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ⅩⅩⅩⅣ
また今日も、こんなふうに泣いて、過ごして。
この部屋には時間を示すものはないから、どのくらいそうしているのかもわからない。何もかも、止まったままで。遠ざけるだけ。逃げるだけ。暗い場所にいて隠れきれているふりをしてるの。あたしはあたしで、そこに居るのに。
そんなふうに縮こまっていて。なにも変わらないで。
コン、っと、突然音がした。灰色の壁の向こうから、もう一度。まるでどこかの扉をノックするみたいに。
驚いて身構えすると、聞き覚えのある声がした。あたしの名前を呼ぶ、いつもの声。
「……月ちゃん?」
あたしの声は小さくて、たぶん聞こえていなかった。この部屋の壁は厚くて、向こうの声は聞こえるのにあたしの声はきっと外へは届かない。少しして、何かを回すような軽い音がした。鍵をあけるような。でも、それも遠い音だった。どこか遠い、他人事みたいな音。
怖くはない。でも、何かを期待するような気持ちがした。不思議に思って寝台から這い出て、近づく。
きっとこの辺り。
なんの変哲もない、平らな壁だった。見つめてみて、そっと触れる。やっぱり何でもないのかな、と思い直した、その、とき。
「夕!」
大きな音がして、周りが崩れた。




