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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
一章 体の違いに右往左往する
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母ちゃん

「上田はどこにいるんだい!! 私の愛車で轢いてやるからここに連れてきな!!」

「やめてお母さん! 恥ずかしいから落ち着いて!」


 またも俺はオカマっぽい言葉遣いをしつつ、暴走する母ちゃんを押さえ込んでいた。

 背中から押さえつけてるんだけど、母ちゃんは元気に両手を振りつつ警官に詰め寄って行く。


 ここは警察署。


 俺、被害者だけど、取調室みたいな場所に引っ張っていかれるんだろうな、とか、牢屋に連れて行かれて、今日は一日ここで過ごしてくださいって言われたらどうしようって戦々恐々としていたんだけど、連れて行かれたのは会議室みたいな普通の部屋で、話をしただけで開放された。とんだ拍子抜けだ。

 ほっと会議室から出たのも束の間、家の母ちゃんがえらい形相で俺に駆け寄って来た。 


 被害者とは言えども、俺も竜神も未成年。保護者が呼ばれるのは当然のことだった。


 パートが休みで自宅に居た俺の母ちゃんは連絡がついて、この騒ぎだ。俺に事情聴取していた刑事さんがとっつかまってしまった。


 刑事さんに罪はないから! 車で轢いたら母ちゃんが加害者になるから落ち着けっつってんだろこのクソババァ!!

 全力で押さえようとするんだけど、家の母ちゃんは身長170cm体重80キロの巨漢もとい巨女もとい平均的なオデブババアだ。小柄な俺では抑えることができない。


「俺無事だから! 竜神が助けてくれたから何もされてないからとにかく落ち着けかーちゃん!!」


 ようやく声が耳に届いたか、母ちゃんは動きを止めて俺を振り返った。

 両肩に掌を乗せ、「本当に、大丈夫だったんだね?」と聞いてくる。

「うん。大丈夫。なんも無かった」

 本当は体触られたりだのあったけど、取り乱してる母ちゃんにわざわざ告げたくはない。


「よかった……」


 全身から力を抜いて、母ちゃんは俺を抱き締めた。母ちゃんに抱き締められるなんて、何年ぶりのことだろうか。

 母ちゃんは俺の背中を確かめるようにポンポンと叩いてから、横に居た竜神を見上げ、深々と頭を下げた。


「竜神君、未来を助けてくれて本当にありがとう。あんたが居てくれて本当に良かったわ! 感謝してもしたりないよ」

 俺を片手に抱いたまま深々と頭を下げる母ちゃんに、竜神もまた頭を下げた。

「連れ去られる前に防げなくて申し訳ございません。オレは、完全に、未来さんを守らなければならなかったのに」

「だからお前は悪くないって。充分助けてくれたよ」

「アンタも竜神君に頭を下げるんだよ! なにふんぞり返ってるの!!」

「ふんぞり返ってはねーよ! 感謝してるよ!」


 ぎゃあぎゃあ廊下で言い合ってた俺達の視界の先に、警官に付き添われた女性が歩いてきた。

 早苗ちゃんのお母さんだった。


 俺は思わず体を硬直させてしまった。


 早苗ちゃんのお母さんを守るように警官が立ちはだかっている。まぁあれだけ大騒ぎしてれば当然だ。俺も母ちゃんの腕を強く掴んだ。早苗ちゃんのお母さんに飛びかかって行かないように。


 あれだけ騒いでいたのに、母ちゃんはおばさんに飛びかかろうとはしなかった。


「上田さん――」


 静かに呼んだ母ちゃんの声に、反応はなかった。母ちゃんは頓着せず続けた。


「吐き出したいことがあるなら、いつでも聞いてやるから連絡しておいで」

「――――――――」


 早苗ちゃんのお母さんはびっくりしたみたいに母ちゃんの顔を見た。


「一人で溜め込むんじゃないよ。あんたは取り返しの付かないことになるまで溜め込むみたいだからね。説教も文句も勘弁してやるから、いつでもいい、連絡してきな」


 早苗ちゃんのお母さんは、綺麗な顔に見る間に涙を溢れさせて、子供みたいにしゃくり上げながら「ありがとうございます、」と言った。

 大人の人がこんな泣き方するなんて、初めて見た。

 俺はただ二人のやり取りを見ていることしかできなかった。


完結で締めたのに、短いサイクルで連載を再開させてしまいすいません!


感想で頂いた内容がとても嬉しくて、そして刺激になって、書かずに居れなくなってしまいました。感想を下さった方々、本当にありがとうございます!(三名も感想をいただけるとは思ってもなかったので本当に嬉しかったです)

評価、お気に入り登録してくださった方々もありがとうございます!あなた方がいなければ、泣きながら全削除していました。


今までは2003年(ぐらい)に書いた話ですが、この話より先は、2013.05以降に書いています!

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