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君のためなら  作者: 神室
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覚めない悪夢

 その夢は、いつも多種多様な声から始まった。

 雑踏の中に立ち尽くす自分を想像して、でもすぐに違うと分かる。

 全部、知っている人間の、クラスメイトの声だからだ。

 気がついた途端、現実と見紛うほどの生々しい教室が現れ、黒板に書き殴られた、見るに堪えない、自分を貶める言葉の数々が飛び込んでくる。

「佐倉、お前、俺のオンナに何をしたか分かってんのか?」

 ぬっと亡霊のように現れたのは、クラス一厄介な男、香月健一(かつきけんいち)

 オンナ、と言っても、本当に香月のものだったわけではないはずだ。

 香月が飯田芽衣に密かに片想いしていたことは、本当に知らなかった。

 こうなって初めて、周囲が口走る囁きを耳にして知ったのだ。

 しかも、俺は飯田に想いを伝えはしたが、しっかり振られた。香月に恨まれるいわれはない。

 だが、それを伝えたところで、香月は一切耳を貸さなかった。


 それから後は、地獄の始まりだった。


 夢というよりも、現実の回想で、呼吸が荒くなり、息苦しさに飛び起きる。

 まだ夜中で、時刻は2時過ぎを指していた。

 でももう、一睡もできそうになかった。

 明日からも学校には行けそうもない。

「どうして、なんで」

 どうにもならない現実に、俺の声は虚しく響いた。


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