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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
冬なので一話だけの冬ネタです。おでん美味しい。
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おでん美味しい

「未来、母さんがかまぼこを送ってきた。おでんを作れ」


 兄ちゃんがそう言って箱いっぱいのかまぼこを差し出してきた。

 野菜天、ごぼう巻き、がんもどきにさつま揚げ、歯ごたえばっちりのイワシのかまぼこ――!!!


「うゃーこんなに一杯!? 3人じゃ食べきれないから友達呼んでもいい!?」

「好きにしろ。俺には卵と白滝とこんにゃくと肉とごぼ天を持ってこい」

「うん! いっぱい持ってくよ! 卵は二つにする! 餅巾着も好きだったよね!」

 速攻でお肉屋さんに駆け込んで、牛筋を大量に買い込む。それからお米屋さんで餅と豆腐屋さんで薄揚げ、とにかくとにかくおでんの必需品を買い込みまくった。

 そして。


 牛筋をぶつ切りにし、火にかけた鍋にぶち込む。

 俺のおでんは薄切り牛筋を使わない。ステーキみたいな分厚い肉を煮込む。コンビニで売ってる薄切りのお肉を串刺しにした牛筋とはまるで別物なのだ。


 じっくりじっくり、とろとっろになるまで煮込む。

 あくを取りつつ牛筋を煮込み大根やジャガイモを別鍋で煮込み、こんにゃくを入れ、じっくりと煮込み――。


「おでんを作ったからご飯食べにこい!」

 と虎太郎、美穂子、百合、達樹に連絡した。


「えーおでんなんか飯のおかずにならないっしょー」

 一番初めに帰ってきたのは達樹のそんな失礼な文句だった。


「なるよ! ならなかったら卵ご飯を食わせてやるから食いに来い!」


 と、言い放った。


 30分もせずに、達樹と虎太郎が家に到着する。

「呼んでくれてありがとう! おでんを食べるのは数年ぶりだから嬉しいよ」

 虎太郎、おでん食べるの数年ぶりってどういうことだ。

 おでんはコンビにでも売ってる庶民食だぞ、ほんとお前虐待されてたんだな。言えないけど。もっと自分の境遇に疑問を持てよ。


「おれ、おでんで飯食えないっすけど…」

 達樹は達樹で失礼だ。


 続いて美穂子と百合も来たので、俺はテーブルの真ん中にドドーンと寸胴いっぱいに作ったおでんを出す。

「どうぞ! 食べて!」

「すごいー…」

「お、おでんって土鍋じゃねーの? こんなでかい鍋で作るなんて」

「我が家のおでんは大量派だ! 卵10個、牛筋キロ単位、ロールキャベツも餅巾着も山ほど入ってる」


 ただ、寸胴式のおでんだと下の具をお玉でつぶしちゃうといったダメな点もあったりする。

 気を付けつつ、そっとお玉で下を掬う。


「牛筋美味しい! とろっとろー!?」

「肉いっぱいじゃねーっすか! まじうめえ! 確かに飯のおかずっすわ! ロールキャベツもうめー!」

「だろ!? だろ!? って、達樹、虎太郎、竜神! 肉ばっか食べんな!」

「ご、ごめん、牛筋がとろとろで美味しかったから…」

「牛筋も美味いけど、ロールキャベツも美味いな。キャベツがいい感じになってる」

「牛筋すっげーうめえ。串の牛筋よりこっちがいいっすね」

「串の牛筋って上品だからおかずって感じじゃないもんな」

 鍋の底でごろごろしてるトロトロ牛筋の方がご飯のおかずになると思う。


「厚揚げもすっげーうまい」

 竜神が褒めてくれて、

「卵も美味いな」

 続いて珍しく百合までもがほめてくれる。

「かまぼこも美味しい…! 肉と同じぐらいにご飯のおかずだよ」

 虎太郎が普通に喜んでいる。さすが魚介の名産地から送られてきただけある。

「野菜天も美味しいよ! 人参とごぼうかな? これ、好き」

 美穂子も喜んでくれた。


「そろそろお餅を煮込もうかな」

 出汁を小鍋に取って餅を放り込む。

「え? 普通の餅を煮込むんですか?」

「うん。餅がおでんの出汁を吸うから意外と美味しいんだぞ。餅巾着より味が乗ってるし。食べたい人だけどうぞ」


 入れた餅の数は6個。3人ぐらい食べないだろうと思って2つ3つ食べる気満々でいたんだけど、全員が食べてしまったから1つしか食べられなかった。ぐぬぬぬ。

 とろーんと出汁が絡んで伸びる餅を皿に取る。


「美味い…」

「これ、美味しいよ未来!」

「美味いな。甘めの出汁が絡んでいるのがいい…。かまぼこが多いと出汁が甘くなるんだな」

「餅巾着とは違う味になってるんだね。雑煮みたいな…。もっと食べたくなるんだけど、餅、あるかな…」

「うん。あるよ! ほかに食べたい人」


 五人全員が手を挙げてしまった。

 

 残った餅全部を投入する。


「このかまぼこ超うめーっす!厚揚げも、肉も!」

 などといいつつ、達樹がめっちゃおでんを食いまくる。ついでに、竜神と虎太郎も。


 肉の出汁で味付けされてるせいもあるのかな?


 頑張って煮込んだ筋肉があっという間になくなってしまったのが悲しいというか悔しいというか。

 あれ、すっごく下処理大変なんだぞ。あく取りも面倒なんだぞ。あっという間に食うな。

 でも、食べてくれたのがうれしかったりもする。


「未来先輩、ウインナーも入れてください!」

「おー。他に欲しい具があるなら入れるけど、希望はある?」


 達樹に言われるがまま、ウインナーをボイルする。


「み、ミートボール…」

「確実に不味くなるから却下」


 虎太郎の提案を止める。


「うどんだ」

 百合がそう言い放った。


「う、うどん!?」


「この出汁ならうどんが合うだろうが」

 コンビニでも売ってるけど食べたことはない。どうかな? 美味しいのかな……?


 うどんを茹でて鍋に放り込み、加熱する。


 それぞれお玉でうどんを取り…。


「あ、美味いっす!」

 達樹がまず喜び

「美味しい…!」

 美穂子が感動する。

「…………」

 虎太郎は無言で食べて

「うめえな」

 竜神はシンプルに賞賛した。


 うん。確かに美味しい。おでんってうどんにも合うんだ!

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