帰宅してみると
オーラソーマの三十七番目には「地上に降りた守護天使」の名称が与えられている。守護天使にわざわざ天界からご足労いただいているありがたみ。さぞかしあまねく神の威光をご提供いただけるだろう。
ただ――
真田真は家に帰ると、義母が血相を欠き、義妹が血気盛んになっている光景を目撃した。
「お兄ちゃん、あんた……お父さんもお母さんもそんなにストレスになるようなことした?」
心底嘆いている風な母と、
「兄真! センスいいね! 私が目指してるのはあれだよ!」
すっかり風邪が治癒して、あるいはまだまだ熱にうなされている風な妹が間近まで詰め寄ってきた。まったく何を言っているのか、不明で。
部屋の戸を開けた。絶句し、一度戸を閉めて深呼吸。もう一度あけてみた。彼の目に間違いはない。うなだれ、頭を抱え、頬を抓ってみた。真田真に熱はないし、痛覚もあった。つまり夢ではない。こんな感覚や行為を人生で初めて体験し、あくまで文字の羅列でしかなったそれらの意味が痛いほど身を覆っていた。戸を閉めて、母と妹を場所払いした。なんのかんのの言い訳を、詳細は後でとまさに面倒事を後回しにして。足音が消え、ぶつくさの妹の愚痴がリビングの戸が閉まる音で消えてから、部屋に入った。
彼のベッドの上に、天使がいた。