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君のためなら  作者: 神室
2/7

動き始める現実

 学校から電話がかかってきたのは、何もする気が起きず、ぼーっと窓の外を眺めていた時だった。

 担任の木山は、気弱でクラス内で起きている問題に向き合う度胸もない男だ。

 俺が不登校になっても、家庭訪問をしたのは最初の一度きりで、あとは放置をしてきた。

 そんな木山が、なぜ今さらと思いつつも、どうせ他にすることもないからと電話に出た。

「はい」

「初めまして。今日から担任をすることになった齊藤恋です。恋って書いてれんって呼ぶせいか、特技が恋愛相談になりました」

「はあ」

 悪戯電話かと思って切ろうとしたが、かかってきた番号は間違いなく学校のものだ。

 誰かと話せば気が紛れるだろうと思い直し、通話を続けることにした。

「あの、担任は木山だったと思うんですけど……」

「はい、昨日まではですね。今日からは僕が佐倉君のクラス担任です。僕はこの学校に今日赴任してきました」

「今日からって……」

 時期が中途半端じゃないか、と言いかけ、日付の感覚が狂っていたことに気がつく。

 そうか、もう4月だ。

 クラス替えもとっくに済んでいるはずだ。

 じゃあ、香月とももう……?

「木山先生から大体の事情は聞いていますが、僕は君自身の言葉しか信じないことに決めています。話せる時がきたら、事情を話してくれませんか」

「……」

「佐倉君?」

 俺は唐突に開き始めた道筋を目の前に、どう言葉を紡げばいいのか分からなかった。

「佐倉君……」

 齊藤の、労るような声が響き、俺はいつの間にか嗚咽を漏らしていたことを自覚した。



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