文化祭の次の日。とっくに全校生徒に歌が拡散さているようです。
文化祭の翌日、竜神と一緒に教室へ入る。
「おはよー」
挨拶をすると、聞き覚えのある曲が聞こえてきた。文化祭で歌った曲だ。
「ミキミキー強志ーおはよー」
「おはよ……って何してるんだよ!」
「見てわかるでしょ?」
ギャル軍団が俺の……その、文化祭でやった俺のダンスを練習していたのだ。
スマホで俺の歌声もガンガン流れている。
「恥ずかしいからやめてくれよー! その時テンションがおかしかっただけなんだから」
「ほお、高名な振付師を付けてやったのに恥ずかしいとは?」
「うや!?」
百合が息がかかるぐらい後ろに立って、耳の後ろにつぶやいてきた。
「せめてミュートして!」
「やだよー。どーせ未来の歌は学校全体に拡散されちゃってるし」
「そうそう。とっくに全校生徒どころか他校にも回ってるんだから、心配しないで。すっごいいい歌だったしね」
「その心配の使い方は間違ってるだろ! 竜神も何とか言ってくれ!」
「せめて音を少し小さくしてやってくれ。未来が恥ずかしがり屋なのは知ってるだろうが」
「だって声まで超かわいいんだもん、可愛い彼女を勝ち取った彼氏の有名税だと思ってよ。強志のドラムもかっこよかったし」
「え、ひょっとして私の歌も入ってるの?」
教科書を机に移し替えてた美穂子が言った。
「当たり前じゃん。美穂子のハモりも最高だったしね」
「うー、恥ずかしいなぁ……。でも未来のダンス可愛かったから仕方ないかぁ……」
「あきらめないでください美穂子さま! 俺たちで削除してもらわなきゃ」
「それは無理だと思いますよ。全校生徒に回ってるんだから、消しても、ほかの人から動画もらっちゃうだけだろうし」
また上級生の教室に入り浸ってる達樹がスマホを俺に掲げる。
そこには俺の踊っている画像が映し出された。
やめてくれ見せないで。
「未来ー美穂子-百合ーあと残りのパラゼ部!」
これまた違うクラスに平気で入ってくる。メイちゃんだ。
「残りのパラゼ部ってひどくないっすか?」
「あんたらの歌が私プロデュースで販売されることになったの! 売り上げ百万枚目指すわよ!」
「ひ、百万枚も売れるわけないだろ! 百枚まで下げて!」
「それは無理。もう製作段階に入ってるもん。社長のお墨付きなんだから! 大体、コタローと未来が同じステージに立ってるのよ、売れないわけない。しかも私の初プロデュースなんだから!」
「確かに未来先輩ならジャケ買いされるのもありそうっすね」
「もちろん全員にギャラは払うからね。そっちも楽しみにしといて」
「え、マジすか、超楽しみ!」
達樹が身を乗り出してくる。
なんとCDは事務所の力で一週間もしないうちに売り出され、一か月もしないうちに100万枚が売れたらしい。
あっという間にカラオケで歌うこともできるようになった。
テレビからの出演依頼はあったけどそれは全力で断ったけど。
二枚目を出すわけないし、そこまで有名になりたくないしな。
軽音部部長が「俺たちに歌わせてくれ」と教室まで押しかけて来たり(これはメイちゃんは嫌がらなかった。楽譜を各パートすべて渡した)と色々あった。
CDの印税は中々とんでもなく、怖かったので全部生活費の通帳にぶち込んだ。
竜神も兄ちゃんの口座に振り込もうとしたんで止めたんだけど「猛さんの家で生活してるからな家賃の先払いだ」といわれて困ってしまった。家賃取ってないのに。竜神と同居してるのは俺のわがままのせいなのに。