さんざんなリエル
だからというか、当然というか、高校生の真田真が登校している間、守護天使リエルはただひたすら他の人に見られないように大野家宅にじっとしていることを強いられた。
「引きこもりの天使」
だとか、
「守護天使ならぬ自宅警備員とジョブチェンジしたら」
だとか、さんざん言われようが、この天使めげるなんてことはなかった。どうせ現れてコミュニケーションできるのだからと、
「真田真さんのためになることを考えよう」
と、ブランチにはあの店のパンケーキをお取り寄せ、昼食にはカップラーメン二個、おやつには某ハンバーガーを宅配と下界を満喫し始めていた。
「そんなに食ってるから幼児体形がキープされてるんじゃないか」
真田真から批判されようが馬耳東風。
「現れたのなら、ご指導というか、お導きとかあったもいいんじゃないか?」
と言われてようやく、
「天使は全部を教えてはならないというお達しがある」
と答えたくらいである。この天使は本当に免許取得の教習や研修を受けたのだろうかと真田真が思わないはずはなかった。
「導きというのなら、真田真さんの夢は本島は何ですか」
天使からの逆質問である。彼とて進路は考えていた。進路希望調査にも記入はしているし、大野家の人々にもすでに伝えてある。ところが、
「このまま突き進むのなら、試験当日入試会場へ向かう公共交通機関を不通にし、遅刻させた上に腹痛急上昇にさせ、焦ったとたんに五指すべて突き指させて断念させますよ」
天使ではなく悪魔の所業を言い放ちやがった。本当の夢と言われても、大野家に迷惑をかけるような進路であってはならず、それにできるだけ早く独り立ちできるような就職先まで見据えた進路にしなければならないと彼は考えていた。
「ね、お金の心配はないの。だから、あなたの好きなことを、楽しみたいことを選んで」
「そのロリの言うとおりだぞ、ロリに教えを乞うようになるとはな、まだまだだな真」
と、義母、義父に言われても、金があるとかないとかの問題ではなく、きちんと就業するための進学は変わりない。