プロローグ
果てしない昔。
完全な記録は残ってはおらず。
伝承によって伝えられこの大陸に歴史と言う基盤を残した大戦。
神と人とが共に手を取り合い、地獄の王を名乗る者と亡者との数多に及ぶ戦争。
その終極。
四人の使徒と六人の英雄が地獄の王を討ち取った。
一人の使徒と一人の英雄の犠牲の下、かくして神と人類が勝利を収めた。
だがその代償は決して軽んじてよいものではなかった。
大地は地獄の業火によって焼焦がされ。
戦いによって多くの命を失った。
また、地獄の瘴気に当てられた獣か、はたまた地獄に巣くう魔物か、異形の怪共が残飯を喰らおうとするかのように、人類圏に蔓延った。
そこで使徒達は残った五人の英雄に新たな任を与えた。
痩せ焦げた大陸に区切りを付け、各英雄に土地と人々をあてがった。
屈強な礎を作れと。
決して揺るぐことが無く、公正の下に、人類が安寧とした営みが行えるようにと。
英雄達は最後に、使徒と酒を酌み交わし。死者を労り。その神託に膝をついた。
使徒達は帰っていた。
二度とこの地に天と地獄が交わることが無い事を祈って。
その後の人間達の行動は早かった。
英雄達は人類の導き手として国を興し各地にて根を張った。
言いつけを守るように田畑を耕し。壁を築き。騎士を育て。法を制定した。
まるで、それは互いに競い合うかのように。
いくつかの世代を重ねた頃には、あの対戦も風化し原初の教えも形骸となりはてた。
各地での人間同士の戦と災害に見舞われ、何度かの国境の拡大と縮小と分断を重ね、今この大陸は形を成している。
いつのころからだろうか。
使徒のリーダー格の名前にちなんで、この地は”ベルドラ大陸”と呼ばれるようになった。