おそるべき生理、3回目(学校編)
「うぼぁ」
悲鳴を上げてトイレの個室から出る。
ぐううう、どうしよう、恐怖のアレが始まってしまった。
予定日より早いし体調に変化無かったから油断してた……!
ナプキン持ってない……。
保健室で貰えるって聞いたことあるけど超絶恥ずかしい。
どうしよう、誰か持ってないかな。
どうしてちゃんと準備してなかったんだ。俺のバカバカ。
「ミキミキ、チャストー!」
「うぼぁ」
手を洗ってる真っ最中に、浦田に頭にチョップを落とされてしまった。
チャストってなんだよ! チェストだろ! どうでもいいけど、チェストって何語なんだろ? 後で調べてみよっと。
「…………」
「どしたの?」
「あ、あの……」
こそそっと近づいて、すっごい小声で耳元に囁く。
「ナ、ナプキン持ってませんか?」
「アルデヨー」
「一個貸してくださいお願いします!」
謎の中国人みたいな発音には突っ込まない。歩き出した浦田にくっついて行く。
浦田が向かったのは並ぶトイレの一番奥。掃除道具入れになってる場所だ。
ドアを開くと、殺風景な個室でしかないだろうと想像していたそこが、たくさんのポーチで華やかに彩られていた。
「わ、なにこれ」
「急に始まった時のために、皆、ここに隠してんだよね」
「なるほどー! すげー! あったまいいなー!」
俺もポーチ持ってるけど、コレ(生理のことだ)時だけポーチ持つのってすっごい抵抗あったんだよな。いかにも真っ最中って感じで。
ここに置いておけば急な時も安心だ。俺も5個ぐらい入れて置いとこ!!
「この緑のポーチがあたしの。困ったらいつでも使っていいよ」
「すっげー助かるよ浦田様ありがとうございます! お礼に2個増やしときます!」
「律儀だねーミキミキ」
ナプキンを受け取って開いてる個室のドアを開く。と。
「琴音」
浦田が自分を指さして言った。
「あたしの名前。ミキミキもあたしのこと名前で呼んでよ」
「――う、うん」
なんだろう。今更なのに恥ずかしいぞ。
「ミキミキ、何、赤くなってんの? やっぱりあたしが好きなの?」
「違うーけど違わないよ!」
バタン、と、個室に逃げ込んだ。
「違わないんだ!」
爆笑する声に個室で涙目になった。くそ……益々からかわれそうで嫌だ……。