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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十二章 ようやく三学期
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小話(夏休み前の話)

まだ夏休み前、未来と竜神が友人だった頃の話となります。二人が同居もしておらず、未来が築40年の家に住んでた頃です。

『新鮮、斬新、新感覚のお菓子、新発売!』


 派手な効果音と演出のCMを身を乗り出してガン見する。

 ちゃぶ台の横に座ってたはずなのに無意識のうちにテレビの前まで移動して。


「食べたい……」


 食べたい、食べたい、絶対食べたい!


 衝動を抑えられなくて、サイフと携帯片手に家を飛び出してしまった。

 時間は午後9時。当然あたりは真っ暗だ。

 早苗ちゃんの体で出るのはちょっと不安だけど、徒歩五分のコンビニまでなんだから平気だよな。


「いらっしゃいませー」

 あ、あったー!

 目当ての品はなんとレジの上に置かれていた!

 早速10個も購入して、ほくほくした気持ちで涼しい店内から出た。


「未来! 夜中に出歩いてるんじゃねーよ!」

 途端に、聞き慣れた声に呼び止められてビクっとしてしまった。


 竜神だ!


 竜神は見覚えのあるかっこいいバイクに跨っていた。竜神の後ろには小柄な女の子の姿が――――。


「あああああ――――ッ! お、お前、なんで花ちゃんを後ろに乗せてんだよ!」

「何でって?」


「どんだけ頼んでも俺は乗せてくれなかったくせに、花ちゃんは乗せるってお前シスコンだったんだな!」

「すっげー心外なこと言われた」

「花ちゃん乗せるなら俺も乗せてくれよ! 俺のほうが身長高いし年上だし、花ちゃん乗せるよりずっと危なくないだろ!」

「握力30以上になったら乗せてやるって言ったろ」

「わかってるよ! ボールころころして地味に筋トレ頑張ってんだよ。でも、花ちゃんどう見ても握力30もないだろ!」


「未来さん、未来さんー、手、繋ぎましょ」


 花ちゃんが両手を顔の横まであげて、ぐー、ぱー、と開いて見せた。

 首を傾げてにっこり笑う顔が可愛い。

 肩に掛かる程度の長さの髪がふわりと流れる。


「手?」


 言われるがまま、上げられた手に掌を重ねる。う、花ちゃんのほうが手が大きい……!?


 恋人つなぎするみたいに手を握られて――――。


 ぎりぎりと握り締められた。


「ぎゃー! いたいいたいいい!」

 握り潰されそうな握力に、その場で足踏みして暴れてしまう。

「ふはははは私の握力は42あるのだよ」

「まじで!!?」


 なめてもらっちゃ困る、と、花ちゃんが笑う。腰に手をやって胸を逸らして自身満々なのがむかつく……!


「むかつくむかつく! 花ちゃんなんか俺よりチビのくせに……!」

「いっちゃならないことを言いましたね未来さん……えい!」


 花ちゃんが俺に飛びついてお腹に腕を回し、ぎりぎりと締め上げてくる。

「ぎゃーぎゃー!」

 本気で痛い! 


「やめろ花。お前が本気出したら未来を殺しちまうだろ」

「花ちゃんこんなちっちゃいのに強いなんて反則だ……!」

「花が強いっていうより、お前が弱すぎ、いや、華奢だからだろ」


 ぎいいいいい。


「あ、そだ、お前達にも分けてやるよ。これ、新発売でさ、どうしても食いたくて買いに来たんだ」


 CMで見て、どうしてもどうしても食べたかったお菓子を、竜神のでかい手と、花ちゃんの可愛い手の上に乗せてやった。

 小さなパッケージにうどんの絵が描かれた、


『チコルチョコ うどん味 関東風味』


「いらない」

「いらねえ」


 竜神兄妹に同時につき返されてしまう。


「なんで!? 今食べとかないと食べたいって思った時には無くなっちゃってるかもしれないぞ!?」

「食べたいって思う時なんか一生こないと思うもん」

「間違いなくこねーよ」


 そっかな? 俺超後悔しちゃうけどな。


「未来を家まで送ってくるからコンビニで待ってろ」

「了解。いってらっしゃいお兄ちゃん。未来さんも気を付けてください!」


 花ちゃんがお巡りさんの敬礼ポーズする。


 お、送ってくれるの!?


 俺は思わずバイクの横に立ってキラキラしてしまうんだけど。


「行くぞ」


 思いっきり竜神に腕を引かれて歩かされてしまった……。

 バイクに乗せてくれるかと思ったのにがっかりだ……。

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