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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十二章 ようやく三学期
112/239

オムライスに名前

 あ、りゅうのバイクの音だ。

 低く響くエンジン音にピクンって反応して立ち上がり、ダッシュで玄関に向かってチェーンを外す。


「こら、未来、チェーンを外すのはカメラで確認してからにしろ」


 竜神が鍵を開ける前にチェーンを外してしまい怒られた。


「ごめん、う――、り、りゅう、怪我!」


 竜神が、怪我してた。

 左目の横に青痣と、口の端も切れてる!


「僕のお父さんが殴っちゃったんだ……家の事情に巻き込んで、本当にごめん、竜神君、未来も」


 続いて顔色の悪い浅見が入ってくる。

 よかった、浅見、家を出て来れたんだ!

 ……いつから怒られていたんだろ。制服姿のままで鞄まで持ってるぞ。


「いいって。わざと避けなかったところもあるからな。オレみたいな人相悪いのが目上相手に話を通す時は、殴られた方が手っ取り早いし」

 こっちの言い分も聞かせやすくなる。最後の言葉は小さく呟いてハイネックのジャケットを脱ぐ。


「こんななるまで殴っちゃうなんて浅見のお父さん怖いんだな……。浅見、お前が殴られなくてよかったな。モデルが顔に怪我したら大変だったろ? ここ寒いから早くあがれよ」


「……竜神君が庇ってくれたんだ……。ほんとに申し訳無いよ……」


 そっか。竜神はあの冷泉さえ庇ったぐらいだもんな。浅見を庇わないはずないか。将来お巡りさんを目指している男だし!

 俺の功績でもないのに何だか自慢に感じつつ、竜神の腕を引いて中ドアからリビングに入る。


「こんな遅くにお邪魔して、ご迷惑を……」

「謝るなって。明日のご飯の下ごしらえ、浅見の分まで準備して待ってたんだぞー。こなかったら食べ物が無駄になったから逆に怒ってたよ」


 救急箱を準備して、竜神の目の横に小さく切った冷湿布を貼る。口の傷に塗れる薬はないんで消毒だけでお終いだ。

 腫れ……明日までに引きそうにないなあ。

 中等部の子達に流れてる竜神ヤクザ説が促進されなきゃいいけど。


「その……、なんとお詫びしていいか」


 浅見がソファに座りもしないまま謝罪の言葉を繰り返す。


「何回謝ってんだよ。お前には世話になってるんだ。これぐらい借りは返しとかねーと」

「借りなんて……。僕は、何も」

 力無く首を振る。


「浅見、制服のままだなんて一体何時間怒られてたんだ? 晩御飯ちゃんと食べた?」


 竜神に治療しながら訊くと、浅見はあ、う、と口篭った。

 食べてないんだな。


「今は、食欲ないから」

「そう? んじゃ、軽いのがいいかなー。ご飯できるまで時間かかるから、先にお風呂に入っていいぞ」


「え、」


「よし、治療完了ー」

「ありがとう。こっちにこい浅見。着替え貸してやっから」


 竜神が浅見を引っ張って部屋の中に入っていく。

 さて、軽く作るって言ったけど、何を作ろうかな?


 むーん。


 よし、オムライスとナポリタンにしよう。

 浅見も意外と食べるから、これぐらい軽いだろ。食べ物を口に入れたら食欲が出てくるかもしれないし。


「ゆっくり入って来い」

 竜神が浅見を脱衣所に押し込んだ。浅見の手には服が上下と、買い置きしてた新品の下着がある。


「洗い物は全部洗濯機に突っ込んどいていいからなー。パンツも入れていいぞー」

「洗い物ぐらい持ち返るよ、そこまで甘えるわけには」

 脱衣所から動揺する浅見の声が響いてくる。


「遠慮するな。男のパンツぐらい、中学の長期合宿の時に50枚以上洗ったことあるから平気だよ」


 言ってて自分で懐かしくなった。

 当時、一緒に部活してた良太と、文句いいながらパンツ干しまくったっけ。

 合宿場の屋上にはためく大量のトランクス、ブリーフ、ボクサーパンツ。

 あれほど気の滅入る光景を未だかつて俺は知らない。


「何を作るんだ?」

「オムライスとナポリタンだよ」

 アイランドキッチンの対面、カウンター側から聞いてくる竜神にたまねぎ片手に答える。


「…………材料、二人分あるか?」

「ばっちりあります!」


 今日の晩御飯ちょっと早かったんでそろそろ小腹が空く時間だ。

 浅見も一人で食べるより、竜神と一緒の方が食欲進むだろうし丁度良い。よし、俺の分も作っちゃおっと。







 浅見がお風呂から上がってくる頃に、ご飯が完成した。


「お風呂ありがとう……。服も」

「おう」


 うやー。

 竜神の服を着た浅見に、ついつい笑顔になってしまう。

 服の袖とズボンのスソが折られ、肩幅も足りて無くて袖の縫い目の部分が二の腕に下がってる。


「やっぱり浅見も、竜神の服じゃぶかぶかだよな!」

「う、うん。そうだね」


 満面の笑顔の俺に、竜神が怪訝に言った。


「ひょっとして未来……オレの服で上着のお化けになったのが悔しかったのか……?」

「当たり前だ」


 顔を暗くして俯いて言い放つ。


 あれは去年の俺の誕生日のこと。

 竜神からパーカーを借りて一晩着て寝た。

 スソが膝まで来るパーカーは、着てる間は楽しかったけど、数日後、竜神が同じ服を着てるのを見て丁度いいサイズだって知った絶望感は半端じゃなかった。

 体格差なんて初めから知ってたのに改めて打ちのめされた。正直イラっとした。


 でも同性である浅見でさえこんなにブカブカになっちゃうんだ。俺が小さいんじゃなくて、竜神がでかすぎるんだな。

 俺が「歩く上着」になっても仕方ないよ。うん。


「お腹一杯になったら、無理して食べなくていいからな」


 竜神の席に『つよし』とケチャップで書いたオムライスを、その隣に、『こたろう』と書いたオムライスを並べる。正面の席には当然、『みき』だ。ミニミニサイズのオムライスに無理やり名前を書いたから字が潰れてしまった。


 浅見はしばしオムライスを見て硬直していた。


「……? ひょっとして、オムライス嫌い?」


「そ――んなこと、無いよ、名前が書いてあったからびっくりして……。それに、初めて食べるから。食べてみたかったんだ。いただきます」


「は、初めて!?」

「うん、家では和食ばかりなんだ」


 浅見がスプーンをオムライスにさした。

 メジャー料理とはいえども初めての人に食べさせるって緊張する。

 味、大丈夫かな?


 浅見は一口食べた途端、す、って瞼を細めた。

 眉間に皺が寄ったってほどではないけど口に合わなかったかな?と心配になる表情だ。

 しかし、これは、浅見が美味しい物を食べた時に見せる反応だった。


「……すごく、美味しいよ……。卵がとろとろだね。テレビで見たのと同じだ。未来ってほんとに料理上手だね……」

 すぐ笑顔になって身を乗り出してくるものの、ギャップについつい笑ってしまった。


「浅見って、好きなもの食べた時に目付きが悪くなるな。美味しいなら素直に喜べばいいのに」

 ナポリタンとスープを出して、俺も席に座る。

「目付きが悪くなる……!?」

 浅見が驚いて瞼を瞬かせた。自覚が無かったんだろうな。癖だろうから自覚がないのも当然か。


「竜神も嬉しいときに困ったみたいな笑い顔するし、二人とも表情が捻くれ者だな。ちゃんと口に出して褒めてくれるのに」


 そういえば……。良太は、


「良太は逆だったなあ」


「え?」

「佐野?」


「うん。あいつって、美味しいもの食べたらすぐ顔に出るくせ、絶対褒めてくれないの」


 浅見の雰囲気が変わり、感情の読みにくい表情になった。


「僕より、佐野君が、いいかな?」


 浅見は穏やかで優しくて、達樹に振り回されているようでいて、実は達樹を振り回している天然さんだ。

 声のトーンも仕草も普段と変わらないのに、どこか、殺気じみた物を感じて体温が冷えた。そんなはずないのに。


「よくねーよ! 褒めてくれないだけならまだしも、あいつ、『味が薄い』『くどい』『焼きすぎ』とか一々文句ばっかだもん。全部食べるくせにさ。そういうの結構腹立つんだぞ」


 口から出た言葉がいつものテンションのままだったのは、良太にむかついていたのを思い出せたからだ。


「……そっか。よかった」


 浅見が笑う。張り詰めた空気が一気に和らいだ。


「――だから褒めてくれるの嬉しいよ。美味しくなかったら遠慮せずに言っていいからな。改善する」

「未来のご飯は全部美味しいよ。……でも、僕も気をつけるよ……、せっかくご飯を作ってくれてるのに、睨んでたなんて知らなかった。未来にも美穂子さんにも申し訳無い」


 難しい顔になって、皺のよった眉間を指先で撫でる。

 結局、浅見は、オムライスもナポリタンも完食して、スープはおかわりまでしてくれたのだった!





「この家、なんだか……すごく安心するね……」


 ラグの上にあぐらをかいて、浅見が心底くつろいだ声を出した。

「ほら」

「う」

 ソファに寝そべってた竜神がビーズクッションを浅見に投げる。油断していた浅見の顔面に思いっきり直撃して肩を揺らした。


「竜神と二人暮らしだから、いつでも遠慮なく遊びに来ていいからな」

「……、ありがとう」


「あ」

 竜神が自分の体の下からガーゼのヨダレ掛けを取り出した。

 それ、真君がつけてたやつだ!


「真由美さん忘れて行っちゃったんだ、どうしよう竜神……」

「明日、花にでも渡しとくよ」


「真由美さん?」


「竜神の親戚のお姉さんのことだよ。ちっちゃい赤ちゃん連れて遊びに来てたんだー。赤ちゃんすっごい可愛かったんだぞ!! まだ二ヶ月で」

「二ヶ月……」


 浅見は一旦言葉を切ってから続けた。


「じゃあ、僕の弟と同じ月齢だね」


 え!!??


「お、弟!? お前、弟が生まれてたの!?」

「うん」

「すっげー! 十五歳差!? もう殆ど親子だなー! ふにふにか!? ぽにょぽにょか!? りゃーか!?」

 座る浅見にがばっと飛びついて勢い良く質問攻めにしてしまう。

 浅見はりゃー?って不思議そうに首を傾げてから、困った笑顔で続けた。


「ふにふにかは……わからないな。触らせて貰えないから」

「え……?」


「黒髪黒目なんだ。色が移ったらどうするって言われて」


 ――――!

 浅見の腕を掴んでいた俺の手から力が抜けていく。


「明日、仕事は入ってるのか?」

 そんな俺の後ろから、ソファに寝そべったまま竜神が浅見に訊いた。


「入ってないよ?」

「なら、学校終わってからオレもお前の家に行く」

「危ないから駄目だよ。家のお父さん明日休みなんだ。また殴られたら大変だから」

「ならますます一人で帰らせられるわけねえだろうが。無理やり連れ出してきたのはオレだしな。お前の部屋のドアも修理しねえと」


「ドア……?」

 ぼんやりしてた意識が戻ってくる。


「浅見の部屋のドアを壊しちまったんだよ。つい、勢い余って」

「ドア、壊したの……? 竜神が物に当たるなんて珍しい……」

 ぼんやりしたままぼんやり繰り返す俺に、答えてくれたのは浅見だ。


「当たったんじゃないよ。僕の部屋、外から鍵が掛かるドアになってるから、おかしいって怒ってくれて、ドアをひっぺがしたんだ。……まさか、あんな簡単にドアの留め金が壊れるなんて思わなかったけどね。竜神君って本気で力凄いね」


 そと、から……?


「ちゃんと修理するよ。鍵も内側からかかるように付けなおす」

「あのままで構わないよ。ドアの覗き窓のせいでストーブつけても隙間風すごいし。ドアがあっても無くても変わらないから」


 覗き窓……?


「覗き窓も塞ぐに決まってるだろうが」

「そんなことが出来るの?」

「板を打ちつけるだけだ。すぐできる」

「へー。竜神君って器用なんだね。そういえば、五階の教室のドアも修理してたっけ……」


「ついでだし徹底的にやるから覚悟しとけよ。窓にはまってた鉄格子も撤去する」

「えええ!? 無理だよ、あれ、溶接されてるんだよ」

「なら電ノコとドラムを持っていくよ」

「ドラム? 楽器の?」

「ちげー。延長リールのことだよ。楽器のドラムなんて持ってねえ」


 てつ、ごう、し。


「浅見の部屋って……、鍵、外からかかるの?」


 考えが上滑りして、言葉を選べないまま口から声が飛び出していく。


「? そうだよ」


「ドアに覗き窓があって、窓に鉄格子ついてるの?」


「うん」


 それで、弟にも触らせて貰えないんだ。


「――――――――!!!!」


 目の前が真っ赤になった。頭の中が破裂したみたいにぐちゃぐちゃになって、目の下が熱くなる。


「なん――なんでだよ!! なんでお前が、そんな牢屋みたいな部屋に入れられてんだ!? 弟も、どうして、色ってなんだよふざけんなああ!! やっぱり浅見の父ちゃんに文句言う!! 電話貸してくれりゅう!」

「落ち着け。浅見の携帯ここにあるから、掛けても浅見が出るぞ」


 ソファに寝そべる竜神に跨って、胸倉を掴みあげるが簡単にいなされてしまう。

 そうだ、携帯なんかじゃ埒があかない! 直接文句言いに行ってやる!!


「もー、駄目だ、俺がやる!! 相撃ちになろうとも、俺がお前の父ちゃんをぎゃふんって言わせて謝らせてやる!!! 行くぞ浅見、お前の家まで案内しろ!!」

 フローリング掃除用のシートを付けて使うホウキ、ワイパー(武器)を手にして浅見の腕を引く。


「落ち着けって。明日行ってオレがぎゃふんって言わせてくるから。怒りながら泣くな」


「止めないでくれ竜神! 悲しいよ! 悔しいよ……!! なんで浅見みたいな親思いな奴がそんな扱われ方しなきゃなんないんだよ……!!!」


「僕が親思い……?」


「親思いだろ! 親と婆ちゃんのために15年間もずっと我慢してきて、すげー親孝行だよ、前に言っただろ! もし俺だったら絶対目を隠さないって! 婆ちゃんにどれだけ嫌がられても隠さないよ! そんだけ綺麗なんだから!! だいたいな、お前は何も悪くねーだろ! ちょっと運が悪かっただけで、どうしてそこまで否定されなきゃならないんだ!? 浅見、もう家に帰るな!! ここに住め!!! 部屋はいくらでも余ってるから! お前の親孝行タイムは終了だ! 15年頑張ったんだから今日でお終いだ! 俺が養ってやるから心配すんな!! ――というわけで、メイド喫茶で働かせてください」

「却下」


 むきゃー!!!

 あっさり却下され、もう悲しいやら悔しいやら苦しいやら何やらわけもわからず竜神に八つ当たりしてしまう。

 どうどう、と、まるで馬でもあやすみたいに言って、竜神が俺を抱き締めて背中を叩く。

「浅見は自分で稼いでるんだからお前がバイトする必要ねーって。だろ? 家を出ても自活できる金はあるよな?」



「家を――――出る――――?」



 浅見は声を震わせて、一文字一文字を確認するかのように言った。



「――――――ある……、あるよ。十分、そっか、家を出ればいいんだ。考えた事もなかった」

 自分の胸元をぎゅって握って、天啓でも受けたかのように声を絞り出す。

 俺は涙でぐしゃぐしゃになった顔を袖で拭いて、浅見の肩を力一杯掴んだ。


「今日からでもいいぞ! すぐ引っ越してこい! この家には空き部屋が二部屋もあるからな! 地下にはオーディオルーム付きだ! 地下に入るの怖いから使った事無いけど!」

「――――。」


 浅見はちょっとだけ間を置いて、俺から視線を逸らした。


「ありがとう。だけど、未来と竜神君にそこまで迷惑はかけられないよ。事務所の人に相談してみる。どこか紹介してくれるかもしれないしね」


 竜神が浅見の前にあぐらをかいて座る。


「お前のご両親、素直に家から出してくれそうか?」

 喜びの色が見えた浅見の表情が一気に絶望に暗くなる。

「出してくれそうには……ないかも……。近所の目を気にする両親だから、高校生を一人暮らしさせるなんて絶対無理だ……。どこに行っても、連れ戻される……」


 そんなの気にせず、家出して、行き先を教えなければいい。

 なんて、一瞬、考えたけどそんなの不可能だ。

 浅見が学校に通っている以上、浅見の両親はすぐにでも浅見を捕まえることができる。

 こんな時、学生ってことが、未成年ってことが、重い。


 どうすれば浅見を親から引き剥がせるかな?

 どうすれば。

 思考が空回りする。



「なら、オレが説得するよ。殴った事を警察沙汰にされたくなかったら、一人暮らしを許してやって欲しいって言えば了承するだろ。外面に気を使うなら、警察沙汰になるのは死ぬほど恥ずかしいだろうしな」


「「!!!!」」


 俺と浅見が同時に喜びに背筋を伸ばす。


「それなら絶対許してくれるよ……!」

「さすがりゅう、殴られてもただじゃ起きないな!」

「うん、さすが竜神君! 悪知恵が働く百合さんと互角なだけあるね!」


 竜神は、あー、と気の抜けた返事をして、浅見の頭を拳でゴンって叩いた。


 それから、浅見が、家を出るのは早かった。



 竜神が交渉して、あっという間に、一人暮らしをすることを許させたんだ。


 浅見が家から持ち出した荷物は段ボール一つ分。

 制服と教科書、学校の道具、そして、洋服。

 浅見の15年間の生活が、こんな小さな箱に収まって、俺は、怒りと悔しさで行き場のない怒りを持て余す。





 引っ越した先は『街』で一番目立つタワーマンションの50階だった。


「うわー! すっげー眺め……!!」

「こえーっすねー! でもすげー!」


 俺と達樹がはしゃいで窓際に突っ込む。


 この部屋は事務所の社長さんのセカンドハウスらしい。

 もともと、浅見の家のセキュリティの低さを心配していて、近いうちに移らせようと準備してたのだそうだ。


「すげえ良い部屋じゃねーか。……浅見、こういうのが『部屋』っていうんだよ」

 竜神が言う。

「……うん。竜神君が僕の部屋を見て怒った意味がわかる気がするよ」


 浅見もまた、窓際に立って、言った。






「空が広いな」




 その言葉が、いつまでも耳に残った。




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