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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十七章 とうとう三年生です!
217/239

体育祭です!(後編)

 俺たちはグラウンドの木陰に入り、バカ面動物模様のシートを敷いた。


「パワーが出るように肉料理中心にしたから午後も頑張ってくれよ。特に竜神、虎太郎、達樹、百合、リレー楽しみにしてるから!」


 じゃーんと自分で言いながらお弁当を開く。

「やった、おれこれ貰いっと」

 早速達樹が唐揚げを取っていく。

「私もお肉中心だよ。こっちのおにぎりには鮭、こっちのおにぎりにはシーチキンマヨが入ってるから」


「シーチキンマヨ」

 虎太郎が反応してすぐに箸を伸ばす。シーチキンマヨのおにぎりと、俺が作った肉多めの焼きそばを取り皿に盛る。

「あ、虎太郎さん、焼きそば取りすぎ!」

「う……今日ぐらいは見逃してほしい……」

「トンカツうめえな。まだカリカリだ」

「ソースあるよ」

 強志にソースを渡す。


「卵焼きうめー」

「今日はちょっとだけ砂糖多めにしたんだ」


 お弁当の時間はあっという間に終わり、次は応援合戦だった。


「よし、行ってくる!」

「ふふふ、応援合戦、楽しみにしててね」

「い、言わないで美穂子!」


「言わなくても次だよ。さ、行こう!」

「ん!」


 美穂子に手を引かれて準備室になってる教室へ急ぐ。



 服を着替えて、出番だ!


――――――――――――


 クラスメイト寺戸君視点


――――――――――――


 赤軍と白軍の応援隊はトラックの左右から別れて出てくる。

 それから本部席へ向かうのだ。


 向かって左の校舎から白軍の応援団が入ってくる。男子と女子の入り混じった応援団だった。

 どこで手に入れたのか女子も男子も詰襟の学ランを纏っていた。

「オス!!!」と気合の入った声が上がる。でもその声はバラバラだった。


 そして、右側から入ってきた赤軍は――


 未来さんが手元が丸くなった大きな指揮棒――指揮杖を上下に振りながら出て来た。


 しかも服が可愛いくて似合い過ぎてる。たしかあの服、ジェファーソン女学院の制服じゃ無かったかな?


 後ろの女の子達はチアリーダーの恰好をして赤いポンポンを持っていた。女子たちの笑顔が輝いている。


 それからブラスバンドが曲を弾きながら出てくる。この曲は未来さんが歌って大ヒットした曲だ。売り上げは300万枚を超えたと音楽バラエティでやっていた。


 ブラスバンドの人数が少ないのは白軍赤軍と別れているからだろう。赤軍のブラスバンド部員だけが参加してるんだろうな。


 でも白軍の応援歌にも音が全然かき消されない。

 見ると、歌手の氷室メイさんがサックスを吹いていた。

 彼女のサックスだけ種類が違うのかと思えるほど強く太い音が出ている。ブラスバンドの人たちも、その音に負けるまいと楽器を鳴らしていた。


「あかぐん――――」

 未来さんが精いっぱいといった声を出すと、「ファイト!」とチアリーディングの人たちが続ける。ポンポンが宙を舞った。うちの学校にチアリーディングは無いから募集したんだろうな。

 美穂子さんも投げたポンポンを見事にキャッチしていた。


「いやーこれは反則っすね。未来先輩も美穂子ちゃんもメイさんも可愛すぎて全然白軍が目立たねえ」

 3年5組のブースに居座ってる達樹君が感心している。


「やはりジェファーソンの制服が良く似合っているな」

 椅子に座り足を組んだ百合さんが怪しく微笑む。

「他校の制服着て大丈夫なんですか?」

「本部に許可は取ってある。もともと私服でも通える学校なんだからな」

「さすがぬかりねえ。ってかあんま街で見ないからジェファーソンの制服だって知らない人もいそうっすね」

「………………」

「どうしたんですか強志先輩。マジで人でも殺してきたかのような顔してますよ」


 確かに眼光が鋭くなっている。こないだ助けてくれた恩があるけど怖い。


「未来がこんな大勢の前でも笑えるようになったことに感心してるんだよ」

「先輩ってあいかわらず顔で損するタイプっすね」


 応援合戦に点を入れるのは先生たちだ。


 なんと、先生の全員が全員赤軍に点を入れてしまったようで、白軍の点数は動かなかったのだった。先生たち、なかなか容赦がありません。


 練習が足りなかったのか、全体的にバラバラな白軍の応援がイマイチだったせいもあると思うけど。


――――――――――――


 未来視点


――――――――――――


 とうとうとりのリレーだ。

 まずは女子から始まる。

 ジェファーソンの制服から体操服に着替え席に戻ると、百合がスタートラインにスタンバイしていた。最初の走者だったんだ。

「百合ー頑張れー!!」

 応援に手をあげて答えてくれる。


 パン、と音が鳴った。

 百合は喧嘩も強いだけあって早かった。

 大差をつけてバトンを次に渡す。

 その後はほぼ互角な戦いをしていたんだけど、ボンキュボンな体形をしている西郷さんが走り出すと一気に差が開いてしまった。俺ぐらいに足が遅い。なぜリレーに参加したんだ。

 それと胸の揺れ方が凄い。絶対ブラ付けて無さそう。走り方もアニメに出てくる女の子みたいだったし。

「おおー!」と喜んでる男子たちもいたけど少数派だ。なんだこいつみたいな空気が流れてしまっている。


「はぁ、はぁ、ごめんなさーい、アタシのせいでこんなに差がついちゃって! 胸が邪魔だったの!」

 こっちまで聞こえるぐらいの声で言う。

「なんすかあの人。負けてまで自分の胸見せつけたかったんすかねー。こっちは結構マジでやってんのに」

 達樹がぼやく。


「それに胸のでかさなら未来先輩の方がでかいし」

「な、どこ見てんだよ!」

 とっさに胸を両手で隠してしまう。周りの男子もうんうんとうなづいている。うんうんじゃねーんだよ!


 花ちゃんが大健闘して差を詰めてくれたんだけど、結局西郷さんが作った差を埋めることが出来ず、赤軍は惨敗してしまった。


 点数が変わる。

「おおおお」

「えええ!?」


 ここまで大差で勝っていたのに、なんと、5点差まで白軍との差が迫ってきていた。

 次の男子リレーで負ければ赤軍は敗退だ。

 白軍が沸く。


「うげえ、ここで逆転されるとか絶対嫌っすよ。全力で行ってやる」


 達樹が立ち上がる。

 サッカー部を辞めたとはいえ達樹の足はかなり早い。

 今回のリレーのアンカーに選ばれていた。


「よぉーい、はじめ!!」


 パン、とピストルが鳴って一年生が走り出す。

「頑張れ赤軍ー!!」

 明日声が枯れるんじゃないかってぐらいの勢いで応援する。

 周りの皆、やる気のなかったギャル軍団まで声を張り上げている。


 順調に赤軍が勝っていた。だけど、

「あ――!!」

 一年生のゼッケンをつけた子が転んでしまった!!

 慌てて立ち上がり走り出すが、トラック半分も白軍との距離が離れてしまう。

 一年生はバトンを次に繋げたものの、ガチで泣いて赤軍に頭を下げていた。

 話し声は聞こえないけど、竜神は泣く一年生の頭をくしゃりと撫でた。

 虎太郎も達樹も励ましている。

 差をつけられたまま、次は竜神の番だ。


「――は、早い! さすが竜神君!」

 寺戸君が珍しくテンション高く言う。

 確かに、トラック半分も距離のあった白軍との差は4分の1程度まで縮まった。


「強志がんばれー!」


 一気に赤軍の応援の声が上がる。

 が、次の走者にバトンを渡すとその後はやっぱり差が開いたままで、虎太郎の番。


「頑張れ虎太郎!!!」

「頑張って!!」

「コタロー先輩!! 好きです!」


 どこからか告白の声まで上がってるが、虎太郎は動じることもなく差を縮めた。

 でも、まだ遠い。


 次は達樹だ。

「達樹君」

「いよっしゃあ!」


 アンカーのたすきを掛けた達樹が走り出す。まだ前とは二人分程度の差が開いていた。しかも白組のアンカーは陸上部のエースだ。

 でも、俺たちはだてに修羅場をくぐってはいない。

 達樹はエースにくらいついていった。

 二人分の差だったのが一人分の差に。

 だが、やっぱりエースの背中が遠い!


「うらぁ!!」


 ゴール直前で達樹が飛んだ。

 そしてゴールテープを切る!!!


 赤軍から大歓声が上がった。


 達樹は無茶な飛び方をしたのでちゃんとした着地は出来ずに砂の上を転がり、体操服は砂だらけになっていた。あれじゃ絶対怪我してる。

 思わず俺はトラックを回って達樹の元に駆け込んだ。

「全く、無茶な真似をするわねえ」

 医療テントで保険医の猪狩先生が達樹の手当をしてくれていた。

「だって、後輩が泣いてたのに負けるわけには行かなかったんすもん」

「大丈夫か、達樹」

 隣に行って声をかける。

「あ、先輩。かすり傷っす。大丈夫。それより見てくれました? おれの渾身の一撃」

「見たに決まってるだろ! 初めてお前をかっこいいと思ったよ」

「マジすか! やった、飛んだかいがありました」


「先輩……」

 転んだ一年生もテントに入ってくる。

「ありがとうございました! すいませんでした!!」と達樹に向かって直角に近く頭を下げた。

「気にすんなって。勝てたのはおれ一人の活躍じゃねーし。虎太郎さんや強志先輩が差を縮めてくれたから勝てたとこもあるしさ」


「先輩、マジでかっこよかったっす」

「おー」


 ちゃんと先輩してる達樹に、ちょっと嬉しくなってしまう。


 達樹は下はジャージを着てたので、幸いにも腕の傷だけで済んでいた。


「大丈夫か達樹」

「無茶なことをするね」

 強志と虎太郎も救護テントに入ってくる。


「でも勝てたんだからよしでしょ。ありがとうございました猪狩先生。閉会式に行きましょーよ」


『皆さん、とても素晴らしい活躍でした。では、ここで点数を発表します。まずは白軍、137点』


 ボードは撤去されていて点数がわかんない。

 赤軍の点数は!?


『赤軍が162点です』


「や――――やったああああ!!」思わず近くにいた琴音に抱き着いてしまう。琴音も飛び跳ねながら俺を抱きしめてくれた。

「勝ったー!」

「よっしゃあああ」


「あー負けちまったかぁ」

「勝てると思ったんだけどなー」


 赤軍は喜び白軍ががっくりと肩を落とす。

 こうして、俺たち3年の最後の体育祭は幕を閉じたのだった。



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