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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十七章 とうとう三年生です!
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体育祭です!(前編)

 この桜丘高校にも体育祭がある。

 普通は10月とかなんだろうけど、桜丘の開催日は5月だ。こっちも、ジェファーソン高校と同じで、早く上級生と下級生の仲を深めさせたいから、という理由で春の運動会になっていた。


「体育祭めんどー」

「だねー、授業してた方がましだっての」

 ここは女子更衣室。

 3年に上がってメンツの変わったギャル軍団たちが面倒くさそうに吐き捨てた。


「体育祭楽しみじゃないの?」

 結構楽しみにしてた俺が話しかけると、

「無いに決まってんじゃん。自分の出番終わったら帰ろっかな」


「最後に色対抗リレーがあるだろ? あれが一番盛り上がるのに見て行かないのはもったいないぞ」


 この学校の体育祭の班分けは縦割り式だった。

 一年も二年も三年も10クラスなので、1組から5組までが赤軍あかぐん。5組から10組までが白軍しろぐんだ。

 色対抗リレーにはうちのクラスから竜神と虎太郎、そして偶然にも5組だった達樹も出場するのだ。

 女子の方には花ちゃんと百合が出場する。今から楽しみだった。


 ちなみに、俺が出る種目は借り物競争。

 足が遅くても何とかなる種目にねじこんだんだ。

 どうせやるなら白軍に勝ちたいしな!


「おじゃましまーす」

 赤の鉢巻を付け、下はジャージだけど運動着姿の達樹が教室に入ってくる。

「達樹、最後のリレー頑張れよ! 応援してるからな!」

「任せてくださいよ、ぶっちぎりで勝ってやりますから!」


 開会式が始まるので全員が下に降りていく。開会式ボイコットする人も結構いるけど。


『この学校は50年の年月があり――――生徒諸君には精神および肉体まで――――皆で切磋琢磨して――――』


 校長先生話が長いです。これだけで体力使っちゃうよ。

 ふら、と倒れそうになって首を振る。美穂子が結んでくれたポニーテールがバサバサと揺れた。

『というわけで、桜丘高校、体育祭の始まりです!』


 ポン、ポンと小さな花火が上がる。やっとかー!


 まずはオーソドックスな徒競走からだ。

 この学校は、一人2種目が課せられている。


 ちなみに俺は借り物競争と応援合戦。

 竜神は綱引きとリレー。

 虎太郎も同じく綱引きとリレーだ。

 百合は騎馬戦とリレー。

 そして美穂子は障害物競争と応援合戦だった。


「赤軍、頑張れー!」

 競技場と観覧席を分けてあるロープを掴んでのめりこみ気味に赤軍を応援する。


(赤軍)

「未来ちゃん!」

「やべー、未来ちゃんが応援してくれてる」

「ぜって―勝つぞ!」

(白軍)

「俺もあんなかわいい子に応援されてえ……なんか萎えるわ……」

「だな……」

「ドーピングみたいなもんじゃねーか……」


 この時の俺は知らなかったけど、こんな感じの会話がなされていたらしい。


「あ、次、良太だ! 良太頑張れー勝てよー!」

「やめて未来ちゃん! ワタシの応援しないで!」

 となぜかおねえ言葉で怒られた。なんでだ。

 ふざけながらも良太は2位だった。


 次は大玉転がし。見てるだけなのがもどかしい。俺も一緒に押したいけど、俺が入ったら絶対負けるだろうな。運動神経死んでるし。


「未来、応援してる時にも水分は取っておけ。後でばてるぞ」

 強志がペットボトルを持ってきてくれた。

「うん!」

 ちょっとでよかったから蓋の開いてない新品のボトルじゃなく、強志の飲みかけのボトルを受け取る。

 少し飲んで、


「関節キスしてるー」

 と耳元でヒマリが呟いてきた。

「か、間接キス!?」

「いいなー、アタシも彼氏欲しーなー」

「抱き着くなよ、暑いだろー」

「未来いい匂いー」


「あ……」


 耳元の匂いを嗅がれてゾクゾクしてしまった。

「こら、ヒマリちゃん。未来をからかっちゃ駄目」

「はーい」

 美穂子が注意してくれてやっと離れてくれた。


「やべーエロかった今の!」「待って立つ、立つって!」「俺も」

 な、バカなこといってんじゃねーよ! と反論したかったが無視をする。強志がぎろりと睨んでくれたしな。


 騎馬戦では百合が大活躍だった。なんと10本以上の鉢巻を白軍から奪ったのだ。


「さすが百合!!」

 応援席から声を張り上げると、ちゃんと聞こえたようで笑顔で答えてくれた。


「ご褒美はキスでいいぞ」

「それは無理!」


 次は借り物競争。とうとう俺の出番である。


 うードキドキする! どんなお題なんだろ!」


 パン、と音が鳴って走り出す。相変わらず走るのが遅くてお題が書かれた札を取るのも最後になってしまう。


「あ」

 お題に思わず声が漏れてしまった。


「強志、お願い!」

「おう」

 すぐに来てくれたかと思うと、俺を姫様抱っこで走り出した!

「わ、わ、わ」

 こんな全校生徒の前で恥ずかしい! でもこのスピードなら勝てるぞ!


「ちょ未来! 移動型ポケモン使うの禁止!」


 白軍の塔子が手にドラえもんの人形を持っていた。誰だよ体育祭にドラえもん連れてきた奴。

「やった、1位!」

 ゴールテープを切る。


『未来ちゃんが連れて来たのは竜神君ですね! お題をどうぞ!』

 強志の腕から降りてマイクに向かって言う。


『お題は『人を殺したことがありそうな人』です!』


『なるほど、ぴったりですね』


――――


「強志ーすねるなよー」


「ほっといてくれ」


「ごめんごめん。外見だけの話だから許して!」

 竜神は椅子に座って項垂れていた。

「未来先輩ってホント、肝心な時にアレっすよねー」

「あれってなんだよ! だって強志が良かったんだもん。他の人連れて行くのもやだし。ボクシング部達も怖い顔してるから選んでもよかったけど、やっぱり強志がいい」


 ぽん、と俺の頭に竜神の手が乗った。


「ならいい」

 よかった、機嫌を直してくれたみたいだ。

「未来ちゃんに甘いねー。普通の恋人同士だったら結構な喧嘩になりそうなのに」

 新ギャル軍団の渡辺さんが言う。


 そ、そこまでの事しちゃいました?


「事実だからしょうがねえと思い直しただけだ。次は美穂子の出番だぞ。


「あ、ほんとだ! がんばれ美穂子ー!」

 パン! とピストルが鳴って走り出す。俺と違って運動神経のいい美穂子は平均台も網も問題なく進んでいくが、残念ながら結果は3位だった。3位でも充分得点は高いけどな。


「うー悔しい、3位だったよー」

「お疲れ美穂子! 3位でも十分だって!」

「そうだぞ。上位じゃないか」

「うん……」


 俺たちが褒めるけど、それでも納得がいかないのかしょんぼりしてる。


「次は綱引きだな。竜神、虎太郎、頑張れ!」

「おう」

「うん」


 虎太郎が演技じゃない笑顔を見せてくれる。

 うん、こっちの方がいいな。絶対。


「赤軍、頑張れー!」「頑張って!」「負けたら殺すぞ!」

 百合の物騒な応援に赤軍たちがおののく。

 もちろん百合の毒舌に慣れてる強志と虎太郎は意にもかいしてないが。


 

 虎太郎が一番先頭で、竜神が殿に立っている。中間ぐらいに達樹もいた。あいつ、綱引きを選んだんだな。


『用意……スタート!』

 先生が旗を振ると同時に綱がぎしりと悲鳴を上げた。

「がんばれー!」

 必死に応援すると、だんだん綱が赤軍の方へとひきよせられていく。


 一番最後に立っている強志はぐ、と綱を引いて――――。


「うわあああ!」

 一気に白軍が瓦解した。


 そのせいで赤軍まで転んでる人が何人も出た。

 虎太郎、達樹、強志は大丈夫だったけど。


「勝者、赤軍!」


 先生が赤い旗をあげた。


「やったあああ!」


 またポンポンと花火が上がって、


『お昼休みの時間です。皆様、十分に水分を取って熱中症に気を付け、英気を養ってください』


 と放送が流れる。

 お弁当の時間だ!

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