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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
一章 体の違いに右往左往する
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よびすて


 体育の授業が終わり、教室に戻った俺はぐたー、と、机に沈み込んだ。


 あの後、追いかけてくる女の子から助けてくれたのは美穂子だった。


 心優しい彼女だけが逃げ惑う俺を気の毒に思ってくれたのだ。ありがとう美穂子。さすが美穂子。


「みーき、元気出して。未来にはわかんないかもだけど……女子の皆は未来が女子の輪に入ってくるように構ってるだけなんだよ。……ち、ちょっとだけ行き過ぎてるけど」


 美穂子が机に突っ伏した俺の頭を撫でながらそう言う。


 絶対『ちょっと』じゃないだろ!!!


 女子の距離の近さは異常。女子になって初めて俺は知りました。



 ヨロヨロヨロと立ち上がり、窓際の竜神君の席に歩いていく。


 竜神君は窓を背もたれにして横向きに椅子に座っていた。


 そんな竜神君の背中と窓の間に無理やり入り込んで床にしゃがみ込む。


 大きな背中の後ろに隠れて、俺はようやく、ホッと息を付くことができた。


「…………何してんだ」


 無理やり押しのけられた竜神君が、俺を見ないまま聞いてくる。


「ここにいると安心するんだもん」

「…………オレを信用してくれるのは嬉しいけどな……熊谷さん、頼む」


 また、ひょいっと抱き上げられ、熊谷美穂子さんに差し出された。

「うん。回収します。竜神君、私のこと熊谷って呼ばなくていいよ。美穂子って呼んで」


 美穂子が可愛い顔でにっこりと笑う。


 あ、これ、男殺しの顔だ。


 美穂子は多分その笑顔が男殺しの顔だって自覚してない。女子にも男子にも同じに「美穂子って呼んで」って笑うんだ。でもでも、男にとっては「ひょっとしたらこの子俺に気があるのかも!」って思っちゃう笑顔なんだ。


 俺は自分自身のレベルを知ってたから、可愛い笑顔で「美穂子って呼んで」と言われても、「こんなかわいい子が俺に惚れることは無い」ときっぱりはっきり自覚した。


 けど、竜神は違う。


 体はでかいし物騒な面してるけど、完全にイケメンの部類だ。


 スペックは高い。学校一の美少女と言える美穂子に並べるぐらいに。


 竜神が美穂子を好きになったらどうしよう――――!!! いや、どうしようも無いけど、毎日の送り迎えと俺の逃げ場が無くなってしまう。


 慌てる俺を他所に竜神は「じゃあオレも呼び捨てでいいぞ」と言い放っただけだった。


「んー、私、年下っぽい子以外は呼び捨てにしたくないの。だから竜神君も竜神君って呼ぶね」


 え? そだったの?美穂子ちゃん。 俺、男時代から美穂子ちゃんに呼び捨てにされてたんですけど、年下っぽいって思われてたの!?


 学校一とも思えるぐらいの美少女と友達になれたから、学校にテロリストが攻めてきたら守りたいなーと妄想をしてたぐらいなのに、年下っぽいと思われていたとは……!!!


 女子怖い!!! ガーンと頭の上に描き文字が落ちてくるけどそれどころじゃない。


 竜神に力いっぱい詰め寄る。


 詰め寄りすぎて、竜神の目と鼻の先で無駄にでかい胸が反動で揺れてしまう。ひぎやああ、は、は、恥ずかしい! 咄嗟に両腕で胸の揺れを押さえつつ一歩下がりながら叫んだ。


「お、俺も未来でいいよ、日向さんじゃなく、未来って呼んで!!!」


「……わかった。オレの事も呼び捨てでいいから……」


「うん! りゅう!」


「りゅうじゃねえよ竜神だよ」と訂正されてしまった。


「りゅうじん、りゅうじん、りゅうじん」


 竜神の太ももに掌を付いて、顔を寄せるのは恥ずかしすぎてできなかったので、俯いて胸元を見ながら竜神の名前を繰り返す。


 がし、と、竜神のでかい掌が俺の肩を掴んだ。

 竜神のうなじにひっつきそうなぐらい接近してた体が引き剥がされ、美穂子に渡される。


「頼む」

「頼まれました」


 まるで軍人みたいなやり取りの後、俺は美穂子に手を引かれ席へと戻されてしまったのでした。

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