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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
一章 体の違いに右往左往する
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じ、じ、じ、女子更衣室

 痴漢に騒いだり達樹に震えたりといった日の翌日から、なんとなく女子たちの俺の扱いが変わった。

 女子トイレに入っても嫌な顔をされなくなったのだ。おまけに。


「やだやだやだやだ女子更衣室なんて絶対やだー!!」

 体育の時間前、女子更衣室に入りたくなくてしゃがみ込んで踏ん張る俺を花沢が引っ張る。


「何が嫌なんだ? 女子なんだから女子更衣室で着替えるのが当たり前だろうに」

「体育館裏のトイレで着替えますのでどうか俺のことはほっといて! 皆だってやだろ!?」


 なぜか吹き出しそうな顔でこちらを見守ってる女子たちに訴える。


「嫌な人いる?」


 美穂子が聞くけど、いないよーという返事ばかり。


「つか、日向面白すぎる」「この謎ねばり何なの? 女子なんだから女子更衣室で着替えてよくない? 何が嫌なのかわかんない」女子たちが笑う。


 前まで嫌がってたくせに嫌がってたくせになんで180度意見変わってんだよ女子ってまじわけわかんねえ!!――「うゃあああ!?」


 突然ひょいっと抱き上げられてガチで叫んでしまった。


「り、竜神くん!? 何してんだよ! 放せ、下ろせ!」


 竜神がまるで紙人形かのごとく俺を軽く抱き上げ、ズンズンと女子更衣室へ向かっていく。そして、入り口前で、「後は頼む」と、花沢に俺を渡した。


 花沢は「あぁ」と軽く答え、俺を姫抱っこのまま受け取り女子更衣室に入って行った! やだ花沢さん逞しい! なんてふざけてる場合じゃない! なんなのこの連携! やめて! 俺はトイレで着替えるぐらいでいいの!


挿絵(By みてみん)


 ピーピー叫んで逃げ出そうとしたんだけど、花沢さんの一言「逃げるなら私が脱がせるぞ。胸を揉みつつ揉みしだきつつな」というセリフで俺は動くことが出来なくなった。ぶるぶる震えながら、更衣室のロッカーに顔を突っ込むようにして着替える。


 俺、元男だけど、女子の生着替えが見れる!ヒャッハー! とかいうのは一切なかった。


 ただただ罪悪感というかゴメンネ感だけ。女の子の体になったせいなのかな。さっぱりわかんない。とにかく周りを見ないようにしてさっさと着替える。



「未来って胸おっきーねー、羨ましいなー」


 体操服を着た俺を見て、岩元さんが自分の唇を人差し指でいじりながら言う。


「ちょっとだけ、触っていい?」

 俺の返事も待たずに、岩元さんの両手が俺の胸を両手で包んだ。むにゅり、と、胸が上がる。


「うっわ、重! 巨乳の人が肩凝るって言う理由が分かるなー。こんなに重かったんだ」

 う。


「うやみゃにゃああああ……!!!」


 意味不明どころかみっともない悲鳴を上げて女子更衣室から飛び出した。「りゅー、りゅう、りゅじん、りゅじんくん、みゃぎゃ、もぎゃ」


「どうした!?」

 地べたにへたり込んで叫ぶ俺に男子更衣室から竜神が飛び出してきた。


 必死に抱き着いてビービー喚いてしまう。

「む、胸、こわ、こわ、ひ、あ、うにゃや、や、」

「落ち着け、日本語で頼む」


「おお、お、俺、女の子に触られるのも怖かった!」


 竜神に抱き着き半泣きになりながらコマーシャルみたいに「新発見!」と叫ぶ。


「心臓が口から飛び出るかとおもった、竜神君、今度は一緒に着替えて!!」


「………………」

 竜神はてんぱった俺にしばし目を閉じてから答えた。


「日向さん……言っとくけどオレ、女が相手の時はあんま助けないぞ」


「の゜」

「すげー声出たな」


「どど、どど、ど、どして!? どうして助けてくれないの!? 達樹の時は俺が頼まなくても助けてくれたのに!」


「女との接触は慣れた方がいいだろ。逃げてばっかじゃ駄目だ」


 なんたるド正論。逆に腹立つ。


「竜神君って意外と話が分かるんだね」

「もっと怖い人かと思ってたよー」


 浦田さんと美穂子が笑う。


 ち、違う! 竜神は怖い人だ! そう思わせて無いと俺が危ない!


「竜神は怖い人だぞ! 地元のヤンキー100人切り殺してる!」

 俺は胸を張って女子たちにそう言い放った。もちろん嘘である。

「とんでもない嘘言うな。オレは見た目が悪いからその手の嘘は本当の事だと思われるんでガチでやめてくれ。とにかく、ほら、頑張れ」




 竜神に女子に向かって押し出された……!!




「うやああ!! 絶対無理!!」

「あ! 逃げた」

「未来ー!」



 走り出した俺を女子が追ってくる。な、な、なんでこんなことに……!!

挿絵をダンダダン男子様よりいただきました

ありがとうございますありがとうございます!気づくのが遅くなって(遅くなりすぎて)本当に申し訳ありませんでした…!

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