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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
五章 夏休みが始まりました
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海水浴編(水着選び)

 7月24日。今日の俺は暇じゃないぞ!

 なんたって、美穂子と百合と一緒に水着を買いに行く事になったんだからな。


 ウチ、水泳の授業ないから、女物の水着を買ってなかったんだよなあ。

 いつものように、竜神が付いてきてくれることになって、達樹が「絶対行きます!」と手を上げて、浅見も水着を新調しないといけないらしく付いて来た。

「またまたー。先輩達の水着選ぶのに参加したかっただけのくせに! 浅見さんってまじエロ魔神すねー!」

「前にも言ったけど、君と一緒にしないでほしいんだけど! 全然ちがうよ!」

「迷惑になるから声抑えろ」

 売り場でぎゃーぎゃー言い合う達樹と浅見を竜神に任せ、俺達は女性用水着売り場へ進んだ。

 短パンだけの質素な売り場と違って、女性用水着売り場はキラキラと華やかだ。


 ううう、未知の空間だなぁ。足を踏み入れるのに抵抗ある。

 いや、すぐ隣が男性物の水着売り場なんだけどさ。女性服売り場ってなんか結界みたいなのあるんだよな。

 自分が必要ないから行かないってだけじゃなくて、足を踏み入れたら結界に引っかかって女から白い目で見られそうな、変な空気が流れてるんだよ。


「どれにする? 未来」

 尻込みしてしまった俺を美穂子が引っ張って、いともたやすく女性用水着売り場と言う聖域に踏み込んでしまう。

「い、いろいろあるんだな……」

 女の人の水着っていったら、ワンピースとビキニしか知らなかったんだけど、色んな種類の水着がラックごとに掛けられていた。

 Aライン、タンキニ、ビキニ、ワンピース、パレオ、セパレーツ。

 ど、どうしよう。どれを見ればいいのかな。

 とりあえず腕を引かれるまま付いていく。美穂子が向かった先は洋服みたいな水着のラックだった。


「私はこれにするかな」


 隣のラックから百合が取ったのは、えっぐい水着だった。

 なんつーか紐! 完全に紐!! こんな水着、実在したんだ!

 すげーな百合。そんなん買っちゃうのか。いくら海といっても通報されそうなんだけど大丈夫なのかな。

「竜神。私に似合うと思うか?」

 達樹と浅見を止めてる竜神に、百合が水着を高く掲げて見せた。

「あぁ、いいんじゃねーの」

 え! いいのか!? やっぱ竜神もこんな水着が好きなんだなー。

「お前もスキモノだな。私にこんなはしたない水着を着せようだなんて」

「いや、お前が素っ裸で歩いてようと全く興味ねーってだけだ」

「それもそうか。私も、お前がいまここで全裸になろうと、何も思うことはないしな」

 達樹! 達樹! 浅見とやりあってないでこっち止めてくれ! 俺じゃ太刀打ちできねーぞこの二人の戦い!


「私はどれにしようかなー。あ、これ、可愛い!」

 美穂子が取り上げたのは、柔らかい黄色で花が描かれた水着だ。

 うん、確かに可愛い。美穂子は髪の色が明るいから、黄色の水着が良く映えそうだ。

 俺はどうしようかなー。あ! いいなこれ、普通に洋服みたいだ。これにしようかな。

 タンキニって表記されてる場所にあるのが、体のラインを隠すワンピースのような上着と短パンみたいな水着だった。

 サイズ合うのあるかなー。

 お、あったあった。これなら丁度いいぞ。

 デザインは特に考えず、一つだけあったサイズの合うのを手に取る。

 上は茶色で、下は黒。普通に無難だ。

 これに決定っと。丁度その時男チームが合流してきた。どうやら、浅見の水着が決まったようだ。達樹も水着を手にしていた。こいつも水着を新調したかったんだな。


「なんで先輩達こんなとこにいるんですか? ビキニ売り場、あっちっスよ」

 達樹が心の底から不思議そうに首を傾げる。

「ビキニよりこっちのほうが可愛いからな」

 百合が答えると、達樹は真剣な顔で言い放った。


「え、ビキニ着ないなら、あんたら、なんの為に海に行くんスか?」


「お前……そんな真顔で何を言ってんだ……」

「……普通に泳ぎに行くぞ」

「達樹君の中で海はどんなことになってるの?」


 上から俺、百合、美穂子が馬鹿な達樹に突っ込む。


「ダメッス、いやっス! ビキニしかゆるせねーっスよおれ! ほら、先輩、あっち行きましょ!」

 俺や美穂子どころか、百合まで達樹に引っ張られて、ビキニの前に立たされてしまう。

 すげーな中学生の煩悩パワーって。


「ビキニなんて着たことないから恥ずかしいなあ……」

 美穂子がためらいつつ物色している。

「お前の趣味に付き合ってやるんだから、金は払えよ」

 百合が達樹に言い放つ。達樹は元気一杯に、

「じゃあ、俺が百合先輩の水着選んでもいっすか!? おれ、おごりますんで、美穂子ちゃんのも未来先輩のも選ばせてください!」

 と乗り出してきた。

 百合は珍しく嫌そうな顔をして、達樹を押し返した。

「もういい。うるさいから下がってろ」

 達樹はえーえー、選ばせてほしいっすよー、男のロマンッスよーなんてブーブー言ってる。

 男のロマンかぁ……? 俺は好きな女の子にはもっと露出控えめな格好してほしいなあ。

「なぁ、お前はどんなのがいい?」

 黙っていた竜神に促してみる。

 竜神は、迷いもせずに、「これ」と高めの棚に展示されていた水着を指差した。

 お年寄り向けの、足はハーフパンツ、腕は二の腕まである水着だった。


「先輩……何を基準に選んだんスか?」

 達樹が竜神に言う。

「布面積」

 竜神はきっぱりと簡潔に答えた。


「それにしよっかなあ」

 あまり露出したくなかったし、これなら丁度いいな。

 水着を手に取ろうとする俺を思いも寄らぬ人が止めた。美穂子だった。


「竜神君、未来、そんなの駄目だよ」

「だけど」

 楽そうだし。美穂子に答えようとしたんだけど、


「駄目だよ?」

 美穂子の笑顔に固まった。


「わ、わりい」


 俺と竜神は同時に謝ってしまう。

 げに恐ろしきは可愛い子の笑顔の脅迫。俺と竜神は同時に悟ったのだった。


 結局俺は実に可愛らしいふりっふりのビキニを購入して、海水浴に望んだ。



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― 新着の感想 ―
達樹にとって、女性が水着を着るのは、泳ぐためではなく、「自分を、男性に対して魅力的に見せるため」。 そうなんでしょうね。 だから、彼の頭の中では、「ビキニとハイレグ以外は、女性用水着ではない」のでしょ…
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