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未来の誕生日(二人の誕生日会②)【挿絵有り】

漫画を呉作様よりいただきました!いつもありがとうございます!


 綺麗に盛り付けられた前菜が四品、色々な種類のサンドイッチにライ麦サンド、メインディッシュはローストビーフと魚介の串焼き!



「け、ケーキ、まである……! ~~~~~!! ~~~~~!」



 ケーキをそっとテーブルに置いてから、テーブルの前に立つ竜神のでかい体にしがみついて、じたばた暴れる。

 やばい、嬉しすぎて涙出てきた。


「すっげー嬉しい! ありがとうな竜神! ケーキまで用意してくれてたなんて」

 竜神が、ぎょっと体を引いた。

「な、なんで泣いてんだよ!」

「嬉しいからに決まってんだろー!」

「嬉しいなら泣くなって。お前が泣いてるのほんと駄目なんだからさ」


 嬉し泣きは涙に入らないんだぞ。涙腺弱くて感極まるとすぐ出て来るんだもん。

 竜神が自分の袖で俺の顔を拭う。ちょ、腕がでかくて顔が全部埋まってしまう。


「ホールケーキなんて久しぶり! 五年ぶり! 母ちゃんも兄ちゃんも結構テキトーだったから、誕生日会なんて全然だったし!!」


「そうなのか?」

「うん! ウチの家族ってイベントに無頓着だったんだもん。誕生日プレゼントも五年ぐらい貰って無いんだ」


「意外だな……。オバサン、イベント好きそうだったのに」


「外のイベントは好きだったんだよ。町内会とか、自治会とか、会社のイベントとか。でも家のイベントは全然だったんだー。実はちょっと寂しかったから、家でパーティーできるの嬉しい!」


 けど……。


「こんな豪華なご飯、良かったのか? 高かっただろ? ゴメンな……」


「オレが祝いたかっただけだからゴメンなんて言うなよ。お前が喜んでくれなかったら何の意味も無くなるだろ」

「う……」


 それもそうだよな。

 せっかくだから美味しくいただこう。こいつの誕生日に倍返しできるようがんばろう。





 ご飯はめちゃくちゃ美味しかった!



 特に、アボカドと海老のサンドイッチが絶品だった。


「――――! 竜神、これ、超美味いぞ」

「へー?」


 一口食べて余りの美味しさにびっくりした。

 竜神にも食べて貰いたかったのに同じサンドイッチが無い。


 しょうがなく残ったサンドイッチを二つに切って、口をつけてない方を竜神に差し出した。


 !!!


 手渡しするつもりだったのに、竜神は俺の腕を掴んで上げさせて、直接指から食べた。……いいけど。ちょっとびくっとするから止めて欲しい。

 どきっじゃなくて、びくっだからな。



 ご飯だけでもおなか一杯になってしまった。だが、これからが本番だ。



 誕生日ケーキ……!



 当然ケーキは別腹である。

 テーブルの真ん中に置いて、そっと箱を持ち上げる。

 中から出てきたのは俺の一番大好きな生クリームの苺デコレーションケーキ!

 真ん中には、誕生日おめでとう、未来ちゃんのプレートが!


「うわーうわー! すげー、ちゃんとしたケーキだー! 美味しそうー! キレー! これ、二人で食べるの勿体無いな、花ちゃんも呼ぼうよ!」


「え!?」


 竜神が物凄くびっくりした顔をした。そんな驚くことか?


 俺は知ってるんだぞ。花ちゃんが意外とお前に懐いているのを。

 人前では(俺の前でも)お前のこと、ヤクザとか言って跳び蹴りしてるのに、家の中では結構甘えてるんだよな。

 花ちゃんがこの家に遊びに来たとき、こっそり見ちゃったんだ。

 そんな花ちゃんからお兄ちゃん取っちゃったお詫びに、こんな日ぐらい招待したい!


 竜神の答えを聞かないまま、花ちゃんに電話を掛けて呼び出した。


 花ちゃんは十分もかからず、可愛い服を着て家に来てくれた。

 誕生日プレゼントだって、手作りの焼き菓子を持って。


「わ、あ、ありがとう……、気を使わせてごめん……」

「気なんか使ってないです。これ、明日渡すつもりだったもん。……ところでお兄ちゃん。どういうこと? せっかくの誕生日に妹を呼ぶなんて」

「…………」

「後で、説明してもらうからね」


「わかったよ……」


 ん?


「説明って?」

 俺が聞くと、花ちゃんは呆れたみたいに俯いて言った。


「……二人きりでお祝いしてると思ってたから、電話貰ってびっくりしちゃっただけです。その、私、お邪魔じゃないかなー?って」


 ? どういう意味だろう。花ちゃんが邪魔なわけないのに。


 花ちゃんは顔をすぐに上げて、テーブルにつき、俺の隣の椅子を引きながら小首を傾げて笑った。


「ネックレス可愛いですね! すごく似合ってます」

「可愛いよな、これ。誕生日プレゼントに浅見から貰ったんだ」


 一番お気に入りのこの服は、結構首が開いてて鎖骨が見える。

 浅見がくれたネックレスが丁度いいアクセントになってくれてるんだろうな。


 そしてまた、花ちゃんが凍りついた。


「…………あ、浅見さんって……あのかっこいい人……だよね?」

「うん」


 花ちゃんは椅子に座り、座った足の間に手を付いて、視線を床に落として、足をゆらゆら振り回した。


「お、お兄ちゃんのプレゼントは、何だったのかなー……なんて……」


「こいつ、金券だったんだよ。びっくりしすぎて倒れそうになっちゃったよ」


「き」


 椅子からミシリと軋んだ音が上がった。

 何だ?

 花ちゃんの掌の下から音がしたような。

 なワケないか。

 この椅子、頑丈だから女の子の力で軋むはずないもん。


「お兄ちゃん、やっぱり、後でお話が。結構長めの。ひょっとしたら、お母さんからも話があるかも」


 花ちゃんが満面の笑顔で竜神を向いた。


「おう……」


 答える竜神は何やら元気が無い。

 なんだかわからないけど、兄妹で通じるものがあるんだろうな。口出しするのはやめておこう。


 ケーキにろうそくを立てて、電気を消して吹き消して、竜神兄妹に誕生日の歌を歌ってもらって、嬉しすぎて無駄に走り回りたくなった。

 こんなちゃんとした誕生日始めてかも! 嬉しくて恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。


「あ、プレートは俺が食べるからな。割っちゃ駄目だぞ。ひとりじめするんだから」

「わかったよ」


 ケーキを切ってくれた竜神を止めて、俺の名前の書かれたプレートを皿に取る。


 ケーキをそれぞれの皿に取り分け、ふわふわのスポンジにフォークを刺して、口に運ぶ。


「ん……! このケーキ、凄く美味しい。お兄ちゃん、これは褒めてあげる!」

 花ちゃんが肩を竦めて声を上げた。


「あぁ。良かったよ」

「ほんっと、美味しいな……! どこのお店で買ったんだ? 今度一緒に買いに行きたい」

「遠いぞ。隣の県の店だから」

「そ、そうなの? ひょっとして、わざわざ調べてくれたの? その、ありがとう……」


 嬉しすぎてフォークを置いてしまった。


 俺なんかの誕生日の為に、隣の県のケーキ屋さんまで探してくれたんだ。


 俺の誕生日なんて、母ちゃんも兄ちゃんも祝ってくれなかった。10年も親友だった良太だっていい加減なプレゼントだけだった。


 そんなどうでもいい日を祝うために美味しいケーキ屋さんまで探してくれたなんて。


 なんか、ものすごく、大事にされてるみたいで、嬉しくて、たまらなかった。



 恥ずかしさが頂点になって顔を両手で隠すと、デカイ掌が頭を撫でてきた。ぐりぐり撫でまわしてから、今度は、ちっちゃな掌が乗ってくる。

 花ちゃんにまで撫でられた……! くそ……!


 花ちゃんはケーキを食べ、百合がくれた紅茶を淹れてくれて、一段落付くとすぐに「今日は呼んでくれてありがとう! 未来さん」と椅子から立ち上がった。


「もう帰っちゃうの? ゲームしてかない?」


「今日は遠慮します。話したいことがあるからお兄ちゃん借りていくね」


 え!? 話って今日のことだったのか……。竜神が居なくなるんだ……。


 ついつい、嫌だって表情をしてしまったのに、なぜだか花ちゃんは安心したみたいな満面の笑顔になった。


「――私、用事あったんだった。やっぱり明日でいいや。それじゃ、お休みなさい未来さん、お兄ちゃん」

「あ、お、おやすみ……。竜神、花ちゃん送っていかなくていいのか?」


「いいよ。すぐそこだし」

 確かにすぐそこだけど、俺は昼でも朝でも送り迎えしてたくせに妹はほったらかしなのか。もう九時過ぎてるのに。竜神の基準が判らないなぁ。


 でも、竜神を花ちゃんに連れて行かれなくてよかった。今日は一緒に居たいからな。年に一回の誕生日なんだから。


 ぼす、と竜神の体にくっついていく。


 そして、下から顔を覗きこむ。


「なぁ、竜神ってどんな色仕掛けされたら嬉しい?」

「なんもすんな! またアホな事考えてるだろやめてくれよ!」


「こんだけ美味しいご飯を用意してくれたんだから美味しいエロハプニングをプレゼントしてやろうって思ったのに」

「いらねえ。目に浮かぶんだよ。オレが我慢の限界超えて襲い掛かった途端、号泣して怖がるお前の姿が」


 あぁ……。なきにしもあらず……(絶対に無いとは言いきれません。ちょっとはありえます)


「前もいったけど、そんなことになったら立ち直れねえからな」

「お前……気の毒な性格してるな。顔に似合わないよ。ほんとに」

「うるせえ。顔と性格は関係ねーだろ……添い寝もやめろよ。絶対入ってくるなよ」


「うっ」


 く、釘刺された……!


「入ってくるつもりだったのか……。わかった、服貸すから、それでいいだろ」

「え、いいの!?」


 竜神が部屋に入って行ったかと思うと、パーカーを持って出てきた。早速服の上から羽織る。


「……洗剤の匂いしかしない……」

「……洗ってあるからな」

「…………意味無くないですか」

「物は試しだろ」


 うーん……。


 しかしでっけーな。

 裾が膝までくるぞ。袖も振り回せるぐらいに長い。


 パーカーを被ると、目元どころか鼻までかかる。


 どこでこんなデカイの売ってんだろ。


「♪」


 楽しくなって、ふわふわ袖と裾を振り回しながら部屋を歩き回る。



「……上着が歩いてるみたいだな」


「俺は上着のお化けかよ!? 怖いからやめて!」


挿絵(By みてみん)



竜神の体がでかいのが羨ましくてイラっとしているんですね!容赦なく煽る竜神…!

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