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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十四章 とうとう二年生です!
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修学旅行四日目!(共学うらやま)

 渡月橋の傍にある有名なコロッケ屋さん。

 行列に並んで順番を待つ。


「竜神、コロッケいくつ食べる?」

「10個」

「……お昼ご飯はおばんざいのバイキングだぞ……。朝だってバイキングだったのに10個も食べたらお昼食べられなくなっちゃうぞ」

「…………。8個にするかな……」

 それで減らしたつもりなのか。


 結局竜神は9個買った。

 待ってる間の匂いに耐えられなかったようだ。


 もちろん、女子組は1人1個。虎太郎は4個。

 口を一杯に開き熱々のコロッケに齧りつく。


「あふ、はつ、」

 揚げたてだから衣がしゃっくしゃくだー。

「サクサクホクホクアツアツコーロコロー!」

 テンションを上げた美穂子が横に揺れながら擬音を発する。俺の方に突っ込んでくるたびにポヨポヨと柔らかい体に飛ばされてしまう。ところで、コロコロって何?

 竜神と虎太郎も大喜びだ。二人とも表情は変えてないものの背後に揺れる尻尾の幻覚が見える。


 5人で買い食いしながら、目指すは天龍寺。

 ここは竜神が行きたいって希望したお寺だ。見どころは美しい庭園と、何よりも、天井に描かれた竜――は残念ながら時期を外してるので見られなかった。それでも、竜繋がりで魅かれるものがあったんだろうな。


「さすが名園として名高いだけある。素晴らしいな」


 天龍寺の庭は、ひねくれ者の百合でさえ素直に感心するぐらいに優美だった。

 緑を茂らせる木々どころか、斜面に立ち並ぶ巨石までもが絶妙なバランスで、底知れない美しさを築き上げている。


「修学旅行が初夏だったのが残念だ。紅葉の時期だったならさぞ圧倒されただろうに」

「雪化粧された冬の景色も見たいなぁ……。想像もできないぐらい綺麗なんだろうね。きっと」


 広い天龍寺の庭を抜け、竹林へ。

 細い道の左右に空すら覆ってしまいそうなぐらいの背の高い竹がそびえ立ってる。


「うわぁ……竹で光が遮られちゃってる……」


 竹って、棒!! ってイメージでしかなかったんだけど、葉っぱも意外とあるんだな。

 知らなかった。 はるか頭上が竹の葉で覆われて竹のアーチみたいになってる。

 風のせせらぎが竹の葉を揺らし――。


 思わず、竜神の腕をぎゅっと掴んでしまった。


「どうした?」

「竹の葉擦れの音がお化けの話声みたいに聞こえる」

「怖いことに関しては本当に想像力豊かだよな。急に走り出したり逃げ出したりするなよ。転んだら危ないから」

「善処します」

「しないって言え」

 ぎゅっと手を繋がれてしまった。


「大丈夫だよ竜神君。未来は逃げ出したりしないから」


 美穂子がきっぱりと言う。


「え、こいつ、やっぱり、強くなってきたのか?」

 俺が自分の後ろに隠れることを心配してる竜神が、美穂子の言葉に嬉しそうにするのだが。


「強くなってるわけないじゃない。竜神君がいるときは竜神君に突っ込むから逃げ出さない! ってことだよ」


 笑顔で再びきっぱりと言った美穂子の言葉に竜神が落ち込んだ。

 美穂子……すごい。ひょっとしたら竜神以上に俺の事をわかってるかもしれない。



――――――


とある男子校の修学旅行生のアプリでのやり取り。


A『すっげーかわいいこいるまじみたことないぐらいかわいいてんしめがみこんなかわいいこはじめてみたやばいやばすぎるよんじゅうろくおくねんにいちどのぜっせいのびしょうじょ』


B『日本語で』

C『漢字の重要性を知った17歳の夏ウルトラソウ!Yeah!!』

D『46億年に一度の美少女とかわろた 言い過ぎにもほどがあるだろ』

E『そういうのって実物見たら市内に一人の美少女。あるある』


A『いいからはよ来い』


F『たりい』

G『便所で下痢中』

H『天龍寺を通過した俺には竜の力が宿った熱く燃え滾る右手を制御することが難しくお前の傍に向かうことなど不可能・・・!』


A『盗撮に成功!!!!(未来の画像。隣に美穂子。奥に百合)』


B『すぐ行くわ』C『愛のままにわがままに』D『鈴木さん(修学旅行の写真撮ってる写真屋のおっちゃん)連れてく』D(既読スルーで駆けつける)F『行く』G『ケツ拭いてないけど出るわ』H『俺の中の竜の気が…今すぐ走れと叫んでいる…!』


 とある男子高校生たちはとにかくアホでノリのいい連中ばかりだったけれども、女の前ではどうすればいいのかもわからない純情な男達だった。


 しかも、46億年に一度の美少女ちゃんの隣には男モデルになんか欠片も興味ない男子高校生でも知ってる『浅見虎太郎』が居た。おまけに、手をつないでる男はそこらの悪党よりもずっと悪党面で。


「はい、チーズ」


 引きつる高校生たちを他所に、写真家の鈴木は笑顔でシャッターを切った。

 男子高生徒たち+46億年に一度の美少女ちゃんが写る角度で。

 『すげえな。これがプロか!!』と感動したのは言うまでもない。


 美少女ちゃんはりゅうじん、りゅうじん、と、悪党面の男に纏わりついていた。

 傍に浅見虎太郎がいるのにまさかの悪党面が彼氏。ぶっちゃけ見た目が怖すぎて、美少女ちゃんが笑顔じゃなければ脅されて連れまわされてるんじゃないかと通報したくなるほどだ。


 笑顔で友人たちと話していた美少女ちゃんがこちらに気が付く。

 に、と、表情をいたずらに変化させた。


「はい、チーズ」

 写真を撮る鈴木さん。その前にいる男子高校生、その後ろを歩く美少女ちゃん達。

 鈴木さんがシャッターを切ると同時に美少女ちゃんが、ピースしてカメラに笑顔を向けた。


「こら! 未来!」

 美少女ちゃんの友達のタレ目の女の子(この子も美少女ちゃんだった)が美少女ちゃんの頭に拳骨を落とす。

「うゃ」

「そういうことしちゃダメでしょ!」

「違う学校の写真に悪戯すんの楽しいだろ…! こういうのって修学旅行の醍醐味なのに……」

「お前はいつになったら自分のことを自覚すんだ!」


 美少女ちゃんを蹴ろうとした黒髪の女(すっげー美人なのに実際見たら怖かった)からりゅうじんが美少女ちゃんを庇った。見た目が極悪人なのにいい奴っぽいのが悔しかった。


 鈴木さんが撮った美少女ちゃんの写真は、合計、五枚。

 なぜか、美少女ちゃんだけの写真もあった。

 竹林を撮影したんです。鈴木さんはそう言い張った。

 確かに竹林が大半をしめていて、美少女ちゃんは隅に写っていただけだけど無理のある言い訳だ。


 だけど、後日。


 校内に貼り出された修学旅行の写真販売で、その写真が一番売れたのは言うまでもない。

 ピースで笑う美少女ちゃんの写真と共に、修学旅行関係ない1年、3年まで購入したという逸話まで築き上げた。ナイス鈴木さんグッジョブ鈴木さん鈴木さん神。そんな声さえ上がった。


 そして。


「共学……羨ましい……!!!!!」


 そう、全校生徒が嘆いたのはしょうがない。



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