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モブ君(ある朝突然)絶世の美少女になる  作者: イヌスキ
十二章 ようやく三学期
110/239

浅見虎太郎の家族、如月あやめの暗躍、ヘンリエッタの策謀。

浅見を早めに成長させるため、二年生の中頃に出そうと思っていたエピソードを前倒しです。

三人称視点になります。

「送ってくださってありがとうございます」


「いいのよ。お休み、虎太郎」


「お休みなさい」


 午後十時。


 運転席に座る音無麗に一礼し、浅見虎太郎は自宅の門を潜った。

 瓦屋根があり閂で閉じる、今時目にすることも珍しい古風な冠木門だ。


 自然石を土中に埋め込んだ敷石を踏み締めて、庭を進む。


 引き戸の玄関を開くと、か細い泣き声が廊下の奥から聞こえてきた。


「ただいま」


 返事は無いと知りつつも挨拶をして靴を脱ぐ。


 この家は平屋で、浅見の部屋は渡り廊下を使った離れにあった。

 家をぐるりと取り囲んでいる縁側を進む途中に、か細かった泣き声がけたたましく膨れ上がった。


「……お母さん」


 浅見はしばしためらいながらも、フスマの奥に呼びかける。

 しかし返事は無く、泣き声はいよいよ大きくなっていく。


 フスマに手をかけて、躊躇する自分を叱咤して腕に力を入れた。

 ロウが塗られた敷居を、音も無くフスマが滑る。


 開いた先は仏間だ。


 線香の煙が漂う和室の中央に、古めかしいベビーベッドが置かれている。

 ニスが暗褐色に変色するほど年季の入ったこのベッドは、かつて、祖母が幼い父をあやすのに使っていた物だ。


 小さなベッドの中で、寝返りさえままならない赤ん坊が大粒の涙を零しながら泣いていた。


「――、」


 命に関わる異常がないことに安堵はしたものの、どうやってあやせばいいのか判らない。

 ベビーベッドの中には、赤ん坊を慰めるようなものは何もなかった。


「どうしよう……」

 とにかく抱き上げるべきかと、手を伸ばしたが。


「触るな!!」


 激しい剣幕で怒鳴られて、浅見は手を硬直させた。

 フスマを音がするほど勢い良く開いて、父が仏間に入ってきた。


「小太郎に触るんじゃない! 万一にも、お前の色が移ったらどうする!」


 ベビーベッドで泣いているのは、1月に生まれた浅見虎太郎こたろうの弟だ。

 名前を、小太郎こたろうと言う。


 浅見は伸ばしかけていた手を引いて、父の大声に益々泣き声を酷くした弟を見やる。


 茶色の髪と色の違う目を持つ自分とはまるで違う、黒の両目と、黒の髪を持った弟を。


「この部屋には入らないように言っておいたでしょう? お母様が見てらっしゃるんだから」

 白いエプロンをかけた母親が続いて入ってきて、小太郎を抱き上げ、体を揺らしながらあやした。

 あやしながら壁に掛けられた祖母の遺影を見上げる。


「本当に、母さんが生きている間にこの子が生まれてたら、どれだけ喜んだか……」

 続けて父が言い、弟の頭を撫でる。


 かつて祖母を乱暴したという異国の血を感じさせない、艶やかな黒髪と黒目の子。

 弟が生まれた日、母から連絡を受けた父は喜びに歓声を上げて、すぐさま仏壇に報告をしていた。


「お前もいい加減髪の色を黒に染めろ。不良に感化されてみっともない色に戻して、浅見家の者として恥ずかしいとは思わないのか」

「僕の友人達は……不良ではありません。皆、優しい人ばかりで」


 浅見の言葉に母が声を被せてきた。


「せめて、目の色だけでも隠せないの? 色の違う目なんて、皆、腹の中では気味が悪いと思っているのよ。モデルなんて水商売もはやく辞めてちょうだい。恥ずかしくてご近所に顔向けできないわ」


「……わかりました。ですが――、使ってくださってる方々にご迷惑がかかりますので、せめて、一区切り付くまでは続けさせてください」


「お前はいつから言い訳ばかりするようになったんだ!! ――もう下がれ!! お前は今日よりこの家の長男ではない。家も、土地も、財産も、すべてこの小太郎に残す。高校中退などと恥を上塗りすることはできんから卒業はさせてやるが、卒業したらすぐにこの家を出て行け!!」


「はい」


 激昂する父とは裏腹に、浅見は静かに一礼し、仏間を出た。


『あの子に虎太郎と名づけたのは失敗だったわねえ。せっかく、お母様が考えてくださった名なのに』

『あぁそうだな。あいつの戸籍を抜けばこの子にも虎太郎と名付けられるが』

『あら、そうですの? でしたら……』


 母の弾んだ声を背に、浅見は自室へと歩き出した。


 高校に入学してからというもの、浅見虎太郎には楽しい事ばかりが増えていた。

 初めての友人、初めての後輩、初めての海水浴、初めてのプレゼント選び。

 要領の悪い自分には荷の重いことばかりだったが、一つ一つが大切な経験だった。


 両親は髪の色と瞳の色を曝け出したことを嫌がって、顔を合わせる度に文句を言われたのだが、それでも。


 毎日の小言を差し置いても得るものが多いと思っていた。


 少しずつ、自分の存在に自信が持てていた。


 そのはずだったのに、黒髪黒目の弟が生まれてから、浅見の生活は一変してしまった。


 未来が、美穂子が、百合が、竜神が、達樹が、蓮が、麗が、大勢の仕事仲間が。

 浅見の周りには数多くの人が居たのに、弟が生まれ、両親から見放されたことが浅見の心を大きく蝕んだ。


 これほどまでに絶望するとは予想さえしていなかった。


 茶色の髪と色の違う瞳で生まれたその瞬間から、自分は、両親と祖母にとって忌むべき存在でしかないと、物心付いた時から知っていたはずだった。

 なのに、いつかは、家族として目を向けてもらえることを期待していたのだ。

 ありもしない妄想を夢想していた自分に心底嫌気が差した。


 この家に、浅見虎太郎の居場所は無い。

 15年も前から、どこにもなかった。


 両親と祖母の言うがまま物心が付くと同時に空手を習い、両親と祖母の期待に答えるよう勉強に心血を注いで、学年一位を取り続け、両親が望む高校へ進学して、そこでも望まれるがまま一位を取り続けて。

 だが、結局、何も報われなかった。


 黒髪と黒目で生まれてきた弟に全てを持っていかれてしまった。


 浅見は自室に入り、鞄を椅子に置いて、ふ、と吐息を吐いた。

 何もかもが億劫だった。


 もし、今、目の前に死神が現れたら。殺人犯が押し入って来たら。抵抗一つせず殺されることを選ぶだろう。


 いっそ、現れてくれればいいのにとさえ願う。


 惜しむものなど何も無い。

 将来への希望も、展望も、何も無い。

 十五年、努力して生きてきたけど結局何も得る物はなかった。

 それと同じように、十五年後の三十歳、更に十五年後の四十五歳、六十歳、七十五歳、これまでと同じ年月を積み上げていっても、手に入る物など無いに違いない。

 明るいみらいさえ描けないのに、このまま努力して生き続け、魂をすり減らすことに何の意味も見出せない。


 ただただ、疲れた。




 だが、今の浅見には一つだけ、楽しみがあった。


 未来から貰ったメッセージカードだ。


 何が書いてあるのだろうと想像するだけで一日が楽しかった。

『いつもありがとう』だろうか、『また遊ぼうな』だろうか。


 楽しみすぎて、この時間まで手にすることさえできなかった。

 読んでしまうと、そこで楽しみが終わってしまうから。


 『いつもありがとう!』その言葉があれば嬉しい。なんて期待はしつつも、実際は『ハッピーバレンタイン』程度のことしか書いて無いだろうと結論は出ていた。でも、読まなければ『いつもありがとう』と書いているのだと期待し続けることができる。


 見たら終わる。


 期待は必ず裏切られる。


 窓という窓に鉄格子が張り巡らされ、外側から鍵のかかる自室に入ると、浅見は鞄から生徒手帳を取り出した。

 ぱらぱらとページをめくり、中に挟んでいたメッセージカードを取って、


 小さく深呼吸して期待する気持ちを全て溶かして――――カードを開いた。



『浅見虎太郎君へ』



 見慣れた未来の文字が視界に飛び込んできた。

 虎太郎。

 その文字に目が釘付けられた。気を取り直して先の文章に進む。



『私にとって、一番付き合いが長い友達は良太でした』


『でも、良太は私が嫌いで、遊びに行くのも嫌がって、着信拒否までされてしまいました』


『今、私にとって、一番付き合いが長い友達は、虎太郎君です』


『私は馬鹿だからイライラすることもあるかと思いますが、友達のままでいてください。お願いします』


『浅見と友達になれて、幸せです』








『生まれてきてくれてありがとう!』









 頭を強烈に殴られたような錯覚が浅見を襲った。

 眩暈がして平衡感覚を失い、よろけそうになる。


 血の繋がった両親にさえ疎まれているのに。


 新しく生まれた「あさみこたろう」に自分が生きた十五年を全て否定されたのに。


 生まれた事を、

 ここにいる、浅見虎太郎を、認めてくれるなんて。


「みき」


 カードの文章が読めなくなって必死に目を凝らす。途端にカードに水が落ちて紙をたわませた。

 どこから水が? 雨漏り?


 慌ててカードを拭いて見上げる。


 そうしてようやく、水が涙だったと気が付いた。





「ありがとう、みき」




 口に付いて出た感謝の言葉は、神への供物に人生も財産も捧げる信者のように、重く、盲目だった。




 携帯が鳴る。




 シンプルな着信音を鳴らす携帯を手にとって、相手を確認した。


 この通話が未来だと期待するほど浅見は夢見がちではなかった。

 むしろ一気に冷水を浴びせかけられた気持ちになる。

 父親からの再度の縁きりの連絡だろうか。それとも母親か。もしくは仕事仲間か。


「――?」


 画面に表示されているのは番号のみだった。


 ためらいはしたものの通話を繋ぐ。


『今晩は。初めまして浅見君。如月あやめと申します』


 折りたたみ式の携帯から流れてきたのは、柔らかでありながらも他者を威圧する女の声だった。

 浅見は何も答えてないのに、女はさも当然のように先を続けた。


『今から……そうね、桜庭公園まで来ていただけません? あなたにお話があるんです』


 如月あやめの名には聞き覚えがあった。

 華道の流派である雪柱流の家元の娘で、そして、昨年の文化祭でミス桜丘高校に選ばれた三年生だ。

 清楚な見た目とは裏腹に、良い噂を聞いていない。しかも学校づてに聞いた噂ではなく、浅見が桜丘に通っていると知ったグラビア関係の女性モデルから聞かされた話である。


「どういったご用件でしょうか? 夜間に女性とお会いするのは気が引けますので、できればこのままお話いただきたいのですが」


『竜神君と日向さんについてのお話です。時間は取らせませんわ。お待ちしています』


 言葉が終わると同時に一方的に電話を切られた。

 折り返すことは可能だったが、浅見は財布と携帯だけを持って、制服を着替えないままに桜庭公園へと向かったのだった。





――――




「では、行ってきますね」



 そう言って、公園の中央に設置された街灯に向かった如月あやめに、ヘンリエッタは暗闇の中でほくそ笑んだ。


 クリスマスにパーティー会場で恥をかかされてから、ヘンリエッタはずっと日向未来に監視を付けていた。

 報復をするために。

 だが、日向未来にはまるで隙が無かった。


 まったくと言って良いほど一人で行動することがない。

 常に竜神強志、浅見虎太郎、花沢百合、熊谷美穂子、王鳥達樹が傍にいる。

 おまけに酷く目立つ女だから道を歩くだけでも誰かの注目を浴びて、力尽くでさらおうにもその隙さえ無かった。


 そんな中、竜神強志に片想いをしている如月あやめを見つけた。


 彼女の存在を知ると同時にヘンリエッタはあやめに接触を計った。

 そして持ちかけたのだ。

 竜神を手に入れる良い手段があると。


 その方法は至って簡単だ。

 まずは浅見虎太郎、もしくは王鳥達樹に竜神を呼び出させる。

 場所は郊外の宿泊施設付きのレストランが良い。

 都合の良いことに、有名シェフが経営するオーベルジュ『カフェレヴィータ』がテレビで話題になったばかりだ。

 あやめの誘いには応じなくとも、信頼している友人から呼び出されれば竜神も受けるだろう。


 そして、なんだかんだと理由を付けて行けないと連絡させ、困惑する竜神に偶然を装ってあやめが接近して、酒を呑ませる寸法だ。

 そして、そのまま一泊する。

 男女が同じ部屋に宿泊して、何も無かったなんて証明はできない。

 必ず、未来は竜神の浮気を疑い、揉めて、破局する。


 浅見虎太郎も王鳥達樹も日向未来に恋をしている。

 あやめが竜神を誘惑するならば諸手を上げて協力するに違いない。



 あやめは、未来から竜神を引き離すには最高の人材だ。

 そして、あやめも持ちかけられたヘンリエッタの作戦を二つ返事で受け入れた。


 ヘンリエッタはすぐさま、浅見虎太郎の携帯番号を入手した。


 王鳥達樹ではなく、浅見虎太郎を選んだのはヘンリエッタの都合だ。


 あやめは知らないが、この作戦は竜神だけを対象にしたものではなかった。

 ヘンリエッタの本当の目的は、日向未来を複数の男に暴行させ、体にも、心にも、消えない傷を作る事にあった。

 王鳥達樹は交友関係が広く、勘が良くて人の機微にも鋭い面がある。

 彼が相手では勘付かれてしまうかもしれない。

 いくら未来が欲しかろうとも、未来が暴行されては元も子も無い。気が付かれてはお終いだ。


 その点、浅見虎太郎は安全だった。


 15歳になるまで友人は一人も無く、モデルになって爆発的に人気を得ながらもクラスメイトの女子のからかいにさえ赤面して上手くあしらえない。

 そして、盲目的に未来を想っている。

 この男なら容易く利用できると踏んだのだ。



 公園の入り口からは樹木の影になっているベンチに、ヘンリエッタは子供のように小さく跳ねて腰を下ろした。

 柔らかな毛皮のコートが擦れるのも厭わずに、背凭れに体を預けて空を見上げる。



 ふふ。漏れそうになった笑い声を飲み込んだ。









「お待たせ致しました。どういったご用件でしょうか」


 街灯に薄く照らされた公園の入り口から、浅見が現れた。

 距離のせいで時折途切れる声に、ヘンリエッタは耳を澄ます。


 竜神を郊外に呼び出し、あやめと共に一泊させ、その間に日向未来を襲う。


 これがヘンリエッタの計画だ。


 竜神さえ引き離してしまえば、か弱い高校一年生の女一人どうとでも出来る。

 乱暴された女など冷泉も関心を失う。

 竜神強志が未来から離れれば尚、良い。考えるだけで腹の奥から笑いが込みあげてきた。



「単刀直入にお話させていただきます。浅見君、私と手を組みませんか? 私、竜神君のことが好きなんです。できたらお付き合いしたいと思っています。あなたは……日向未来さんの事が、好きですよね?」


 浅見から返事は無かったが、あやめは長い黒髪を揺らして続けた。

 ちょっとしたからかいで赤面するような男なら、持ちかけた話を理解するまで時間が掛かるのが当然だ。


「竜神君をカフェレヴィータに呼び出してほしいの。竜神君は私がお誘いしても来てくれないから……、貴方が誘ってくれればきっと、受けてくれると思うの」


 あやめが怪しく笑う。


「レヴィータはオーベルジュ。宿泊もできるレストランなの。この意味、判りますよね?」


 あやめの声は甘く、男を惑わす毒を含む。

 ヘンリエッタもあやめも、浅見が赤くなって動揺するだろうと予想していた。



 ――だが、彼の表情は動かなかった。


「お断りします」


 浅見の声が鋭く響く。声色は冷たく、温度があるならば絶対零度まで冷え切っていた。


「――――――ど、どうして?」

 余りの強い拒絶に動揺したのはあやめだった。


「未来を幸せにできるのは竜神君だけだからです」


「そんなことないわよ、あなただって、」


「無理です」


 さも当たり前のように言ってから浅見は周りを見渡した。


「ヘンリエッタさん、いらっしゃいますよね。クリスマスパーティ以来ですね」


「!!」


 あやめも、ヘンリエッタも息を呑んで肩を揺らした。

 確実に見えない位置にいるはずなのに、どうして。


「公園に入る前に周辺を確認させていただきました。ここは普通の住宅地ですから、あんな高級な外車は目立ちますよ。ナンバーから持ち主を調べてくれたのは、百合さんで」


 ヘンリエッタはギリ、と歯を食いしばった。

 素性が割れた以上、こんな場所にコソコソ隠れることはヘンリエッタの自尊心が許さなかった。


 コートを翻して立ち上がり、黒服のボディーガードをその場に残して浅見の前に立つ。


「無理って何が無理なのよ! 男なら、好きな女を手に入れたいと思わないの!? 友達の彼女だからって遠慮してるわけ!?」

 激昂するヘンリエッタの前で、浅見はあくまで冷静だった。



「僕が望むのは未来を手に入れる事ではありません。未来が幸せである事です。貴方がたにはご理解いただけないでしょうが、僕が今持っている物は、未来から貰った物ばかりなんです。仕事での地位も、友人も、楽しい思い出も」


 父が、母が、見向きもしなかった浅見虎太郎という命も。


『生まれてきてくれてありがとう』


 直接伝えられた言葉ではないのに、未来の声で言葉が再生される。


「僕自身が失う物は何も無いんです。ですから」


 獲物を狙う肉食獣のように、色の違う浅見の瞳孔が開く。


「未来の幸せを邪魔するなら――――どんな手段を使ってでも貴方がたを排除します」





 浅見は動いていない。腕を振り上げたわけでもない。







 なのに、あやめも、ヘンリエッタも、気圧されて数歩下がった。


「ふ、ふざけるんじゃないわよ、あんたには何も得るものなんかないのに、好きな女が他の男のものになるのを、ただ見てるだけで満足出来るっていうの」

 ヘンリエッタは更に浅見を詰る。声はか細く震えていたが。



「得るものならありますよ」


 浅見は噛み締めるように言う。


「見たいんです。両親がいつも笑っていて、子どもがわがままを言える幸せな家庭を。竜神君なら、間違いなく未来を幸せにして、そんな夢みたいに綺麗な家庭を作ってくれる」


「――――――――!!!!」


 ヘンリエッタも、あやめも、言葉を失った。

 身じろぎ一つできなかった。


 寒気のするほど美しい笑顔で浅見が続ける。


「二度と、二人に手を出そうと思わないでください」


 そう言い残して、浅見虎太郎は踵を返した。

 鉄格子のはまった自室に帰る為に。





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