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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十六章 2学期に突入!
208/239

みんなで初詣!

 初詣です! 去年は竜神が入院して行けなかったけど、今年は神社で年越しするんだ!

 なにを着て行こうかなーとクローゼットを見回していたら、竜神のお母さんから電話があった。


「はいもしもし、未来です!」

『こんにちは未来ちゃん。年末に強志と初詣に行くんですって?』

「ええ。桜丘神社まで行ってきます」

『着物は持っているの?』

「う」

 俺のクローゼットには人にもらったものとか兄ちゃんに買ってもらったものが沢山あるけど、着物は一着も持ってないのである。


『無いならうちにいらっしゃいな。丁度未来ちゃんが好きそうな柄があるのよ』

「え!? い、いいんですか? 着物なんて大切な物……」

『もちろんよ。とういうか是非着て欲しいわ。今から家に来れるかしら』

「はい!!!」

 二つ返事で答えて通話を切る。


「こんな時間にどこに行くんだ?」

「竜神家! 着物を貸してくれるんだって」

「一緒に行く。もう夜中だしな」

「心配性だなぁ、すぐそこなのに」

「いいから行くぞ」

 俺は竜神に手を引かれ、スープの冷めない距離にある竜神家まで急いだのだった。


――――


でーん。


 そんな効果音が付くぐらいにど派手な着物が用意されていた。

 全体的に濃いピンク色で綺麗な花が描かれている。

 た、高そう……だし、似合う気がしない。

「どう? 可愛らしいでしょ? 絶対未来ちゃんに似合うと思って、お義母さんと一緒に仕立てたの」

「え! 手作りなんですか? 凄い……! で、でも、わたしには勿体なさ過ぎます……着物が可愛過ぎて似合わなさそうだし」


「そんなことないわよ。絶対似合うから、ほら、着替えて着替えて」

「わー」



 抵抗する暇もなく、着物に着替えさせてもらっちゃった。

「ほら、見て見て、良く似合ってるでしょう?」

「う……着物が可愛すぎてわかりません……」

「客観的に見て可愛らしいのだから堂々としてなさい」

 おばあさんに言われて、しゃきっと背筋を伸ばしてしまう。


「髪型はアップヘアがよさそうね」


 今度は鏡台の前に座らされて、髪を編み込んでくれた。そして、白いお花を耳のあたりにつける。

「よし完成! 思ってたより可愛いー! お義母さんと一緒に頑張ったかいがあったわ」

「そうね。本当に強志にはもったいないぐらいだわ」

「も、もったいなくないです! 強志君はカッコいいし守ってくれるし」

「男として、女の子を守るのは当然のことでしょう。さぁ、送ってあげるから車に乗って」

「あ、大丈夫です。今日一緒に初詣に行く友達が車を出してくれるそうなので」

「あらそうなの? ひょっとして百合ちゃん?」

「はい」


「じゃあ安心ね。強志を呼んでくるわ」


「………………」

 竜神は俺を見て無言だった。


「な、なんで無言なんだよ! 何とか言って!」

「いや、可愛すぎて驚いただけだ。良く似合ってるな。髪型も」

「そうでしょそうでしょ。私とお義母さまの手作りだもの。さ、気を付けて行ってらっしゃいね」

 お母さんとお婆さんが笑顔で送り出してくれる。

「おう」

「はい! よいお年を!」

 ガバリと頭を下げてお母さんとおばあさんに挨拶をした。


 時間はもう23時近い。家まで帰りつくことなく、百合のリムジンに拾われたのだった。

 運転手はもちろん冬子さんだ。


「わ、未来可愛い! 良く似合ってるよ!」

 美穂子が褒めてくれるが、美穂子の白い着物もよく似合っている。ちなみに百合の黒に赤い花が散りばめられた着物も。

「ひょっとして竜神のご母堂の手作りか?」

「うん。お婆さんもだけど」


「すげーっすねー、未来先輩にぴったり」

「う、うん、凄く似合ってる」


 男性チームは全員普通の服装だった。虎太郎がショートコートに高そうなズボン。

 竜神は黒のジャケットにジーンズ。

 そして達樹は。


「達樹、その服ひょっとして虎太郎の?」

「よくわかりましたね。借りてきちゃいました」

「お前が虎太郎の服借りるなんてすげー度胸だな」

「どういう意味っすかそれ!」

 完全に服に着られてるぞ。


 ゴーン、とどこからか除夜の鐘の音が聞こえだした。


「桜丘神社へ到着しました。駐車場が一杯ですので、わたくしは車で走ってきます。終了時間が近くなればご連絡をください」


「ごめんなさい冬月さん、私たちばっかり楽しんで」

 美穂子が頭を下げる。

「お気になさらず。わたくしは百合様のお役に立てればそれでいいのです」

 と、男前なことを言ってリムジンは去っていった。

「わぁ、人が多いね」

「想像以上だな」


 神社には左右に出店が出ていた。

「おー、イカ焼き発見。食いてえ」

「食べるなら帰りにしろ。余計な荷物になる」

「はーい」


 百合から注意されて大人しく引き下がる。


「もうすぐ24時だな」

 竜神が腕時計を確認していった。

 すると、どこからともなくカウントダウンの声が上がってきた。


「じゅー」「きゅー」


 もちろん俺たちも参戦する。


「はーち」「なーな」「ろーく」「ごー」

「よーん」「さーん」あと少し!「にー」「いーち」「ぜろ!」


 カウントダウンが終わると花火が上がった。

「わーきれー!」

「あ、ハート型の花火! 竜神、見た?」

「おう」

 手を繋いでくれた竜神の手を強く握り返す。


「「あけましておめでとう」」

「うん、おめでとー!」

「今年もよろしくなー!」

「おめでとうございます!」


 皆で挨拶を交わす。

 結構人がいるのに、意外とすすむスピードが速い。あっという間に俺たちの番が回ってきた。

 それぞれお賽銭を入れて願い事をする。

(りゅうと一生一緒にいれますように)


 竜神はどんな願いをしたのかな?


「あ、除夜の鐘つけそうっすよ、やっていきましょうよ」

 ちょうど後六人の看板をお坊さんが持っていた。

「あの、六人、いいっすか?」

「はい、列に並んでください。……お嬢さん方は男性と一緒につくこともできますがどうします?」

「お願いします! 竜神、一緒につこう!」

「じゃあ私は達樹君と一緒に。いいかな?」

「光栄っす」

 達樹が美穂子に頭を下げる。


「私はひとりで結構だ」

 百合はきっぱりと言い放った。まぁ、虎太郎が女と除夜の鐘をついてたとかSNSに流されたら面倒だしな。


 除夜の鐘を突くなんて初めて。

 ドキドキしながら待ってると、自分の番が回ってきてしまった。


「竜神」「ああ」


 二人で縄を持って、思いっきり引っ張って、鐘を打つ。


 ごーん。


 ひときわ大きな音が鳴ってしまった。

 それ以上に強かったのが百合の音だったけど。


「おみくじ引きましょうよ!」

 はしゃいでる達樹に引っ張られるままおみくじ売り場へ行く。


 それぞれお金を入れてクジを選ぶ。


「あ、やった、大吉!」

 美穂子が喜びの言葉を上げる。

「私も大吉だな」

「おれもっす」

「オレもだ」

「正月だから大吉の割合が高くなっているようだな。未来と虎太郎はどうだ?」


 百合に聞かれて差し出す。


「だ、大凶でした……」

「ぼ、僕も大凶……」


「あー。未来先輩、竜神先輩にふられちゃうんじゃないんすか? そんで竜神先輩はほかに女を作って大き」

 最後まで言う前に達樹の頭にげんこつが落ちた。

 もちろん竜神からの一撃だ。

 よっぽど痛かったのか達樹はその場に蹲ってしまった。


「やめてくれよ! そんなの起こったら生きていけない!」

 文句をいう俺の手から、竜神が大凶を奪った。

「んなわけねーだろうが。ほら貸せ、結んでやるから。俺の大吉と一緒に結べば中吉ぐらいになるんじゃね?」

「いいの……?」

「ああ」

「じゃあ虎太郎君の大凶は私と結ぼうか。中吉になるように」

「え、いいの?」

「うん」

「ごめん美穂子さん……」


「次は屋台行きましょうよ! タコ焼きイカ焼きリンゴ飴!」

 痛みに悶えていた達樹が殴られた頭を撫でながら立ち上がる。

「わかったわかった」

「私は着物汚したら怖いからリンゴ飴だけにしようかな」

 俺も。


「女の子がリンゴ飴舐めてんのエロイですよねー」

「なんでもかんでもエロに結びつけるな!」

 除夜の鐘もついたのに煩悩が消えない奴だな!

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― 新着の感想 ―
[一言] 6月30日と12月31日。暦だと真逆です。今日の関東は何気に蒸し暑いの(^_^;)
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