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玄関に網戸。廊下でごろごろ(外から丸見え)。【挿絵有り】

三人称視点です。イラストを呉作様よりいただきました!いつもありがとうございます!

「あついよー あついー」


 この日向宅では、一番涼しい場所といえば玄関入ってすぐの廊下だった。

 玄関の網戸を引いて、蚊取り線香をたいて、扇風機を回して、ジャンプ片手に廊下でごろごろするのが日向未来の夏の定番だ。


 シャツの腹をたくし上げてぱたぱたと仰ぎ、扇風機の風を通す。


「何してんだ!」


「うわ、びっくりした! どうしたんだよ竜神」

「お前、外から丸見えになってんぞ、なんで廊下に寝てんだよ」

「ここが一番涼しいんだよー。外から見えるって、どうせご近所さんは全員この家の中まで知ってんだから、今更見られても恥ずかしいことなんてないって」


「バカかそういう問題じゃねえ! お前の部屋クーラーあるじゃねえか、それ使えよ!」


 未来はシャツ一枚に短パンしか身に付けていなかった。

 それだけでもしどけない格好だというのに、玄関に頭を向けているので、たわわな胸の膨らみやら谷間やらが外から無防備に見れてしまうのだ。

 玄関は鍵さえ掛からない網戸一枚で、ここが日本じゃなければ、暴行されても被害者の警戒心の無さが責められるレベルである。


 ぶっちゃけ何人もの男が老若関わらずこの家を覗いていて、竜神は驚いて階段を駆け上がってきたぐらいだ。


 この近所の連中に、竜神は未来の彼氏と認識されている。(未来の母が言いふらしている)

 竜神の姿を見た途端気まずげな顔をして散ったり、顔見知りの年寄りからは「いやーいいもん見せてもらったよ。でも注意しといたほうがいいぞー」なんて言われた。

 あまりの事態に竜神は、「次見てたら爺さん達でも許しませんよ。他の連中にも釘を刺しておいてください」とかなり本気で睨みをきかせてきたのだ。

 この近所に住む年寄り連中はみんな一癖も二癖もある老獪な連中ばかりで、たかだか16の小僧が睨みを利かせた程度で尻込みはしないだろうが、言っておくに越したことは無い。


「珍しくテンションたけーなー。暑いもんなー。よし、お前も来たし、クーラー使うか。うち、貧乏だからさ、一人でクーラー使うってちょっと抵抗あるんだよな」


挿絵(By みてみん)


 クーラーを使う言い訳ができたからか、未来が嬉しそうに立ち上がる。胸がたゆ、と重たく揺れた。明らかにノーブラだ。

 竜神は目元に右手を当てて、深く深くうな垂れた。


「竜神? ほら、早くこいよー。お前も汗かいてるじゃねーか、冷たいジュース出してやっからさ」


「待て、先に下着付けろ」

「な、ど、どこ見てんだよ!」

「胸」

「しれっと答えんな! 変態! 痴漢!」

「うっせえ、無駄に揺れるから目に付くんだよ。だから下着付けろって言ってんだろうが」


「むー。わかったよー」と未来は唇を尖らせて二階に上っていく。

 ばたばた登って、ばたばた降りて、「ジュース、キッチンのテーブルに置いとくから飲めよー」といってまたばたばた足音をさせつつ走って行く。

 水音がする。シャワーを浴びていた。

 なぜ、男が来ているのにシャワーを浴びる。しかも二回目だ。

 そしてなぜ風呂に続くキッチンに呼び込もうとする。


 日向宅は築四十年だけあって、間取りが古い。なにせ、脱衣所がないのだ。キッチンに入ると、風呂を使っている人影が見えてしまう。

 人影、というか、擦りガラスなので、肌色で。


 百歩譲っても(譲りたくないが)自分相手ならまだいい。だけど、他の男を呼んだときにも同じ真似をしているんじゃないかと不安になる。


「竜神? 早くジュース取りに来ないと、氷、解けて薄くなっちゃうよ?」


 キッチンから人影が見えるということは、当然ながら風呂からもキッチンが見えると言うことだ。

 入ってこない竜神を未来が促してくる。


 擦りガラス越しに見えるんだよ! 

 無防備な未来にはそれぐらい言ってやるべきだと判ってはいるのだけど、先ほど痴漢だの変態だの言われたばかりだ。

 また同じような注意をしてしまっては、完全に変態のレッテルが張られそうで躊躇ってしまう。


 竜神は十数人の男に囲まれて喧嘩を売られようと受けて立てるし、十数人の女に囲まれて罵詈雑言を吐かれようとぼーっと聞き流して忘れられる強靭なメンタルの持ち主ではあった。が、未来にだけは軽蔑されたくはなかった。


(小学生のガキじゃねーんだから自衛ぐらいしろ!)

 でも、未来は女になってからまだ二ヶ月やそこらだ。小学生どころか幼稚園児程度の危機感しかないのも仕方ないのだろうか。


 ぐるぐる考えているとスマホがメールの着信に鳴った。

 百合からのメールだった。

 本文に書かれていたのは、


『腹が減った。素麺茹でに来い』


「なんでオレが」

 画面に向かって素で突っ込んでしまう。


 ひょっとして女運が悪いんじゃないかと、竜神はそろそろ真剣に考え込んでしまう。


 妹はわがままだし(これは甘やかしすぎた自覚があるが)百合は面倒臭いし、未来はこの有様だ。保育園実習で会った二十代の女性保育士からも自宅へ招こうとするメールがあって、どう断ろうかと頭を悩ませていた。未来の写真が保育園の案内に使われたせいで、学校まで押しかけてくる連中までいて、今後使わないよう、保育園に連絡を入れただけなのにおかしな方向にこじれている。美穂子だけが唯一の癒しか。


「ほら! お前、世話やけるなー。ジュースぐらい自分で取りにこいよー」

 ずい、と未来にコップを突き出される。

 大人しく受け取った。水滴が流れる冷たいコップが指先に気持ちいい。


「クーラー付けたから、そろそろ涼しくなってきただろうし二階に行こ。さっき、二階の室温三十六度だったんだぞ! びっくりだよなー。外の気温三十度しかないのに、なんで二階ってクソ暑くなるんだろ。窓開けてるのにさ――って、どうしたんだ? なんか固まってねー?」

「…………百合からメールが来たんだよ」


「百合から? 何て?」

「腹減ったから素麺茹でに来いって」

「え!」

 未来が自分の携帯を開いて、ボタンを押して耳に当てた。

 しばし間があって――――。


「あ、百合? 未来だけど! お前素麺ばっか食ってんじゃねーだろうな! ちゃんとご飯食べないと夏ばてしちゃうぞ! ――――うん、竜神、今俺の家にきてんの。宿題しよって前から話してて――――え!? ほんと!? いいの!? うん! 聞いてみる!」


「素麺流し行こうって! 美穂子達も誘って! 百合が車出してくれるってさ! 行くよな!?」

 宿題はどうした。聞きたくなったけど置いておく。


 丁度バイトが終わったところだった美穂子。

 繁華街をぶらついてた達樹。

 家で一人勉強していた浅見を拾って、素麺流しで有名な店へと皆で向かったのだった。宿題は、当然、進まなかった。

ひょっとして、三人称視点と一人称視点が交じってて分かりにくい文体なんじゃ!?今始めて気がつきました!気になった部分があったら赤ペンしてください!

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