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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
第十八章 やっと夏休み!
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皆でプールに行こう! 水着のサイズ確認は必要です

「あづいー」

 お盆がすぎたはずなのに太陽はギラギラと輝き、裏の公園の大量のセミの声が大音量で響いてくる。


 この家は、ガス、水道光熱費も兄ちゃんに頼っていた。

 俺の兄ちゃん、お金に執着がないんだけど、無駄遣いはしたくない。

 今日も扇風機で我慢していたのだが、そろそろ限界だ。エアコン付けようと決心したその時。

「確かに暑すぎるな……。プールにでも行くか?」

「え、いいの!? 行きたい行きたい! 百合たちも誘ってみるな!」

「…………」


 早速電話をかける。まずは百合から。

『今日暑すぎるからみんなでプール行こうよ!』

『プールか……まぁいい、行こうか』

 続いて美穂子。

『いいね! 私も部屋でとけそうだったから絶対行きたい』

と、楽しそうに返事をくれる。

 残りは達樹と虎太郎だ。

「今日暑すぎるからプールにいかね?」

『川口プールっすか!?』

「うん。そこが一番近いし、いろんな設備もあるし! 虎太郎も来れそう?」

『もちろん行くよ! 楽しみだよ!』

「よかったー」

 電話が途中で虎太郎に代わった。スピーカーモードで話していたようだ。


 今日は百合の豪華な車ではなく、強志がもらった新品の車で移動する。

 百合の家からすると、色々と遠回りになっちゃうんだよな。でっかいリムジンだし。

 でもうちから出ればスムーズに全員を乗せていける。


 水着とタオルとスマホをぱぱっと準備を済ませて車の助手席に乗る。

「達樹に通話を繋いでくれ」

「うん、いいよ?」


 スマホを取り出して、車のケースに立てる。

 スピーカーモードで強志が言った。

「お前、バイクでこれるか?」

 そっか、この車五人乗りだ!


『ばっちり受かったから大丈夫っすよ! じゃあおれ、一足先にいってまーす』

 ちょっと前までは強志のバイクだったのに、達樹に取られたみたいでちょっと悔しい。バイクおろしてやるっていったのは持ち主の強志だから文句なんて言えないけど。


 タワーマンションの入り口で虎太郎が待っていた。


「ごめん、遅くなった?」助手席側から聞く。

「そんなことないよ。セミが久しぶりに鳴いてるから聞いてたし」

 車の大きさに「凄い立派な車だね」と感心しつつ、次に向かうのはお花畑がある美穂子の家。


 最後に回ったのは百合の家だ。

 返事をくれたのは冬月さん。


 モニターがついているようで、チャイムを鳴らしただけで『未来様です』と言われてしまった。

『中々早かったな』

 冬子さんと百合が入れ替わる。


「大丈夫? 準備できてる?」


『あぁ、冬子にまとめさせてるところだ』


 百合はキャリーケースをころころと持ってきてきた。ただのプールなのに、荷物多くない?


――――☆


「先輩たち待ってましたよ。ヤッパバイクの機動力は違いますね」

「威張るな! 強志がお前にプレゼントしてるんだぞ!」


 ぎゃーぎゃー言い合う俺と達樹を放置して強志が車を駐車させた。

 料金を払って中に入る。と、すぐに更衣室があった。

 一昨年はつい癖で男子更衣室に入ろうとしちゃったけど、今回は大人しく女性専用更衣室に入る。

「あ、未来が成長してる。えらいえらい」

 と美穂子に撫でられてしまった。

 ふふん、同じ失敗は二度と繰り返さないのだ。


――――☆


「あ、あれ? く、苦しいい」

 前はぴったりだったはずのブラのはずなのに……、

 って、俺、また豚った!?

「どうしたの? ホックが上手く止まらない?」

「いえ、ダイジョウブデス」

 全然大丈夫じゃない。どうしても上の方のホックが止まんない!

「美穂子さまああ、やっぱりひとりでは無理ですホック止めて!

「まさかとは思うが、お前、一年の頃に着ていた水着と同じ水着じゃないだろうな」

「同じです! ちゃんと買い物しとけばよかったよー!」


 一昨年はそうでも無かった胸の谷間が強調されてしまった。しかもかなりブラの継ぎ目(?) 部分まで谷間が見えてしまっている。

 こ、これはこのまま出るのは恥ずかしい! 

 慌てて薄手のパーカーを着た。


「あれ? 先輩、泳がないんですか?」

 更衣室を出ると男子チームが待っていた。

「お、泳ぐけど……」

「じゃなんでパーカー着てるんですか?」


 俺はこっそりと辺りを見まわした。俺の水着よりもきわどい恰好をした女性が結構いる。

 これなら大丈夫かも!


 と、思いはしたものの、強志虎太郎達樹の前で脱ぐのが恥ずかしい!

 葛藤しながら、ゆっくりジッパーを下ろしていく。

「何すかそのじらし方。AVすっか?」

「うるさい!」

 観念してパーカーを脱ぎ捨てる。

「エロ」

 達樹が簡潔にそう言い放った。

 もう耳まで真っ赤になってしまうのがわかる。

 虎太郎は咄嗟に目を背け、強志は眉間にしわを寄せていた。

「は、早く泳ぎに行こう! シャワー浴びようよ!」

 テンパった様子で虎太郎がいう。俺は簡易な棚にパーカーを置くと、強志の手を取ってシャワーゾーンへと入った。


「わーつめたーい」

「あんなに汗かいたのが嘘みたいっすね」

「気持ちいいな」

 ところで俺たち女子組は髪を結んでいる。俺がツインテールで美穂子がサイドテール。そして百合はポニーテールだ。


「まずはどこから入る?」

「当然あれからでしょ」


 達樹が指さすのはウォータースライダーだ。しかも普通のではなく、六人乗りのボートに乗って滑り落ちるやつ!

「いきなりあれから!?」

 美穂子が戸惑う。

「絶対怖い!」

 俺も抵抗したのだが、結局はウォータースライダーからになったのだ。


「うう、緊張するよぅ」

 順番は順調に進んでいき、とうとう俺たちの番!

 おそるおそるボートに乗る。


「では、行きますよ」

 スタッフさんが言うと、いきなり足元がへこんだ。そして発進する!


「きゃー」「うわああ!」「うやぁああ!」

 想像してたよりずっと早い! 思わず強志の腕に抱き着いていた。

 最後にザバァアアと水に突っ込む。


「怖かったけど楽しかったね」

「最後にもう一度乗ろうよ」

 美穂子と虎太郎が笑顔で言う。た、楽しかったですか!? 俺的には絶叫マシンぐらいの乗り物だったのに!


「次はあれにするぞ」

 百合が指さしたのは激流スライダー。

 浮き輪を借りて、勢い良く三メートル以上の激流を下るアトラクションだ。

「だからどうして絶叫系ばっかり選ぶんだよ!」

「未来と美穂子の悲鳴が可愛いからだ」

 あ、そうですか……。


 胸が気になって百合に反論する余裕が無かった。


 今度は一人ずつだ。


 強志、虎太郎、達樹、百合、美穂子が終り、とうとう俺の番!


 プールに入った途端、水に押し流された! 体が宙に浮く!


「ぅゃああ!」

 どぼ、と水面に沈んでしまうが浮き輪のお陰でなんとか生還できた。

「こ、怖かった……」

「んじゃ、次は流れるプールにしましょっか」

「うん!」


 流れるプール楽しみにしてたんだよなー!


――――☆


 と、皆で向かおうとしていると、

 ブチ! と音がした。

 胸の圧迫感が消えたと同時に、わたしのブラの継ぎ目が裂けていた!

 同時に胸が水着から飛び出してくる。

「おおおおお!」「でけえ!」「眼福」

 などと声が上がったようだが、わたしは座り込み、必死にブラを引っ張って自分の胸を隠すしかできなかった。

 み、見られた……!

 恥ずかしさで真っ赤になるわたしに、虎太郎が棚に置いていたパーカーを持ってきてくれた。頑なにわたしを見ようともせず。

「こここ、これ」

「ありがとう虎太郎!!!」

 強志が周りから俺をかばってくれてるうちに、さっさとパーカーを着なきゃ!」

 でも緊張でジッパーの位置がずれてしまう。強志がジッパーを上げた。


「良いものを見せてもらったぞ未来」百合がにやりと笑う。

「その記憶は抹消して! もう恥ずかしいから先に帰る」


 と、意気込んだのだが、黒スーツで汗一つかいていない冬子さんが、百合が持っていたキャリーバックを持ってきた。

「こんなこともあろうかと、百合様が選んだ水着がございます。着替えに戻りましょう」

「え! 選んでくれたの? 百合すごい、いいやつだったんだな!」


「当たり前だ。私は品行方正、校則など破ったこともない存在だ。お前の好きそうな水着ぐらい揃えているに決まってる」


 校則は破ったことなくても先生を脅して校則のほうを捻じ曲げるタイプだけどな!

 と、心の中で思いながらも、俺、美穂子、百合、冬月さんは女性更衣室へと入って行った。


――――♡


「な、なんだよこれ!」

 三分もせずに中から未来の悲鳴が聞こえてきた。

「お前に買ってきたものだ。遠慮なく選べ」

「選べるわけないだろ! なんでプールでこんな露出しなきゃいけないんだよ!」

「こんなプールだからいいんだろうが。海で着させたら面倒なことになるしな」


「うー」未来がうなっている。


(どんな水着なんでしょうね)

(僕には想像も付かないけど……未来が嫌がってるってことは、ひどい水着なんだろうなぁ)

 達樹と虎太郎がそっと話していると未来が出てきた。またパーカー姿で。

「どんな水着だったんすか? どうせ泳ぐんだからパーカーいらねっすよ」

「…………いるんだ」

 ぽつりと未来が呟く。


 そんな未来に後ろから百合が抱き着いて、ジッパーを下げ未来の水着姿をさらす。

「な、何すんだよ百合!」


 柄こそ控えめなピンクのストライプだけど、ビキニのパンツの側面がリボンになっていた。

 下半身を隠している布面積はとても狭くて……。それを補うかのようにレースの斜めがけ短いパレオを着ている。もちろん生地が薄いので中がばっちり見える。


「すす、すげー可愛いっすよ先輩!」

「可愛くない! いっそのことスクール水着持ってくればよかった……」

 未来がパレオを押さえてうなる。


「それだと別方向に可愛いがずれるだけでしょ。良く似合ってますよ」


 次は未来が希望した流れるプールだ。浮き輪に乗って流れるのを楽しむ。

 ちなみに達樹は流れに逆らおうとしては波にのまれて流されていった。

「なにをやってるんだあいつは」

 百合が呆れたように言う。

「ここの流れるプール、早いもんね」

 美穂子が精いっぱいのフォローを入れた。


「美穂子、この浮き輪使っていいよ! そろそろ泳ぎたくなって来ちゃった」

「え、いいの? ありがとう!」

 プール端で止まって、強志が俺を下ろし、美穂子が乗るのを手伝う。

「う、うわああ!?」

 プールの勢いはほんとに凄くて、流されそうになった俺を強志が止めてくれた。

「未来は泳げるのか?」

「85メートルの実力があるから見せてやる!」


 と、担架を切ったはいいものの、強志が手を放した途端、「きやぁぁぁぁ」と遠くなりながら悲鳴を上げた。

「危ない!」

 咄嗟に受け止めてくれたのは虎太郎だった。

「流れるプールでの事故は意外と多いんだ。未来も気を付けて」

「う、うん」

「85メートル泳いだっつのーは奇跡だったのか?」

 追ってきた強志に反論ができない。

「うぐぐ」

 確かに自分でも奇跡だと思ってたから!

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― 新着の感想 ―
[一言] 最新話を読み直してみたら……強志がもらった車、新車だったんですか。 てっきり、竜神一族の誰かが車を買い換えた結果の、お古と思ってたのに。 強志もそうですが、竜神家の人たちも、未来には甘いんで…
[一言] 今回は未来が悪いわ。 ケチと節約は違うの。
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