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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十五章 ようやく夏休みです!
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ボウリングで遊ぼう(中編)

「次、未来だよ」

 美穂子の声にザンっと効果音を立て俺が立ち上がる。


「ストライク取るぞー! 全員スタンディングオベーションの準備しとけ!」

 びしィイイっと五人を指さしてからレーンの前に立った。


 顔の前に球を構え、走りながら投球する。


 渾身の一撃――だが。


「ガーター」

 俺の球が溝に入るより早く百合が無慈悲に宣言した。確かにガーターになったけど、次こそは……!

 と意気込んで投げた2投目。

「はいガーター」


 ボールは2連続で溝へと吸い込まれていった。







 2回目の俺の投球。


「次、未来先輩っすよ」

「こ、今度こそストライク……いや、スペアを取ってみせる!」

「あ、目標が下がった」

「だがガーター」

「またガーター」

 二連続でガーターになってしまった。







 3回目の俺の投球。


「次、未来だぞ」

「ここここ、今度こそ一本ぐらい倒す……!!!」

「あああ目標がとうとう最低ランクに」

「頑張って未来!」「頑張れ未来!」

 美穂子と虎太郎が応援してくれるものの……!

「はいガーター」

「またガーター」


 流れるようにスムーズに、ガーターを連発したのだった。


「ど、どうして……!? どうしてここまでガーターなの……!?」

 ピカピカの床に座り込んでさめざめと項垂れてしまう。


 だってだって、一回もやったことないって言った虎太郎は竜神にちょっと教えてもらっただけで1回目で6本も倒してるのに! 


「あっという間に大差が付いちゃったねぇ……」

 手元のモニターを見ながら美穂子が苦笑する。百合、達樹、美穂子チームにあっという間に引き離されてしまっていた。

 竜神がどれだけストライクを取ろうと俺と虎太郎が足を引っ張ってしまってる。


 次の投球は虎太郎だ。


「いけ空気! いい加減に実体化しろ! このままでは私たちの圧勝で面白くもない!」

「百合ちゃんそろそろいじめだよ?」

「空気呼ばわりしてる時点でそこそこイジメっすよ」


 敵チームのはずの百合、美穂子、達樹が虎太郎を応援(?)する。


 綺麗なフォームでボウリングの球が走り――。

 カポォンと響くいい音と共にピンが全部倒れた。虎太郎の初めてのストライクだ。


「やった……」


「やったあああ! ナイス虎太郎!」


 両手を上げて駆け寄った俺に、虎太郎が「え、あ、」と困る。

「ハイタッチだ! ぱちんってするの!」


 虎太郎が恐る恐る腕をあげ、俺の手にゆっくりと掌を押し付けようとした。のを俺から思いっきり叩きつける。スパーン!といい音がした。


 続いては竜神だ。竜神が片手だけ上げた掌に虎太郎がまた恐る恐る掌をぶつけようとして、ドパァンとバレーのアタックかと言いたくなるほどに強烈な、竜神からのタッチがさく裂した。


「いちいちビクビクすんな」

 強烈な教育的指導に虎太郎が自分の左掌を押さえて悶絶する。俺には一切痛い事したことないのに、虎太郎や達樹には意外と厳しい竜神である。


 ところで、俺は、その後もガーターを繰り返し続けた。

 四回目「えい!」「てぇい!」五回目「ぃや!」「にゃあ!」六回目「もぎゃ!」「うゃあ!」


 奇声を上げつつ頑張った。でもでも、駄目だった。

 ボールはすべて溝へと吸い込まれていった。


「未来」

 一つもピンを倒せずしょぼしょぼと戻ってくる俺を竜神が呼んだ。


「なに?」

「お前にはもっと軽い球の方が良いと思う……」

 膝に肘を付け項垂れながら、完全に俺から視線を逸らしそう宣告した。


「どういう意味だ非力だっていいたいのか力が弱いからダメだっていうのか! どーせ非力だよゴミ握力だよ! でもこれ以上軽いボール無いもんこれが一番軽いんだもん……!」

 竜神の上に伸し掛かり叫ぶ。

「背中に抱き着くんじゃねえ胸をぎゅうぎゅう押し付けんな」と振り落とされそうになりながらも。


「それよりも軽い球があるぞ。あっちに」

 百合が指さす。

 確かにあった。子供用の超軽量ボールが……!!!


「ぬおおお」


 しくしく涙を流しながらもボールを交換した。

 悔しい。悔しいが、勝負に勝つためにはしょうがない……。


「今度こそストライクを出して見せるからな!」

 涙目でビシイ! と5人を指さしレーンに立つのだが――。


「ガーター」

「またガーター」

 げ、現実は無慈悲なり……。


 重い球を使ってた頃よりも、ピンの近くまで転がるようにはなったものの所詮ガーターだった。

「ボールがピンにぶつかる音が聞きたい。一本も倒せないまま終わるのは嫌だ……!!」

「泣くな泣くな」

 泣いて竜神の腹にしがみつくと、焦りまくりながら大きな掌が俺の背中を撫でてくれた。

「よ、よかったらこれをお使いください」

 ボウリング場の店員さんが小さな滑り台を持ってきた。

 

「滑り台……?」

「ここにボールを乗せて転がすんです」

 滑り台の降り口をレーンに向け、ボールを転がす。

 傾斜で勢いのついたボールが勢いよく、連立したピンに吸い込まれて行き――。

 カポーン、と、倒した!

 さすがにストライクじゃなかったけど、7本は倒した! やった! 初めて倒したぞ!

「わああ! 倒せたああ!」

 滑り台を持ってきてくれたのは女性の店員さんだった。大学生ぐらいかな?

 思わず跳ねながら手を握りしめてしまう。

 「ありがとうございます!ありがとうございます!! これがあれば百合チームを倒せます……!!!」

「良かった。頑張ってくださいね」

「はい!!」

 カウンターに戻るお姉さんを手を振って見送る。


 ふっふっふ、俺の戦いはここから始まるんだ!


「そろそろ休憩しない? 18アイス食べようよ」


 意気込んだ俺を美穂子の一言が止めた。

「食べたい!!」

 止められてしまったものの、すぐに身を乗り出して腕を上げて同意した。


 18アイスとは自動販売機で買えるアイスだ。

 大型のスーパーやここみたいな施設にしか自販機がないから遭遇する事自体少ない。

 でも、めっちゃ美味しいアイスクリームなのだ!

 俺のお気に入りのはクッキー入りのアイスクリーム。小学校の頃から大好きだ!


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