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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十七章 とうとう三年生です!
214/239

他校の文化祭(ジェファーソン女学院)(前編)

「あれ?」

 学校帰りにポストを除くと、やたらと豪華な封筒が入っていた。

 名前は「歌城リリィ……?」


「友だちか?」

「ううん、覚えがないよ。間違ってるのかな?」

 ともう一度名前を確認したけど日向未来で間違い無かった。今は竜神未来だけど。


 部屋に入って封筒をハサミで切る。

 中に入っていたのは『どうぞお越しください』と書かれた手紙と、文化祭のお誘いのチケットだった。


「――あ、思い出した、この人、アシュレイさんと一緒にいた人だ!」

「お前がケーキ屋で絡まれたって言ってた奴か?」

「ううん、どっちかって言ったら止めてくれた人。すごい、ジェファーソン女学院に入れるなんて嘘みたいだ」

 チケットまでゴールドでピカピカしてる。


 さすが年収一千万を超えないと入学すら出来ないと言われてるジェファーソン女学院。

 チケットの数は五枚入っていた。


 あの時に居た、百合、琴音、美穂子、俺、そして柳瀬さんの分だろう。


 ジェファーソン! 女子高校!(というか女子小学校女子中学校女子大学もあるが) そんな場所に招待されるなんてちょっと嬉しい!

 一度は入ってみたかったんだよな、女子高。でも……。


「強志がいけないならいいや。誰かに渡しちゃおっと」

「せっかくだから行って来いよ。美穂子と百合が付いてるんだから平気だろ?」

「むー」


 また絡まれそうだしなぁ。 なんだっけヘンリエッタだっけ、ヘリンエッタだっけ? いきなり俺をぶとうとしてきた女の子を思い出す。


「やめとく。また絡まれたら怖いし。チケットは琴音に渡しちゃうよ」


――――


 と、思っていたのですが。

「アタシこの日藤堂とデートの予定だから無理。柳瀬はー?」

「残念だけど、私もこの日はお母さんと出かけるからパス」

 と、琴音にも柳瀬さんにも断られてしまった。


「私にも招待状が来ている」


 わ。急に背後から話しかけられてびっくりしてしまった。俺の後ろで百合がチケットをひらひらさせていた。

「じゃあ六枚になるね。強志たち誘って行っといでよ」と、琴音があっさりと言う。

「え、いいの? 藤堂とのデートで行けばいいのに」

「いくわけないでしょ! あの学校美女ばっかりだもん! 藤堂が浮気しそうだし絶対嫌!」


 なるほど。

「じゃあ私たちで使うぞ。他はどうでもいいが、アシュレイ嬢には借りがあるからな」


「え、ひょっとしておれ達も入れるんですか!?」

 虎太郎の机の前にしゃがんでいた達樹が立ち上がった。


「んー? あそこ男子禁制じゃなかったっけ?」


 美穂子が首をかしげる。

「貰った招待状をどう使おうかは勝手だろう? 強志、虎太郎、達樹、ついてこい。この際だ、暴れてくれても構わんぞ」

 いやそれは構え! 招待された側なんだからな!


「ジェファーソンって全寮制だから制服見ることも少ない学校っすよね。女子校に入れるなんてすっげー楽しみ。ね、虎太郎さん」

「僕は……少し遠慮したいかな……緊張しそうだし」


「いつまで人見知りをこじらせているんだ。いい加減に成長しろ」

「うぅ……」

 という百合の一声で、俺たちはお嬢様学校の文化祭に向かうことになったのだった。

 それにしても5月の文化祭って珍しいな。

 百合に聞くと「早くから下級生と上級生の仲を縮めるためのイベントだ」と答えが返ってきた。

 なるほどー。

 桜丘も5月に体育祭が催されるんだ。多分同じ理由なんだろな。


――――☆


 早速当日。俺たちは全員制服で昼頃にジェファーソン女学院を訪れた。

「きゃ、殿方が……」

 と受付の女の子が少し驚く。

「全員分のチケットだ。確かめてもらおう」

「あ――リリィお姉さまのお友達なのですね。どうぞ、中へお入りください」


 チケットには刻印がしてあって、意外にもすんなりと中に入れることができた。

 体育館らしき建物から(お城みたいだった)讃美歌が聞こえてくる。


「未来君!」


 始めに迎えてくれたのはアシュレイさんだった。

 相変わらず美人でショートカットが良く似合っている。


「お、お招きいただきありがとうございます」

「ふふ、それはリリィお姉さまに言って欲しいな。ところで、後ろの人たちは……」


「ちわーっす。未来先輩の後輩の達樹っす。よろしくおねがいします」

「熊谷美穂子です」

「浅見虎太郎と申します」

「竜神強志です。毎年ケーキをありがとうございます」


「あぁ、キミが竜神君なんだね。初めまして。あのケーキはヘンリエッタが未来ちゃんに無礼を働いたことのお詫びの品なんだから気にしないで」


「アシュレイお姉さま、その方たちは……?」

 俺と同じぐらいの身長の女の子がアシュレイさんの後ろに隠れて言う。さすが美女揃いの学校。この子も可愛い。


「ボクの友人。そんなに緊張しなくていいから」

「いらっしゃい、未来ちゃん、百合さん、美穂子さん」

「あ……」


 後ろから声を掛けられて振り返るとリリィさんが立っていた。相変わらず高飛車な感じだけど美人は美人である。

 アシュレイさんが俺たちのことを軽く紹介してくれた。


「殿方がいらっしゃるとは思ってなかったわ。あら、未来さん……その指輪」

「あ……はい、結婚指輪なんです。つよ……竜神君と結婚したので、竜神未来になりました」


 満面の笑顔で答えてしまう。


「そう……。こちらにいらっしゃい、ガーデンパーティーをしているの。ビュッフェ形式だから好きなだけ食べて」


 わー。

 名前も知らない料理がいっぱーい。


「一時からダンスパーティーが校庭で催されるわ。是非未来ちゃんと美穂子さんと百合さんも参加して行って」


 そう怪しく笑ってリリィさんがスカートをなびかせて去って行った。

「あくまでおれ達は用無しってとこっすねー」

「女子校だから仕方ないよ」

「確かに。すげーごちそう。まさか文化祭で食べ放題なんて思ってもいませんでした。しかも作りたて」


 庭には料理人が三人もいて料理を追加していってる。

 確かにこんな文化祭初めてだよ。


「あ」


 遠くからヘンリエッタがこちらを睨んでいるのに気が付いた。咄嗟に視線をそらす。絡まれませんように。

 でも、ヘンリエッタの取り巻きたちも俺を睨んでてちょっと悲しくなる。

 俺と三郎は本当に何の関係も無いのに。ていうか竜神と結婚したのに。機会があれば指輪を見せつけてやろっと。


 料理は予想通りどれも美味しかった。

 昼過ぎに入場したので、あっという間にダンスパーティーの時間になってしまった。


「ほんとに行くんすか? おれ、ダンスなんて踊れませんよ? フォークダンスなら何とか行けますけど」

「ほとんど変わらん。虎太郎、教えてやれ」

「え」

 百合に言われて驚きつつも、虎太郎が女性パートを引きうけスムーズに教えてやっていた。

「ここで女性を一回転させてもう一度動くんだ」

「次にパートナーを変えていく。これがこの高校のダンスの流れだな」

「どうせなら未来先輩に教えてもらいたかった……」

 なんで俺。

 クリスマスパーティーへ行くときの礼儀として、ダンスは百合にみっちりしごかれたから踊れるけど、男性パートはわかんないよ。


「まぁ、それで上等だ。へたくそなダンスで場をめちゃくちゃにしてやれ」

「百合ちゃん……」

 美穂子が目をつぶって苦笑する。


「他の学校の人が全然いませんね。おれらだけなんすか?」

「だろうな。そもそもリリィ嬢はこの学校の理事長の娘だ。アシュレイ嬢もリリィ嬢の姻族だしな。特例で招待してきたのだろう。まぁ、男が来たのは予想外だったろうがな」

 くっくっくと楽しそうに笑う。

 この女の園で男子が3人。

 すれ違う女の子達が強志達を見ては顔を赤らめているのに、俺はちょっと危機感を持ってしまったのであった。


 校庭につくとオーケストラ部(?)の生演奏が始まった。ブラスバンドかな? って思ったけど、バイオリンやチェロ、コントラバスまでいる。多分オーケストラであってるよな?


「未来ちゃん。良かったらボクと踊ってくれるかい?」


 アシュレイさんがひざまずいて俺の手の甲にキスをする。

「は、はい」

 びっくりして上ずった声が出てしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] え、ヘンリエッタ、まだいたんですか。 てっきり冷泉三郎からは絶縁状を叩き付けられた上、冷泉家にも冷泉財閥にも出入り禁止。未来に近づくのも永久に禁じられ、日本にもいられなくなったと思ってたので…
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