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君のためなら  作者: 神室
7/7

君のためなら

 いいところに連れて行ってあげますよ、と言われて齊藤の車に乗せてもらい、車窓から流れる景色を眺める。

 沈み始めた夕日が目に眩しい。

「齊藤さん」

「レンレンでいいですよ」

「なんで、今さら陽介の恋人の自殺のことを調べていたんですか?もう、1年くらいは前の話ですし、殺人じゃないのに」

「そんなに不自然なことではないですよ。警察は徹底的に調べたがる生き物なので」

 無言のままじっと横顔を見つめると、弱ったな、と苦笑された。

「君には嘘がつけませんね。正直に言います。君と水無月君のことを、交番勤務の頃から知っていたんです。まあ、知っていたといっても、一方的に見ていただけなんですけどね」

「見ていた?」

「はい。多分、君たちは僕には気づいていなかったでしょうけど、登下校でいつも仲良くしている二人を見て、微笑ましく思っていたんです。でも、それが、ある時から君が一人で歩く姿を見かけるようになって、相当思い詰めた顔をしているのを見て、ずっと気がかりでした」

 そんな時、水無月の恋人が自殺したことを知り、交友関係を調べる中で、俺の今の状況を知ることになったという。

「警察をやっていて、あれだけ良かったと思えたのは初めてでした」

「齊藤さんは」

「はい」

「いつもそうやって、人を助けているんですか?」

 俺は望んでいる言葉が欲しくて、質問を投げかける。

 これで通じてほしいと、願いながら。

「……いいえ。最初は警察官としての正義感とか、同情に突き動かされていましたが、君はちょっと、僕の中では違う括りにいるみたいです。同僚にね、言われたんですよ。どうしてそこまでそんなにその子に入れ込むのかって。その時初めて、自覚しました」

「それは……」

 続きを促そうとした、その時だった。

 フロントガラスの向こうに、どこまでも続く桜並木が現われた。

 すっかり夜の帳が降りてしまった中で、ライトアップされた桜の木々が美しく、妖艶に浮かび上がっている。

 それを息を飲んで眺めるうち、するりと言葉を紡いでいた。

「齊藤さん、俺と付き合ってくれますか」

 齊藤は、ゆっくりと路肩に車を止め、俺に口付けた。

 幻想的な景色の中で、俺は瞼を閉じ、齊藤に身を委ねる。

「この続きは、高校を卒業してからしましょう」

 鎖骨に歯を立て、息を荒くしながら言われる。

「齊藤さん、2年もありますよ」

「……」

 大人としての理性が音を立てて崩れるのも、すぐそこまで来ている気がした。


end

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