとりなのだと思っている。
わたしは子供ではなくて、平等なひとりの、家族だって。




