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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十五章 ようやく夏休みです!
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夏祭り(フランクフルトをペロペロチュッチュすれば30本オマケ(という嘘に騙される)

 いよいよ夏休みです!


 夢屋を要するこの都市で一番大きい桜丘街では、夏休み入ってすぐに打ち上げ花火が3万発も上がる大々的な夏祭りがある。


「りゅー、今年の花火大会は一緒に行こうよ! 美穂子たちも誘ってさ、みんなで!」


 去年のお祭りは皆で行かなかった。


 俺は母ちゃんと周ったし、他の皆は皆で家族と行ったり他の友達と遊びにいっていた。


 今年はパラゼ部のみんなで行きたいな。来年は受験だ。一緒に遊べる機会も減っちゃうだろうから、今年こそは6人で沢山思い出を作りたい!


「未来さあああん!!!」


 バアアアン! と派手にドアを開いて花ちゃんが家に飛び込んできた。


「は、花ちゃん!?」

「うぉらあ未来さん確保ぉお!!」

「うきゃああ!?」


 飛び込んでくると同時に腰に抱き着かれソファーの上に転がる。

 完全に上に伸し掛かられ、ソファーの上でアザラシみたいにオウオウとじたばたしてしまう。


「何してんだよお前……」

「お母さんとお婆ちゃんが未来さんの浴衣を作ったの! 今日お祭りでしょ? 未来さん貰っていくね、6時までには着つけて夢屋の噴水前に連れていくから、お兄ちゃんもそこで待ってて!」


 ほら、行こう! と腕を引っ張られあっという間に竜神宅に拉致されてしまった。


「未来ちゃん、いらっしゃい!」

「未来さん、早く服を脱ぎなさいな」


 竜神宅に入ると同時にお母さんに歓迎され、お婆さんにぴしゃりと命令された。

「あの!! わたし! 何が何だかわかりません、状況についていけません!!!」


 一人称を「わたし」にしてぶりっこした俺の抗議の声もどこ吹く風で服を脱がされる。

 ひぎいいい、やめてください恥ずかしすぎますから!!


「未来さん、貴方、いつ強志と結婚するつもりなの?」

 下着の上から無意味に胸を隠す俺に、鞭打つような声でお婆さんが質問してくる。


「え、えと、だ、大学卒業したぐらいでしょうか……!?」


 結婚の時期がいつかなんて竜神と話したことは無い。大学卒業したぐらいに結婚出来ればいいなーなんて自分の願望を口に出してしまう。


「で、でも、うちの母から、高校を卒業したら強志君を支えなさいと言われています。大学に進まずに、就職して強志君の学費を稼ぎながら身の周りの世話をしろと」


 うちの母ちゃんは「女子に学力はいらない」といった教育方針だ。

 大学に進んで更に学費をかさませるぐらいなら、とっとと就職して、大学に進む竜神の衣食住の世話をしろと言ってる。


「未来ちゃん自身の進路希望はどうなの?」

 おばさんが俺の髪を解きながら優しく問いかけてくる。


「できる事なら、看護か介護の学科のある大学か、専門学校に進学したいと思ってます。強志君に何かあった時に支えられるように……」


 医療系に進めば、竜神のお婆さんやお爺さん、おばさんやおじさんが介護が必要になった時に役に立てる。


 それに、看護、介護なら職にあぶれることがない。

 万が一竜神に何かあって竜神が働けなくなっても、俺が竜神を養っていける。


「未来さん、進学したいならお好きになさい。お金のことなら心配しないでいいわ。あなたは竜神家の嫁です。私たちが援助しますから」


 竜神と同じきつい目尻をしたお婆さんに、目を覗き込みながら真っ直ぐに言われた。


 え。

 大学の費用なんて何百万になるかわからない。なのに、嫁になるからってだけで援助してくれようとするなんて。

 俺が答える前に、可愛いピンクの浴衣を着せられ、ピシイっと前を締められた。


「う、はぅ」


 お陰で返事がおかしなことになってしまう。

「遠慮はしないでよろしい。私にもその程度の貯金はありますからね」

 えええ!? おばあさんの貯金から出してくれるつもりなの!? そ、そんな甘えるわけには。


「あらお母様、無理をなさらないで。未来ちゃんの大学進学の費用が必要になった時には私たち夫婦から出しますわ。老い先短いお母様のお小遣いを減らすなんてとんでもない」

「安月給の宗人と専業主婦のあなたにそんな甲斐性があるの? やせ我慢するのはおよしなさいな」


 お母さんとお婆さんの間に火花が散る。

 よ、嫁姑戦争勃発……!!?


 でも、これ、変な喧嘩だよな。

 二人とも言い方は悪いけど、お互いのことを心配してるもん。ツンデレとツンデレの戦いって感じ。


 何年嫁姑戦争やってるかわかんないけど、長男の竜神の年齢が17歳だから17年以上だよな。

 それだけ一緒に住んでんだから仲良く喧嘩してる……って感じなのかな?


 ぐるぐると赤色の帯で締めつけられる。

 く、苦しい。浴衣ってこんなに苦しかったんだ。


 髪も編み込まれ、頭の後ろでまとめ上げられる。

 だけど、両方のこめかみの一房だけが胸元に流された。


 ――っていうか、浴衣って無駄に胸が目立たない!? なにこれ! 俺の気のせいか!? 和装は胸を潰すべしと聞いたことがあるよ!? 違うの!?


 存在を主張する胸とその上にしな垂れる乱れ髪がやらしい。やらしいぞ!!!

 ちゃんと押さえてるから無駄に揺れることはないんだけど、なんかこう!


「私の時代は厳しくやってたんだけどねぇ」

 お婆さんが言葉を区切る。続けて言うのはおばさんだ。


「今は女の子たちの体形も変わってきたから臨機応変に『その子が似合う』着付けをしているの。外国の人が着つけにくることも多いから、下手に締め付けたらここを出てから下着を外しちゃう人も居て余計にみっともなくなっちゃうのよね。胸を締め付けない着つけは着せる方の腕が問われるんだけど……。未来ちゃんにはそれが一番似合うわ」


「私たちの腕を信じなさい。ほら、口を開いて」


 お婆さんに言われるがまま口を開くと、小指が俺の唇を撫でた。

 艶めいたピンクの口紅が塗られていく。

「これは取れにくい口紅だから、食べても呑んでも大丈夫ですからね」

「は、はひ」

 口を閉じれないので返事がおかしなことになった。


「お母さん、終わった!?」

 スパァアン! と襖を開いて花ちゃんが入ってくる。


「わぁ……すごい未来さん! 男をたぶらかす系の悪女みたい……!」

 褒めてくれてるけど例えがひどい!!


「たぶらかしたりなんか出来ないよ! 強志君以外の男は怖いもん、男をたぶらかすなんてあり得ない!!」


「もうちょっと胸元を開けた方が絶対いいとおもうんだけど……!」

 詰め寄ってきた花ちゃんが胸元に手を掛けようとする。

 ぎりぎりでおばさんが止めてくれた


「花、駄目よ!」

「はしたないことをするのはおやめなさい。まったく、貴方も未来さんぐらいおしとやかになって欲しいものだわ」

 お婆さんが深くため息を吐いた。


 お、おしとやか? おしとやかなんて生まれて初めて言われたぞ。俺、女子の中ではガサツな方なのに。

 でもお婆さんに褒められたのは嬉しいな。


「お母さん、もう5時になっちゃうよ。美穂子ちゃんと百合さんも拾わなきゃいけないんだからそろそろ出なきゃ」


「え、美穂子と百合……!?」


「うん。私から美穂子ちゃんと百合さんに連絡したの。未来さんと一緒にお祭りに行こうって。未来さんが浴衣で行くって連絡したら、二人とも浴衣でくるって返事が来たよ」

 どんだけ根回し上手なんだ竜神花……。後輩のくせにあなどれぬ。


「花ちゃんは浴衣を着ないの?」

 聞くと、お母さんとお婆ちゃんが苦い顔をした。


「この子は動きが荒いからすぐに浴衣を着崩すのよ」

「え」

「だって窮屈なんだもん。暑いし。甚兵衛ならいいけど浴衣は嫌い」

 竜神家のお嬢様が、つん、とそっぽむく。も、勿体ない……花ちゃん、綺麗な黒髪をしてるから浴衣が似合うのに……。


「せっかく女の子なのに張り合いがないったら……。未来ちゃんが居てくれて本当に嬉しいわ。それより、ほら、行くわよ」

 ぽいっと車に放り込まれる。

 そしてお婆さんに「これ、お小遣いね」と一万円も渡されてしまった!

「こ、こんなに貰えま」

 せん、と言い切る前に車のドアが閉められる。


 花ちゃんは別の友達と遊ぶらしく「いってらっしゃーい」と玄関先で手を振っていた。


 最初に向かったのは美穂子の家。


「うっわあああ美穂子、かっわいい、似合ってる!」

 美穂子の浴衣は紺色に百合の花柄だった。髪もサイドテール?って言うのかな? 頭の片方だけで結んでて、色っぽい。


「ふふ、ありがとう。でも未来の方が似合ってるよ、すっごく可愛い。見せびらかして歩きたくなっちゃう! おばさま、迎えに来てくださってありがとうございます」

 礼儀正しくおばさんに頭を下げて車に乗り込んできた。

「どういたしまして。ほんと可愛いわねえ。似合ってるわよ美穂子ちゃん」

「ありがとうございます」


 続いては百合宅だ。


「失礼する」

 百合は白地に真っ赤と真っ黒の花が咲き乱れた、立っているだけでも注目を受ける攻撃的な浴衣だった。

 腰まで届く真っ黒の長い髪をあえてポニーテールにしているのも人目を惹く。


 おばさんに促されるまま、助手席に乗り込んできた。

「久しぶりね百合ちゃん」

「お久しぶりです。未来の浴衣と着付けは貴方のお見立てか。素晴らしく似合っているな。さすがとしか言えん」

「ふふふ、そうでしょう?」

「美穂子もとてもよく似合っている。百合柄というのは……美穂子の身も心も私も物になったのだと邪推してもいいものだろうか」


 おばさんの前で何を言っているんだお前は。


「お母さんのおさがりを仕立て直しただけだから百合ちゃんとは無関係なんだよー。ごめんね」


 美穂子が笑顔のままばっさりと百合の妄想を切り捨てる。


「ぅぐう……」


 ダッシュボードに沈んだ百合をおばさんと美穂子が笑う。

 ほどなくして、到着した。

 お祭りの会場、夢屋公園前へと!



――――☆



 竜神、虎太郎、達樹は待ち合わせ場所である噴水のふちに座って、未来たちが来るのを待ち侘びていた。


「あれ、モデルの虎太郎君だよね!?」


 三人が座る噴水前には数段の階段があった。その階段の下で、20代前半の大学生らしい女性の集団が足を止めてひそひそと話を始める。


「浴衣カッコいい、声かけたい……! 行ってみる!?」

「けど、横に居る人達怖いよ……。虎太郎君も俺様系って噂だし、怒鳴られそうで怖くない?」

「『ブスが声かけんな』とか言われたら立ち直れないよね……」

 チラチラこちらを伺いながら、話しかけるか、掛けまいかと相談を始めている。


 話し合いをしているのは彼女達だけではなかった。下は中学生の浴衣集団から、上は色気たっぷりの仕事帰りのスーツのお姉さんまで年齢層は幅広い。中学生は顔を真っ赤にしてちら、ちらと。お姉さんたちはほぼガン見で秋波を送ってくる。


 竜神、虎太郎、達樹とも浴衣姿だった。


 無料で配られていた団扇で達樹が自分の顔を仰ぐ。

 あえて女性達に顔を向けないようにしながら。


 達樹は同年代や年下相手には「達樹君怖いー」と忌避されるヤンキー面ながらも、年上のお姉さん達には気安く話しかけられてしまう程度の童顔でしかない。

 眼下に集まっている経験豊富なお姉さんたちに視線を合わせないことで、「あんたらには興味がないから」、と意思表示をしていたのだがそろそろ限界だ。



「未来先輩達遅いっすねー」

「待ち合わせは6時だぞ。まだ55分だ」

「おれと竜神先輩で睨み利かすのもそろそろ限界ですよ。肉食系のおねーさん達が集まってきてますし……。くるのが早すぎましたね」


「女に話しかけられたら虎太郎を置いて逃げればいいだろ」

「み、見捨てないでください……!!」


 あっさりと竜神に見捨てられそうになった虎太郎が顔を青くして竜神に取りすがる。


「生まれて初めての花火大会なのに、竜神君たちに置いていかれたら家に逃げ帰るしかなくなるよ……」


「!? 生まれて初めてなのか」

「まじっすか!!?」


 竜神と達樹が息を呑む。


「え、うん」


 それもそうかと竜神は考え直す。あの親共が虎太郎に小遣いを持たせて祭りに送るなど考えられない。


 竜神は虎太郎を過小評価していない。自分自身をボッチだと評価する男ではあるが、人より倍以上に成長速度が速いのを知っていた。


 だからこそ竜神は、我が子を千尋の谷に蹴り落とすライオンのように虎太郎を女たちの輪の中に蹴り落として、「竜神君!!」と半切れになる虎太郎を「這い上がってこい」と高みから見下ろして来た。決して真っ赤になってあたふたする虎太郎を面白がって居たわけではない。あくまで虎太郎自身の成長の為である。


 だが今回はそうもいかないようだ。

 今、女の輪に蹴り落とせば間違いなく虎太郎は自分の巣に逃げ帰るだろう。

 初めての花火大会をそんな形で終わらせるのは勿体ない。


「やべ、とうとう来ましたよー」

 達樹が小声で竜神に告げる。


 胸が零れ落ちそうなほどに胸元をガバーっと開き、尻のラインがはみ出しそうなほどのミニスカートを纏った、明らかに堅気ではないお姉さんたちが色気たっぷりの視線を三人に向け、こちらに向かってきた――のだが。


 ざわり、と、人波が割れた。


「早かったんだね。待たせたかな? ごめんね」

「3人とも浴衣なのか。任侠映画のチンピラのコスプレにしか見えないな」

「お待たせー!!」


 割れた先から、美穂子、百合、未来が来た。


 お姉さんたちもギョっと振り返り、未来達の前を開けた。

 団扇を手に目を伏せ目がちに歩く美穂子を、ジロリと睨みつけ横切る百合を、そしてカラコロと草履を鳴らし手を振る未来を見て――バッグからミラーやコンパクトを取り出し自分の顔を確認し。


 がくり、とその場から引いた。

 争うまでも無く勝ち目が無いと判断したらしい。


――――☆☆


「お前たちも浴衣だったんだ! すっごい迫力あるぞ。竜神が浴衣着るなんて珍しいな。修学旅行でもあれだけ嫌がってたのに」

「虎太郎を迎えに行ったら巴さんに無理やり着せられたんだよ……」


 あぁ、あの迫力のある社長さんか……。たしかにあの人の命令には逆らえ無さそう。


「未来先輩も美穂子ちゃんも百合先輩も、浴衣、超似合ってます、超エロいっす!!」

「なんでもかんでもエロいっていうな!」


 入り口で配られてた銀行の団扇で達樹の頭をどつく。


「に、に、にあ、って、三人とも、にあって、」

「虎太郎君は無理しなくていいよ」


 あ、そだ、竜神にお金渡さなきゃ。

「これ」

 お婆さんから貰ったお小遣いの一万円を竜神に渡す。

「お婆さんからお小遣い貰っちゃったんだ。一万円も受け取れないからお孫さんの強志君が使って」

「お前が貰ったんならお前の金だろ。遠慮すんな」

 う。

 そんなもんなのかなぁ。一万円も貰うなんて逆に困るんだけど……。

 しょうがない。みんなに奢って還元しちゃおう。


「ご飯食べて無いよね? 屋台でなんか買おうよ。あ、焼きそばあるぞ。食べたい人!」

 手を上げて聞くと、達樹と竜神が腕を上げた。

「あれ、虎太郎は?」

 焼きそば大好きじゃなかったっけ? また社長さんに言われてダイエット中なのかな?


「焼きそばは……いつも未来と美穂子さんに作ってもらってるからその……」

 違う人が作ってるのを食べるなんて浮気してるみたいで申し訳ないから、と続ける。相変わらずわけわかんないなこいつ。

「家で作る焼きそばと外で食べる焼きそばは違う食べ物だよ。ちょっと待ってろ」


 皆を置いて一人で屋台の前に立つ。


「焼きそば3パックください」

「お、あ、おう」

「すっごい美味しそうですね……!! お腹減っちゃいます!」


 屋台にしては珍しく野菜がたっぷりだし、ソースの香りが堪んない。

 危うくお腹がなるところだ。


「そ、そうか? じゃあオマケしてやるよ。腹いっぱい食ってくれ」

「え!? いいんですか、ありがとうございます!!」


 焼きそば3パックは全部大盛だった。しかも料金は一パック分だけ! こんなにオマケして貰えるなんて……!!


「一杯オマケして貰っちゃった……! 立ち食いだと零しちゃうからどっかで座って食べようよ」


 運よく、暗がりの奥に開いたテーブルを見つけた。ここなら目立たなくていいな。


「たこ焼きも買ってくるよ。他に食べたいものある?」

 俺はテーブルにつかないまま聞く。


「おれ、イカ焼き食いたいっす」

「私はフランクフルトがいい。マスタード多めで」

 達樹と百合が要望を口にする。

「了解。買ってくるから待ってて」

 竜神が椅子に付かないまま俺の後をついて来ようとした。荷物持ちに来てくれようとしたんだろうけど――。


「くるな」

 びし、と掌を突きつけて止める。

「一人で周るのは大変だろ。オレも手伝うぞ」

「いらない。竜神がきたら……おまけがしてもらえなくなる」


「…………」


「というわけで行ってきます。すぐ戻ってくるから」


 おまけしてもらえなくなる、って発言は半分冗談のつもりだったんだけど、想像以上に優遇されてしまった。


「おじょうちゃん可愛いねー。サービスしちゃうよー」


「お代はいらないよー」


「これ、俺からのサービスっす!」


「サービス、大盛りだ」


 たこ焼き屋、人形焼き屋、お好み焼き屋、焼き鳥屋とサービスされ、続いて向かったのはフランクフルトの屋台。

 売っていたのは遊びなれた感じのお兄さんだった。


「マスタードたっぷりで一つください!」

 俺がそういうと、お兄さんは俺の胸をガン見して、それから顔をガン見してきた。


 美味しそうに焼けたフランクフルトを俺の口の前に差し出す。


「ただいまチュッチュキャンペーン中なんだ! これを舐め舐めしてチュッチュッしてくれたら30本プレゼントしちゃうよ!」


 明るく言われ、思わずフランクフルトの先端を見て考えてしまった。肉汁が垂れる美味しそうなフランクフルト。これを舐め舐めしてチュッチュ? するだけで30本も貰えるの? 


 超お得すぎないか?


 瞼を閉じ、フランクフルトの先端に舌を伸ばそうとして――――。


「未来いいいいい!!!」


 舌を出したまま、美穂子にズザアアアアと引きずられてしまった。


 続いて駆けつけた竜神がギリギリと男の頭を掴んでひねり上げていたような、いなかったような。一瞬だったので良く分からなかった。



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