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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十二章 ようやく三学期
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クラスがえがあるのを忘れていました

「わぁ、すっげー、お子様ランチっスね、これ家で食うの初めてですよ!」

「盛り付け可愛いねー! 美味しそう!」


「ふっふっふー」


 達樹と美穂子の喜んでくれる姿についつい得意げになってしまう。

 しかし肝心の浅見の反応が無くて、少々残念に思った途端。


「未来!」

 浅見にがしって肩をつかまれて危うく背中から後ろに倒れそうになってしまった。

 あまりの衝撃に頭がシェイクされて視界がぐらぐらする。


「――ありがとう未来、ずっと、食べたかったんだ、店頭に飾られてるのを見て、憧れてて」

「食いたかったんならガキの頃に食えばよかったんじゃねーっすか?」

 達樹が不思議そうに問う。

「子どもに外食は贅沢だからって連れて行ってもらったことなかったんだ」

「へ? 連れて行ってもらったことないって、まさか、一回もファミレス行った事無かったんですか?」

「うん」

「ふえー。浅見さんの親って厳しいんスね……。一回も外食したことないなんて初めて聞きましたよ」


「夢が叶うなんて思って無かった。ありがとう、竜神君、未来」

 竜神はすれすれまで冷やしていた、プリンとバナナのデザートをテーブルに並べながら、おう、と答えた。


 俺はまだシェイクされた衝撃でふらふらしつつ、コーンポタージュスープを取りに行く。

 ――。

 外食、一回もしたこと無いなんて、浅見はどんな環境で育ってきたのかな。

 問い詰めたいけど……。

 家庭の中で起こった辛いことを、人に話すのはしんどい。

 ウチ、貧乏だったからクリスマスパーティーもプレゼントもお年玉も無かった。冬休み明けにクラスメイトからお年玉の額やクリスマスのプレゼント聞かれた時、正直に「貰えない」なんて言えなかった。

 まあまあだった。とか、意味不明な言葉で避けてお茶を濁していた。

 忘れもしない中学校二年生の冬「親がいちいち誕生日パーティーするのうっぜー」って言うクラスメイトに、本気で羨ましくて泣きたくなるぐらいだったのに、「うざいよなー」って笑うことしかできなかった。前日の俺の誕生日にはプレゼントもケーキもおめでとうって言葉も無かったから。


 でも、今なら、竜神が傍に居てくれるから、当時悲しかった思い出も笑い話にして口に出せる。

 中学時代の誕生日のこと愚痴られても、「中学校の時なんて誕生日祝って貰えなかったから羨ましいよ」って素直に言える。


 辛い過去を話せるようになるには、まず、幸せになるのが先決だよな。……多分。


「――――――旗が、名前だ」

 浅見がチキンライスに立てていた旗を見て笑顔になってくれた。

 お子様ランチの旗の定番は日の丸。もしくは万国旗。

 なのに、名前にしたのは俺の家に来た時に、オムライスに名前書いたのを見て浅見が喜んでいたからだ。

 今は、浅見が喜ぶことを少しずつ積み上げていこう。

 今が幸せだ、と思えれば、過去の苦しかった思い出を口に出すのに抵抗が少なくなるかもしれない。


 浅見にとっては口に出すぐらい何でも無い出来事かもしれないけど、万一にでも傷つけたらって思うと怖くて聞けないから。中学校の時の俺の、あの、泣きたくなるような惨めな思いをさせたくない。


「どうした? 未来」


 百合の声に体を揺らして意識を現実へと戻した。

 考えに没頭するあまり、ポタージュスープを配り終えたのにぼおっと突っ立ってしまってた。


「な、何でも無い。食べる前に髪を乾かしてこいよ。風邪引いちゃうぞ」

「冷めてしまってはもったいないから先にいただくよ」

 百合が百合の旗の席に座った。



 全員が席に着いたところで、お子様ランチに必須のアレの登場だ。

 気持ちを切り替えて、籠を手にする。

「お好きなおもちゃをどうぞー♪」

 中に入っているのは六種類のおもちゃ。まずは浅見からだ。


「え、浅見さんからっすか、ずりー」

「じゃあ次に選ばせてやるから我慢しろ。ほら、浅見、どれでも好きなの選んでいいぞ」


「――、じ、じゃあ、えと……えと……」


 浅見はしばし迷って、シャボン玉セットを手にした。


「おれ、これがいいっす。懐かしい」

 達樹が選んだのはミニミニ消防車だ。後ろに引いて手を離すと走り出す定番のものだ。

 美穂子がジュエルの付いたティアラを、百合が壁に投げたら微妙な感じで下りていく虫のおもちゃを、竜神がスーパーボールを。そして最後に残ったのは、ちょっと大きめのビーズのセット。ハート型のケースに入っててブレスやネックレスが作れるんだ。


 これ、実は百合か美穂子のためのオモチャだったんだけどな。てっきり微妙な虫が残ると思ったのに読みが甘かった。


「さ、どうぞ。食べてください!」

 俺と竜神もエプロンを脱いで席に座り、皆を促す。


「いただきます!」

 一斉に挨拶して食べ始めた。


 そして、お子様ランチは瞬く間に食べつくされたのでした。

 これって、いろんな料理を作るから、結構面倒くさいのである。

 なのに、食べるのは他の料理と同じぐらい、一瞬なのである。

 ちょっと寂しいのである。


 皆が喜んでくれて、デザートやスープまで全部残さず食べてくれたから、それが御褒美だな。 


「ご馳走様でした。本当に美味しかったよ」

 浅見が嬉しそうに空になったお皿を下げてきた。

「喜んで貰えてよかった」

「……旗は、貰ってもいいかな?」

「うん。いいぞ」

「私も貰うね。メダ君に持たせて勝利の旗にしよっと」

 美穂子が旗を高く掲げる。またメダ君か!


 ご飯が終わると、DVDを見る予定だ。

 なのに、浅見が一人で靴を持って別室に入って行こうとする。

「浅見? 靴を持ってどこにいくんだ? DVD観ないの?」


 美穂子と百合がホラーを、竜神がアクションを、そして、俺と達樹がほのぼのアニメを推薦した。

 ホラーなんて怖くて観れない俺と達樹のタッグで他のチームとの死闘じゃんけんを経て、勝ち残ったのは俺と達樹ペアのほのぼのアニメチームだ。

 残念がる百合と美穂子を他所に勝利に安堵し――いや、勝利に酔いしれ、決定したのがこの「子猫と子犬の大冒険」である。


「シャボン玉してみたくて。先に観ててくれないかな」

「え。じゃあ一緒に行ってもいい?」

「でも、寒いよ……?」

 今日は日差しが暖かくて風がないから平気だよ。


 ドアの先にあったのは優しい光の間接照明に照らされた、ホテルのような廊下だった。突き当たりにまた大きな扉があり、そこを開くとテラスへと続いていた。

 想像してたよりずっと広いテラスだ。下手したら教室ぐらいありそう。


 シャボン玉セットに入っていたのはシャボン溶液が二つ、ストローが一つ、そして、金魚すくいで使うポイみたいなのが一つとポイ専用のお皿だ。


「おれも久しぶりにやってみたいです」

「私も」

 達樹と美穂子も靴を手に追ってくる。

 足りないストローはコンビニのストローを切って代用だ。


 シャボン玉なんて何年ぶりだろ。

 ふう、と息を吹き込むと、小さなシャボン玉が無数にストローから飛び出した。

 四人がかりで作ってるから、あっという間に俺たちの周りは無数のシャボン玉で溢れ返った。


「うわ……、綺麗だね……、わ」

 美穂子が作ったシャボン玉が浅見の前髪に当たって弾けて、浅見が笑う。

 シャボン液は瞬く間に減っていき、すぐに一本半を使い果たしてしまった。


「浅見、針金のハンガーあるか?」

 テラスには固定されたテーブルセットがあった。百合と並んで椅子に座り、騒ぐ俺たちを見守ってた竜神が言った。


「あったかな……?」

「ありますよ。こっちっス」

 達樹が竜神と一緒に部屋に入って行く。なんであいつ、家主の浅見より家の中に詳しいんだよ……。


 二人はすぐに戻ってきた。洗面器と、伸ばして丸く形を変えたハンガーを手にしている。


「最初おれにやらせてください!」

「あぁ」


 竜神が洗面器を達樹に差し出した。

 達樹は布?を巻いた針金のハンガーを洗面器に浸して、大きく振る。


 途端に、長さが1メートルもあろうかという細長く巨大なシャボン玉が!!!

 作った達樹だけでなく、浅見、美穂子、俺が同時に歓声を上げる。

 長いシャボン玉は途中でハンガーから離れ、巨大なシャボン玉となって宙を漂う。


「きれいー!!」

 思わずシャボン玉を追って走り出すと、

「未来!」

 竜神が俺の首根っこ捕まえて止めた。


「……? どうして止めるの?」

「……シャボン玉を追うのに夢中になりすぎて、落ちそうで」

「落ちるわけないだろ」

「……蝶々追って道路に飛び出していく猫を見ている気分になったんだよ……」


 失礼な。

 いくらなんでもそこまで粗忽じゃな、、、あ、生前の俺、道路に飛び出して死んだんでした。

 気をつけます。


「た、達樹君、僕にもやらせて欲しいな」

「いっすよ、どうぞ!」


 浅見がチャレンジするものの、なかなか上手く行かずに割れてしまう。


「早過ぎるんだよ。もっとゆっくり触れ」

 こんな感じに、と、まるでバッティングでも教えるみたいに竜神が浅見を指導する。


 浅見は言われるがままハンガーをふるい……!


「きゃー!!」

「でけー!!」

 今度は1mにも達しそうな巨大なシャボン玉が!!!


「新記録だな」

 椅子に座り、テーブルに肱をついた百合がククっと笑う。百合がこんな遊びで笑うなんて珍しいな。


「お前もやってみろ」

 竜神にポイを渡された百合が、「そうだな」とゆっくりふるう。


「きゃああ!?」「えええええ!?」「どうしてそれで、んなことになるんですか!?」


 直径十センチにも満たないポイなのに、百合が作ったシャボン玉は浅見が作ったものより遥かに巨大だった!


「中に入る……!!」

 ゆらゆら震えてゆっくり移動する巨大なシャボン玉に思わず突撃してしまったのだが、当然、無残に割れてしまった。


「ご、ごめん、百合、つい……!」

「構わん。むしろ。お前をシャボン玉の中に監禁できたらどんなに美しいか」

「やめろ」

 楽しそうな百合に竜神がうんざりと返す。


 しばらく騒いでいると、いつの間に部屋に入ってたのか、竜神がトレイを手に出てきた。


「そろそろ冷えるだろ。レモネード作ってきたから呑んで体を温めろ」


「え! ありがとう竜神……!」

 いつのまに!

「レモネードなんかどこにあったんですか?」

「下のスーパーから粉買ってきたんだよ。ほんとここ便利だな。マンション内に24時間営業のスーパーまで入ってるなんて」


「わー、良い香り」

「あったかい……」


 安心する優しい味のホットレモネードで体を温めて、再びシャボン玉作りに戻る。


 浅見が巨大なシャボン玉を作り、美穂子がそっとストローを挿して巨大なシャボン玉の中に小さなシャボン玉を一杯詰め込む。


 俺と美穂子が頬がくっつくぐらいに寄り添って、同時にストローを吹く。

 始めは二つだったシャボン玉がくっついていびつな形になって、それでもふよふよする間に綺麗な丸になって弾けた。


「楽しいね」

 再び巨大なシャボン玉を作った浅見が、子どもみたいな無邪気な笑顔になった。

 モデルみたいに(モデルだけど)綺麗に笑うことはあっても、こんな風に笑うのを見るのは初めてだ。


「あ、先輩、また液無くなりました。作ってください」

「おう」


 洗面器の底に残っていた液をポイの受け皿に入れて、竜神が部屋に入った。すぐにまたシャボン液を作って戻ってくる。

「ありがとうございます!」

「美穂子、それ貸せ、入れてやるから」


 竜神はポイ用の皿を使って、器用に小さな容器にシャボン液を流し込んだ。

「ありがとう竜神君」

 今度は達樹がハンガーを使って巨大なシャボン玉に挑戦する。



 喧騒を横に、浅見が竜神に言った。


「竜神君ってやっぱり、理想のお父さんになりそうだね」

「は?」

「僕のお父さんはレモネードなんて作ってくれた事ないよ。それどころか台所に立った事もないから……。シャボン玉液も文句言わずに作ってくれるし、子どもと一緒に遊ぶ良いお父さんになりそうだ」

 竜神はたっぷり10秒も絶句してから、言葉を搾り出した。

「オレ、まだ16だからな?」

「知ってるよ?」


「……、なら、いいけど……」


「やっぱり、未来には竜神君が――」


 浅見が何か良い掛けた時、横でシャボン玉を作っていた美穂子の声が被さった。


「二年も、皆同じクラスだったらいいねー」


 ズバーン!!!!!


 その短い一言に、俺の体に落雷が落ちた。それほどの、大ショックだった。


「クラスがバラバラになったら寂しくなりますね。ま、おれは未来先輩のトコに入り浸りますけど」

「お前が高校生になったら今以上に入り浸りそうだな。ただでさえ鬱陶しいというのに」

 百合が達樹の顔目掛けて大量にシャボン玉を飛ばす。


「うっぷ、やめてください」

「未来ー? どうしたの? 固まって無い?」

 美穂子が俺の目の前で掌を振った。


 に。

 に。

 に。


 に。


 二年生になったら、クラスが離れる可能性があるってこと、忘れてた……。



「く――――」


 俺は美穂子に返事もすることができずに――竜神の服を鷲掴みにした。


「クラス替えなんかいやだ、りゅうとクラスが離れたらどうすればいいんだよ――!! エロい目で見られるのも女にセクハラされるのも怖いのに一人で生きていくなんて絶対無理だよー!」


「未来先輩、今更ですけどあんたどんだけ竜神先輩に依存してるんですか本当に今更ですけど」

「だってだって竜神の目の届く範囲が安心できる場所で、竜神の手の届く範囲が安全圏、竜神の後ろが避難場所なんだぞ! 安心できる場所が無くなるなんて耐えられないよおお!!」

「竜神は公民館か何かか」


「一人になるなんて絶対嫌だ……! そんなことになるぐらいならここから飛び降りて死んでやる……!!」

「おい!」

「未来!」

 竜神に首根っこを、浅見に腕を捕まれて確保される。


「バカじゃねーのあんた! クラス離れるのより死ぬのがマシってなんなんスか!?」

「怖いんだもんしょうがないだろー! お前、真夜中一人の時に貞子出てきても耐えられるのか!?」

「怖い事言わんでください! それとこれとはちげーだろ!」

「一緒だよ!!」


「未来はもう少し怖いのに慣れた方がいいと思うの。私のメダ君を貸してあげようか?」

「いりません……!」


「もしクラスが離れても、休み時間ごとにお前の教室に行くから心配すんな。朝もギリギリまで一緒にいるし、下校時もすぐ迎えに行くから」

「でもでも竜神達が居ないとクラスメイトと話も出来ないよ……! ボッチ確定だ……!」

「とにかく、そういうのはボッチになってから悩みましょうよ。今から悩んだってしょうがねーっすよ」

「うぅ……、そ、そだ! 竜神、子供作ろう! クラス離れるぐらいなら、子供作って九州で子育てしてりゅうが卒業するの待つ!」

「落ち着け未来。子育てする時はオレも協力したいから学校卒業してからにしてくれ。いくらおばさんが協力してくれるからって親らしいこと何もしないなんて子供に対して恥ずかしいし、第一まだ籍も入れられない年齢だから」

「竜神先輩、説得の方向が変っスよ」

「珍しくテンパってるな」


「一人で子育てなんて駄目だよ!」

 竜神にしがみつく俺に、浅見が慌てて言ってくる。


「さっきも言ったけど竜神君って絶対良いお父さんになると思う。僕が一人暮らしするために両親を説得してくれた時も、暴力一つ振るわずに解決してくれたぐらいだからね。それに、二人で僕達を出迎えてくれたのだって、子どもにとってはすごく嬉しいことだよ。プールで目一杯遊んで、家に帰ったらお父さんとお母さんが料理作って待っててお帰りって言ってくれるなんて。竜神君と未来ならそんな夢みたいな理想の家庭を作れるんだから一人で子育てなんてとんでもない」


 半泣きで竜神にしがみ付いていた俺は、浅見の言葉の真意がまるでわからなかった。


「子どもを作るなら、僕が竜神君と未来の家庭の生活費を払うから、二人で子育てしてほしいな。竜神君が働かなくても生活できるように、一生面倒見るから。竜神君と未来が作る家庭をずっと見てみたかったんだ。こんなに早く見れるなんて嬉しいよ」


「……!? ……! ……!?」


 竜神は浅見の顔を見つつ呆然としてたものの、自分の額と浅見の額に手をやって体温を比べた。


「熱はないつもりだけど……?」

「うわ言かと思った。お前……、何言ってんだ」


 達樹と美穂子が浅見の両側に立ってがしっと腕と肩を掴む。


「あんた、脳みそ通して喋ったほうがいいっスよ。ほんと、自分が何言ってるか判ってますか?」

「ドンビキだよドンドン引きだよ浅見君」

「またドンドン引き!?」

「当たり前だよ。まず自分が幸せでこその友達の幸せだからね。まず浅見君自身が幸せー!って思うことが先だよ。今幸せなの?」


「しあわせ……?」


 しあわせ、と繰り返して、浅見は頭を抱えて考え込んでしまった。


 捨て身の浅見の言葉に、少しだけ冷静になれた。


「浅見に迷惑掛けられないよ……、そんなことするぐらいなら、一人ぼっちの教室に耐えてみせる……」


 どうにか落ち着いて竜神から離れると、浅見もまた、しょんぼりしたように言った。


「残念だけど……しょうがないね……。そもそも、毎年約二万人に一人が出産で亡くなってるらしいし、未来にそんなリスクを背負わせるわけには」

「浅見さんいい加減にしてくださいよ! 空気読もうって頭働かせたことねーんスかあんた!?」

「ま、また僕変なこと言ったかな!?」


「…………!!!」

 竜神は顔色を悪くしてから、俺の両肩を掴んだ。


「未来、オレ、実は子ども嫌いだから出産は諦めてくれ。ごめんな」

「お前は嘘が雑すぎる」

 百合が呆れて突っ込みを入れる。


「余計なこと言ってごめん! 大丈夫だよ二万人に一人なんて滅多に当たらないよ多分。四葉のクローバーが出来る確率だって十万分の一って言うし」

「四葉のクローバー見つけるのってそう難しくねーだろ……。そういや、男一人二人簡単に投げ飛ばす姉貴だって出産で体壊したし未来が耐えられる気がしねえ……」

「竜神先輩、お姉さんいたんスか!?」

「イトコのな」

「あ、なんだ。びっくりした」


 四葉のクローバーの確率ってそんなに低かったんだ。俺、最高で八葉のクローバー見つけたことある。どれだけ低い確率だったのかな?

 そんなことどうでもいいか……。


 あああああ。

 一生一年生のままでいたい……。




 楽しみだった春休みがいっきに憂鬱になっちゃったよ……。


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