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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十四章 とうとう二年生です!
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修学旅行四日目!

 修学旅行最終日。お待ちかねの自由行動の日! きゃほー!


 俺たち3班は嵐山と祇園を選択していた。


「あーらーしーやーまー!」


「キモノフォレスト綺麗……! 素敵な柄が一杯! あんな着物着てみたいなあ……!」

 美穂子が頬を紅潮させる。

 嵐山のキモノフォレスト。

 友禅染を使用した高さ約2メートルもある色とりどりの筒状のカプセルだ。

 一本一本柄が違う、それが、約600本もある。

 たしかに、どれもこれも綺麗で見てるだけでテンションが上がっちゃう……。

 シンプルな柄、派手な柄、基本色が黒なのにド派手な花柄、派手な紫なのに優しい小花柄……。

 いつかはこんな柄の着物を着てみたいなぁ。


「これなんか未来に似合いそうだな」


 竜神が赤く華やかな柄の入った筒に手を添えた。

「いいねーいいねー! 写真撮ろう!」

 美穂子が足をじたばたさせてはしゃぐ。竜神が選んでくれた赤の筒の前で美穂子と並んで写真を撮ったのだった。


 ん?


 俺たちと同じように修学旅行中らしい小学生の女子が、こちらを凝視していた。

 すげー派手な恰好してるなぁ。

 俺が小学校の頃なんてこう……女子も半袖とひざ丈のスカートとかで地味だったのに、超ミニだし、胸元ががバーッて開いてる子もいるし。あんまそんな恰好しちゃダメだぞ。お姉さん心配。


「あの……一緒に写真撮ってください!!!」

 その子たちが勢いよく駆け寄ってくると同時に大声を張り上げた。


「うん? いいよ。撮ってあげる」


 俺はてっきり写真を撮ってくださいと言われたって思い込んで、女の子が手にしてたカメラを受け取ろうとしたんだけど、女の子がまた力いっぱいに言った。


「違います!! 一緒に撮ってください!!」

「一緒に!?」

 なぜ!?

 意味がわからなくて混乱する俺の肩に美穂子が掌を乗せた。


「いいよー。一緒に撮ろう」

 笑顔で答える美穂子に女の子たちも満面の笑顔になる。

「ありがとうございます!!! みんな、いいって!」

「ほんと!? やったああ!」

 ひいいい、一杯来た! 頼みに来たのは二人組の女子だったのに、一気に数十人単位の女子軍団に取り囲まれてしまった。


 今時の小学生はデジカメやスマホまで持ち歩いてるらしく、入れ替わり立ち代わりきゃっきゃいいながら撮影する。

 俺も美穂子も小学生女子のなすがままに、腕に腕を絡まれたり、顔を近づけさせられたりしつつ撮影が終わるまで笑顔を浮かべ続けるしかなかった。


「「「ありがとうございました!」」」

「どういたしましてー」


 笑顔で掌を振る美穂子と違い、俺は多分引きつった笑顔をしていたと思う。


「な、なんで……写真を頼まれたんだ……?」

 心底意味がわからないぞ。そもそも、なぜ見も知らぬ一般人と一緒に写真を撮りたがったんだ?


「未来と美穂子さんは遠目で見ても目立つからじゃないかな。100メートル離れてても二人の周りがキラキラしてるから、小さな女の子が憧れるのも判るよ」

 虎太郎が嬉しそうに笑う。なぜお前が嬉しそうなんだ。


「そうなの……?」

 よくわからない。憧れるなら虎太郎にじゃないのか。なぜ女子が女子に憧れるんだ。


「まずは渡月橋だな」


 ルートはあらかじめ決めてあった。渡月橋行ってコロッケ食べて天龍寺行って――と。

 だったんだけど、虎太郎が「藤堂君からサルにエサをやれるモンキーパークがあるって聞いたんだ……行ってみたいんだけど……」

 と控えめながらも切り出してきた。

「……」「……」「……」

「……猿などどこにでもいるだろうが」

 百合が睨む、が。

 虎太郎は顔に『行ってみたい』と文字を乗せたまま(幻覚)一歩も引かなかった。


「わかった。まずはそっから行くか」

 百合の前に竜神が折れた。

「まったく、何のための行動予定だ」

「ごめん……」

「いいよ。せっかく来たんだもん。気になった場所は周っておかなきゃもったいないよ」

 美穂子のいう通りだ。

 虎太郎が自分の要望を口に出すことはあんまり無い。たまのお願いぐらい聞かないとな。


 地図を確認してると、美穂子と虎太郎と竜神のスマホの通知音が鳴った。


「達樹君だ」


 一人で留守番している達樹からはしょっちゅうメールやメッセージが送られてきていた。

 『ひまっす』『おれだけ置いてきぼりひどいっす』『寂しいっす』『先輩達だけずるいっす』

 と、「っす」がゲシュタルト崩壊する勢いで。

 あんまりにも頻繁なんで百合はとっくに達樹をブロックしてる。


 スマホの4人は達樹と同じアプリのグループに入ってるけど、俺はガラケーで面倒なんで登録してない。ので、メールで個別に送られてくる。

 その件数は修学旅行の期間だけで100通に達そうとしていた。あほかあいつは。

 うちのかーちゃんでさえ『生八つ橋』としかメールしてこなかったのに。

 かーちゃんもひどすぎるけどさ。怪我をしないようにね、とか、楽しんできなさいね、とかないの? せめて『お土産は生八つ橋をお願いね』とかさ。要求を単語って。


 張り切る虎太郎を追って目当ての観光名所だったはずの渡月橋をただ、通過し、モンキーパークを目指す。


 パークは山の上にあった。

 かなりきつい道だったんだけど、竜神が手をつないで引っ張ってくれたお陰で楽々と登ることができた。

 俺が弱音を吐くより早く頂上にたどり付く。

 標高は160メートルだ。想像より高かったぞー。


「うわぁ、たくさん居る……」

 そこかしこに我が物顔で陣取るお猿さんがいる。

「可愛いな」

 意外と動物好きな竜神は顔を緩ませるのだが、サルの方は後ずさって逃げて行った。

「…………」

 どんまいだ。竜神。


 頂上には猿にエサをやれる休憩所がある。

 眼下に見下ろせる京都の景色を楽しむ暇もなく、百合を引っ張り小走りになる虎太郎を追い、5人で建物に入る。


 売ってるエサは小さく切られたリンゴ、輪切りのバナナ、落花生。

 俺はリンゴ、美穂子はバナナ、虎太郎と竜神は落花生を選択する。


 休憩所は窓全体に柵が貼ってあり、手を伸ばしてくるサルに直接エサを渡せる。


 柵に張り付き、今か今かとエサを待っている小さな掌に摘まんだリンゴを差し出す、と。

 まるで人間の子供みたいに器用に受け取って食べ始めた。


「わぁ……」

 サル、賢いなぁ……!


「え、あ、それ、殻が……」

「へぇ。器用に割って食べるんだな」


 戸惑う虎太郎と感心する竜神。

 竜神のいう通り、サルは器用に硬い殻を齧って割り、中身を取り出して食べていた。


「可愛いなぁ……、ぅ、あ、あ」


 柵に近づきすぎた虎太郎が、ビニールごと餌を奪い取られてしまった。

 奈良の鹿といい、完全に動物に舐められてるな。

 がっかりする虎太郎に竜神が自分が買った餌を渡す。


 それにしても数が凄い。何匹ぐらいいるんだろ。

 外で飼育係の人が餌を巻き始めると数も数えられないぐらいのサルが集まっていた。


「景色いいねー!」


 餌やりを満喫した後にようやく一望できる京都の街並みを楽しんだ。

 気持ちいいなぁ……! 虎太郎はただ単にサルにエサをやりたかっただけだろうけど、来てよかった……!


 係りの人に写真撮影をお願いしたらサルを呼んで一緒に撮影してくれた。


「こんな写真まで撮ってもらえるなんて……!」

「良い場所を見つけたな! よくやった虎太郎!」


 美穂子と二人で無駄にはしゃいでしまった。


「さて、次は天龍寺か」


「あ、そだ! お抹茶が飲める店にも行きたい! いっぺん飲んでみたかったんだー! 大人になったみたいでかっこいいよな、あれ!」

「お前の言うことはよくわからんな」

 百合に笑われてしまう。


 そう? 憧れてたんだけどなお抹茶。



 感想欄がだな……その…ノリが良すぎて困惑するレベルうやー

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