表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕月  作者: 白州藍樹
31/50

ⅩⅩⅩⅠ

「夕?」

 ノックの後、おそるおそる呼びかけてみる。返事はない。今までも何度か名前を呼んで、この扉にもたれ掛かって過ごしたことはあったけれど、そのときにも返事はなかった。聞こえていないのかもしれない。だけど、今はこの部屋の鍵が。きっと合うはずの、鍵が、私の手にある。どうしよう、と少し考えて、怒られてもいい、会いたい、という気持ちが確かにあることを自覚して、決める。ノートのやりとりも、慮って気遣うのも、嫌ではないけれど。あなたは、今のままがいちばんいいと思っているかもしれないけれど。翳と光のように代わるのでなくて、私はちゃんと、あなたと出逢いたいの。

 指を開いて、そっと鍵を握り直す。鍵穴へ向けてまっすぐに差し込む。鍵はすっと通って、先がぶつかった。くるり、と拍子抜けするほど軽く回ると、錠が外れる音がする。

 あのね、夕。

 やっぱり今日のことはあちらのノートには上手く書けなかったから、きちんと会って、話したいの。向き合いたいの。向き合って、聞いて欲しい。話して欲しい。奈緒が私に言ってくれたみたいに、私も、あなたと。

 ドアノブに手をかけ、金具の冷たさを感じながら、意を決して勢いよく扉を引いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ