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ⅩⅩⅦ
気持ちが伝わったように、奈緒は微笑んで、わかった、と言ってくれた。こういうところが好きだった。話せるまで、待っていてあげる。そんなふうに言ってもらえた気がして。
この子は信じていいんだわ。きっと。
強く確信して、思う。
だから、安心して出てきていいのよ。夕。
薄々気がついていたことだけれど、夕は冷たいこちらが嫌で、きっとあの部屋に逃げ込んでいるのだった。奈緒と出会う前に見た、唯物的でさみしい世界。私は嗜好というものがあまりなくて、こちらを良いとも悪いとも感じてはいなかったけれど、ノートと好みに見知った夕は繊細そうで、この場所で友達とも出逢わずたったひとりで居るのはどれ程苦しかったかしら、と考えた。
「月?」
呼ばれて顔を上げる。他の誰かに呼ばれるよりもずっと、自分の名前に、存在に、意味があるようにふと、感じて。
あなたはここに居ていいの、と許されたようで。
頬を何かあたたかいものが伝った感覚がした。




