表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕月  作者: 白州藍樹
16/50

ⅩⅥ

 こちらにはこんなに夕のものがあるのに、夕はめったに名前を呼ばれることがなかった。まるで私が夕の代わりに、こちらに据えられているかのようだった。もしかしたら私に聞こえないだけで、本当は呼ばれているのかもしれないけれど、それに反応して現れる様子もなかった。夕はやっぱりいつも部屋に籠って、何か大事なものを失くしたように泣いていた。

 あの子を知っているのは私だけ。あの子が居ることに気がついているのは、私だけ。

 こちらでも過ごすうちにそんな気が強くなって、上手く立ち回らなければならない、と余計に思った。「こちら」は適当に周りに合わせて話していればいいのだし、夕とはあのノートの中で、色々と伝え合うことはできる。顔を合わせることはできないけれど。それでも一瞬でも泣き止んでほしくて、ノートには良いことを幾つも並べて書いた。あの子が隠れている理由を考えて、いちばん良い言葉を、本も映画も、見えるものすべての中から探して綴った。読んだ貴方が、少しでも励まされてくれるようにと思って。

 だって私は、やっぱりその為にここに居るのだったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ