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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十七章 とうとう三年生です!
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パンツを隠す座り方

 未来が強志の机に伏せて眠っている。

 クラスメイトが何人もスマホを向けているのも気が付かずに。

 髪の毛、まつ毛がキラキラと光を跳ねて彫像、いや、3Dで作った作り物のような美しさを無防備に晒していた。


「未来セ――」

 遊びに来た達樹が、美穂子に「しー」と人差し指を唇の前に立てられる。

 達樹もまたそっとスマホを取り出し、無音カメラでその姿を撮りまくった。


「ん……」

 

 未来が目を覚まし「たちゅき……?」と寝ぼけた口調で言ってくる。

「しまった、動画で撮っとくべきだった」

 達樹が膝を叩く。

「動画なら私が撮っている」

「売ってください百合先輩!」

「価格交渉に同意ができるのであればな」

「なら――」と商談がまとまりかけるが、美穂子が

「百合ちゃん! 私も動画で撮ってたからあげるよ」と百合をたしなめた。

「まじすか美穂子ちゃん、女神!」


「……? 確かに美穂子は女神だよなー」


 何が話されているのかも寝ぼけて把握できていないのに、未来がへらりと笑う。

「んー、寝ちゃってた。強志はどこいっちゃったんだろ?」

「次の時間倫理っしょ? 屋上でさぼってんじゃないですか?」

「屋上か……」

 未来が立ち上がって教室を出ようとする。

「未来、どこに行くんだ?」

「強志と一緒にさぼってくる」


 百合の問いかけに答えて屋上に向かう。

 パラゼ部の部室から屋上に上がれるのだ。

 ピラミッド状に積んである机を登って、王蟲の眼みたいなガラスを外す。


「未来」

 先に気付いたのは強志だった。未来の手を引いて引っ張っぱる。

「倫理だからってさぼるなよーって一緒にさぼりにきたんだけどさ」


 屋上を見渡す。


「懐かしいな、ここ」

 もと、強志の秘密基地。


 色々あったな。未来がふわりと笑って屋上を見渡す。

 ここが全部の始まりだった気がする。

 女の子になるための心の準備の色々も。


 強志の前にスカートを押さえて座る。


「初めてここに登って来た時は、強志とこんな関係になるなんて想像もしてなかったし」


 周りを見ながら言うと強志に、「はは」と笑われてしまった。

「何笑ってんだよ!」

「お前がちゃんとパンツ隠して座ってるからだよ。前は全開だったくせによ」

 ふと、俺、自分でスカートのすそを押さえているのに気付いた。


「ま、前、全開でしたか……?」

「自分でも気づいてなかったのかよ。あの時は保育園のガキ以上に警戒心無さ過ぎてこっちは大変だったってのによ」


「うう……ごめん」

「おう。もっと自衛しろ」


 笑顔の強志に頭を撫でられて、こいつってどんだけ苦労してきたのかな? なんて考えてしまった。



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