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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十四章 とうとう二年生です!
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クラス替え!

 とうとう来ました始業式!!!!

 恐怖のクラス替え発表の日です!!


「大丈夫か?」

「だいじょうぶじゃないれす……」

 俺は口調さえも舌足らずになり、がっくりと俯いて竜神の横をふらふらと歩いていた。


「クラスが離れてても休み時間ごとに様子を見に行くから安心しろって」

「あんしんできにゃい」


 一人になるなんて嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあああ!

 で、でも、六人も居るんだから誰かと同じクラスにはなれるかも……!

 なれてくださいお願いです神様!


 ドキドキ鳴る心臓をおさえつつ、竜神と二人で体育館に張り出されたクラス分けを確認していく。

 2-1。

 誰の名前も無し。

 2-2。

「あ、浅見の名前がある……」

 浅見虎太郎。すぐに熊谷美穂子の名前も見つかった。

 あの二人同じクラスなのか……いいなぁ……!

「――良かった、また全員一緒のクラスじゃねーか」

 え!? 慌てて視線を走らせる。花沢百合、日向未来――――そして、名前の一番最後には竜神強志の名前もあったあああ!!!


「や――――やったあああああ! よかったあああああ!!!」


 思わず竜神に抱き着いて足を踏みそうになってしまった。

「未来!! 同じクラスだったねー!」

「美穂子! よかったよーよかったよー」

 人混みから駆け寄ってきた美穂子にしがみつく。


「まぁ、このくらいは配慮して貰わんとな」

 百合が口を三日月に開いてくくくくくと笑った。

 配慮ってなんだろ?


「どんな魔法を使ったんだ?」

 竜神が怪訝に問いかける。

「皆のクラスを一緒にしてください☆てへ☆と校長に可愛く頼んだだけだ。私が火の輪をくぐれと言ったらくぐらざるを得ない程度の弱みは握っているからな」

「夜道を歩くときは気を付けろよ……。下手したら刺されるぞ」


 ゆ、百合、校長先生の弱みを握ってたのか……。

 これからも利用され続けるんだろうな。ドンマイ校長先生。

 でもでも俺的には超助かったよ! ありがとう百合!


「せんぱーい! 皆同じクラスでよかったっスねえ」

「未来さーん」

「あ、達樹! 花ちゃんも。お前たちもとうとう高校生かあ」


 真新しい制服をなびかせ元中学生コンビが走ってくる。

「先輩たちと校舎も同じになったし、これからますます遊びに行きやすくなりますよー」

「あんま来るなよ。友達が出来なくてもしらねーぞ」

「未来先輩と一緒にしないでください」


 どういう意味だ!


 同じクラスになれたのはほんっとうによかったんだけど、俺には更なる試練があった。

 そう、自己紹介である。

 知らない人たちが大半を占める中で発言するのは俺にとっては太平洋を横断するぐらいに勇気のいることだった。


 自己紹介のスタートは浅見からだ。


 ドキドキドキ。まだまだ先なのにもう緊張してきた……。やばい、涙出てきた。

「浅見です。無趣味な人間ですが、よろしくお願いします」

 もっと言うことがあるんじゃ無いのか? モデルやってますとか。


 ドキドキドキドキ。

 何人か後に、美穂子が立ち上がる。

「熊谷美穂子です! コロコロ目玉シリーズのメダ君が大好きなので同じ趣味の人がいたらお友達になってください」

 あれってコロコロ目玉シリーズっていうのか。

 擬音が付いてるのに可愛さの欠片もない商品名を初めて耳にしたぞ。


 ドキドキドキドキドキ。

 とうとう俺の前の花沢百合さんが立ち上がっちゃったああ!

「花沢百合だ。困ったことがあればいつでも相談してほしい。女子限定で相談に乗る」


「次、日向未来さん」

 先生に呼ばれ、ぎくしゃくと立ち上がる。


 あ、ダメだ足が震える。顔が熱い……絶対耳まで真っ赤だ。

 自己紹介だから見られて当然なんだけど見ないでくださいいいい!

「ひ、ひゆうが、みき、です、よろしくおねがいしま……」


 髪をかき上げるフリで腕で顔を隠して早口でまくし立て、言い終わる前に着席した。

「おお~~」

 どこからか歓声が飛んでくる。おおーってなんだよおおーって!

 恥ずかしくて顔も上げられないので、真っ赤な顔でうつむき椅子の上で硬直したまま、心の中で叫んだ。


 一番最後に立ち上がるのは、苗字が「り」の竜神だ。


「竜神強志です。こんな見た目ですが体が弱い一般人なので気軽に話しかけてください」


 言葉と同時に教室内に緊張が走った。

 竜神。お前、やり切ったみたいな顔をしてるけど、その自己紹介超怖いからな。


 そのガタイで体が弱いなんて自己宣告は無茶過ぎだ。何度でも言うけど、竜神の嘘は思い切りが良すぎる。


 真に受けて話したらカツアゲされそうな雰囲気なんだよ!


――――――――



 自己紹介や各種委員決めが終わり、先生が出ていくと同時に俺は机に突っ伏してしまった。


「消耗した……」

「震えてたな。体大丈夫か?」

 竜神が心配そうに声をかけてくれる。

 俺の席は廊下から二列目の一番最後の席で、斜め前の席が美穂子で、前が百合だ。

 女子に囲まれるのを嫌がった(怖がった?)浅見も俺たちの所に来た。


「ん、緊張しただけだから平気だよ」

「緊張で震えるってビビリにも程がありますよ」

「わかってるけど……知らない人の視線が怖いんだもんしょうがないだろー」


「確かに緊張するよね……」

 人見知りする浅見も瞼を落として項垂れた。


「浅見虎太郎君」


 浅見の名前を呼ぶ。

「どして自己紹介の時、苗字しか言わなかったんだ?」

 些細なことなんだけどなぜか気になってしまった。

 日常に埋もれても問題ないぐらいの何気ない質問だったはずなのに、浅見から帰ってきたのは爆弾発言だった。


「えと……その、こたろうってなまえは弟の名前だから……」


「え?」「へ?」「は?」「え?」「あ?」


「こたろうは……お婆さんが孫につけたがってた名前なんだ。長男の僕にそう名付けてくれたんだけど、その後黒目の男が生まれたから、弟にコタロウって名付けなおしたんだよ。僕は虎に太郎で虎太郎で、弟は小さいに太郎で小太郎だけど……でも、僕はそのうち戸籍から抜かれて本物の浅見虎太郎は弟になるから、なんとなく、浅見虎太郎とは自己紹介しにくくて」


 俺も、美穂子も、竜神も、達樹も、百合でさえも青ざめた。


 美穂子が思いっきりよろけ椅子から崩れ落ちそうになる。


「美穂子!」

 寸前で竜神が椅子に戻した。


「お前の家庭環境は中々凄まじいな。子供のアイデンティティを何だと思っているんだ」

「そ、そうかな? 僕が黒髪黒目で生まれなかったのが悪いんだけど……」


「悪くないよ何言ってんだよ意味わかんないよ!!」

「生まれつきの事で悪いとか悪くないとかねーっすよ!!」

 椅子に座っていた俺としゃがみこんでいた達樹が同時に立ち上がる。


「浅見の考えがわかんない……どうして怒らないんだ……」

「未来も猛さんにひでーこと言われても反論せずまともに受け止めてるじゃねえか。家族が相手だとそんなもんなんだよ」


 !!! い、言われてみればそれもそうだ。


「虎太郎」

 竜神が確かめるみたいに呼んだ。声に張りがあるせいなのか、ただ名前を呼んだだけなのに力強く響く。


「お前は浅見虎太郎だろうが」

「そうっすよ虎太郎さん!」


「うう……そんなひどい事されてたなんて……負けちゃダメだよ虎太郎君!」

 美穂子が浅見の手を握りしめて言った。


「そうだぞ! ここにいる全員にとって浅見虎太郎はこの世でお前だけなんだからな!!」

 俺も、びしっと指を突きつけて宣言した。


「――――――――うん」


 浅見は、初めて見るぐらいに緩んだ顔で笑い、嬉しそうに頷いた。


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